認知症サポートの道

「認知症と向き合う人々の支え手。認知症の勉強を日々研鑽中。」

認知症ケアにおける調理レクの効果・手順・メニュー

 

調理レクによる脳・心身への効果

調理レクとは、高齢者が料理をすることで楽しみながら心身の機能を回復や予防にも効果的な活動です。調理レクには以下のような目的と効果があります。

脳の活性化
調理をすることで、材料や道具の名前を思い出したり、手順や流れを頭の中で整理したり、味や見た目を判断したりする必要があります。これらはすべて脳にとって良い刺激に。
手先の運動
調理をすることで、包丁やスプーンなどの道具を使ったり、野菜や果物などの材料を切ったり混ぜたりすることになります。これらは手や指を細かく動かすことになるので、手先の巧緻性(さいちせい:手先で細かい作業を行う能力)や柔軟性を高めことが期待できるのです。
コミュニケーション
調理レクでは、他の参加者や職員と一緒に作業を行います。その際に、作業の分担や相談、感想や思い出話などを交わすことで、コミュニケーション能力や社会性を向上させるだけでなく、孤独感やうつ気分を和らげる効果もあります。
自己効力感
調理レクでは、自分で料理を作ることで達成感や満足感を得ることができます。これは自己効力感(じここうりょくかん)と呼ばれるもので、自分には何かができるという自信や自尊感情を高めることにつながります。自己効力感が高まると、生きがいや意欲も増します。

 

調理動作による有用感

認知症ケアの調理レクとは、認知症の方に料理を楽しんでいただくための活動です。調理レクでは、食材を切ったり、炒めたり、煮たりするなどの調理工程を一緒に行います。その中で、刃物を使って食材を切るという作業は、とても大切なスキルです。

 

刃物を使うときには、目で食材の形や大きさを見て、手で刃物の重さや切れ味を感じて、腕で力加減や角度を調整して、細かく正確に動かします。これらの感覚や動作は、脳の機能を高める効果があります。また、刃物は危険な道具でもありますから、注意力や集中力も必要です。このように、刃物を使う作業は、視覚、触覚、運動感覚という三つの感覚と、精密な動作が求められる緊張感のある行為です。

 

刃物を使って食材を切ることができたら、どんな気持ちになるでしょうか。きっと、「やった!」という喜びや、「できる!」という自信が湧いてくるはずです。自分で料理に参加できたことで、「役に立つ」という満足感や、「楽しい」という幸せ感も感じられるでしょう。これらの感情は、認知症の方にとって大切な心の支えになります。

 

認知症ケアの調理レクでは、刃物を使って食材を切ることが重要な役割を果たしています。認知症の方には、食べやすい大きさに切った食材を用意しておくこともできますが、それでは調理レクの効果が半減してしまいます。刃物を使うことで、認知症の方の脳や心に良い影響を与えることができるのです。もちろん、安全に注意して行うことが必要ですが、認知症ケアの調理レクでは、刃物を使うことも取り入れてみましょう。



調理レクを実施する際に必要な準備や手順、安全管理

調理レクを実施する際に必要な準備や手順、安全管理については以下のようになります。

【準備】
参加する方の状態や好みに合わせて、メニューや材料、調理器具を選びます。できるだけシンプルで手順が少なく、食べやすく栄養価の高いものがおすすめです。
必要なものを事前に用意し、場所や時間を確保します。調理器具は使いやすく安全なものを選び、食材は新鮮で衛生的なものを用意します。
参加する方には、事前に説明や声かけをして、気分や体調を確認します。参加意欲や楽しみを高めるために、メニューや作り方の紹介や見本の提示をするとよいでしょう。

【手順】
できるだけ参加者が主体的に行えるようにします。スタッフは見守りやサポートをしながら、参加者のペースや能力に合わせて指示や助言をします。
一連の流れを頭で整理しながら行うことで、脳の前頭葉が刺激さることが予想できますよね。そのため、献立の作成や材料の準備、切る・煮る・盛り付けなどの作業を分担して行います。
手先や指先を動かすことで、運動野と感覚野が刺激されます。そのため、皮むきや包丁を使うなどの細かい作業も取り入れるわけです。ただし、怪我や火傷などの危険性もあるため、注意深く行います。
他の参加者やスタッフと会話することで、コミュニケーション能力や社会性が向上します。作業中や食事中に積極的に話しかけたり聞き入ったりします。料理のコツや思い出話などが話題になること期待できるでしょう。

【安全管理】
食中毒やアレルギーなどのリスクを防ぐために、衛生管理を徹底します。手洗いや消毒、食材の保存方法や賞味期限などに注意します。
怪我や火傷などの事故を防ぐために、安全管理を徹底が必要です。包丁や火などの危険なものはスタッフが管理し、必要な場合はサポートします。また、転倒や転落などの危険性も考慮し、床やテーブルなどが滑らないようにします。
体調不良や異常行動などのトラブルを防ぐために、参加者の状態を常に観察し、気分や体調が悪そうな場合は、無理をさせずに休憩や中止を提案するとよいでしょう。また、興奮や不安などの感情が高ぶった場合は、落ち着かせるか適切な対応が必要です。

 

調理レクで人気があるメニューや季節に合わせたメニューを紹介

栄養価が期待できるメニュー
牛乳&イチゴ白玉:白玉粉に牛乳とイチゴを混ぜて丸めてゆでます。牛乳はカルシウムやたんぱく質が豊富で、イチゴはビタミンCや食物繊維が豊富です。
クレープ:ホットケーキミックスに卵と牛乳を混ぜて生地を作り、フライパンで焼きます。具材は好みに合わせて選びます。卵はたんぱく質やビタミンB群が豊富で、牛乳はカルシウムやたんぱく質が豊富です。

 

季節に合わせたメニューは、旬の食材を使って彩りや味わいを楽しむ

  • :桜餅:もち米粉に水と桜の花びらの塩漬けを混ぜて生地を作り、桜の葉の塩漬けにあんこを包みます。桜の花びらや葉は塩分を含んでいるので、甘いあんことのバランスが良くなります。
  • :かき氷:氷を削って器に盛り、シロップやフルーツなどをかけます。氷は体温を下げる効果があり、シロップやフルーツは水分補給やビタミン摂取に役立ちます。

  • :栗ごはん:もち米と白米に栗や醤油などの調味料を加えて炊きます。栗はビタミンCや食物繊維が豊富で、もち米と白米は炭水化物やたんぱく質が豊富です。
  • :おでん:大根やこんにゃく、卵などの具材をだし汁に入れて煮込みます。大根はビタミンCや食物繊維が豊富で、こんにゃくはカロリーが低く食物繊維が豊富です。卵はたんぱく質やビタミンB群が豊富です。