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【介護老人保健施設(老健)】の役割・費用・入居条件から特徴的な違い

介護老人保健施設老健)とは、高齢者のケアと健康を支える場所です。この記事では、老健の基本からサービス内容、費用、入居条件、メリット・デメリット、そして特別養護老人ホームとの違いについて詳しく解説します。老健の役割や設備、さらには探し方や注意点に至るまで、幅広い情報をお届けします。高齢者の方々とその家族にとって、老健選びの一助となることでしょう。

1. 介護老人保健施設老健)とは

 1.1 介護老人保健施設とは?

介護老人保健施設(老健)とは、自分の家で暮らすことが難しくなった高齢者が、一時的に入居して、自宅復帰に向けてリハビリや介護を受ける施設です。要介護1以上の方が対象で、介護保険で利用できます。

老健の入居期間は、基本的には3~6ヶ月です。しかし、自宅復帰が難しい場合や、特別養護老人ホーム(特養)の空き待ちの場合は、もっと長く入居できることもあります。

老健は、自宅復帰を目指す高齢者にとって、大きなチャンスとなる施設です。しかし、利用するには条件や手続きがあります。

2. 介護老人保健施設の役割とサービス内容

 2.1 介護老人保健施設のサービス内容

老健とは、在宅復帰を目指す高齢者が入所する施設のことです。老健では、介護や医療サービスだけでなく、専門的なリハビリも受けることができます。リハビリは、身体機能の回復や維持、日常生活動作の向上を目的として行われます。

老健で受けられるサービスは、以下の通りです。

  • リハビリ:身体機能の回復や維持を目的とした運動や訓練を行います。理学療法士作業療法士などの専門スタッフが指導します。
  • 医療ケア:医師や看護師が常駐し、必要な治療や薬の処方を行います。また、定期的に健康診断や検査を行います。
  • 介護・生活支援:入所者の方の日常生活をサポートします。食事や入浴、排泄、着替えなどの介助や、清掃や洗濯などの家事代行を行います。
  • 食事の提供・栄養管理:栄養士が栄養バランスや食事量を考慮して食事を作ります。また、嚥下障害やアレルギーなどに応じて食事内容を変更します。
  • レクリエーション:入所者の方の心身の健康やコミュニケーションを促すために、様々なレクリエーションを行います。例えば、音楽や手芸、ゲームなどです。

ではそれぞれ詳しく見てみましょう。

 

  リハビリテーション

老健では、入所者の身体機能の維持や回復を目指して、リハビリテーションが行われます。リハビリテーションとは、起居動作や生活動作などに関わる運動や訓練のことで、専門家が指導や介助をします。老健では、以下のような専門家が配置されていることが法律で決められています。

  • 理学療法士:筋力や関節の可動域、バランスなどの身体機能を評価し、適切な運動や器具の使用方法を指導します。
  • 作業療法士:日常生活に必要な動作や能力を評価し、自立した生活を目指して訓練や器具の調整を行います。
  • 言語聴覚士:言語や嚥下(えんげ)などの機能を評価し、コミュニケーションや食事の支援を行います。

老健では、これらの専門家がチームとなって、入所者のニーズに合わせたリハビリプログラムを作成し、実施します。また、他の施設と比べて、より専門的なリハビリが提供されることが多いです。例えば、ロボットやVRなどの最新技術を使ったリハビリや、音楽や芸術などの趣味を取り入れたリハビリなどがあります。これらのリハビリは、入所者のモチベーションや楽しさを高めるだけでなく、認知機能や精神的な健康にも良い影響を与えると言われています。

老健でのリハビリテーションは、入所者の身体的な健康だけでなく、精神的な満足感や生きがいも高めることができるサービスです。介護従事者としては、入所者のリハビリに対する意欲や目標を尊重し、応援や励ましをしてあげることが大切です。また、専門家と連携して、入所者の状態や変化に気づき、適切な対応や報告を行うことも重要です。

  医療ケア

老健では、介護だけでなく、医療ケアも行われます。医療ケアとは、医師や看護師が行う治療や処置のことです。老健で行われる医療ケアには、以下のようなものがあります。

  • インスリンの注射:糖尿病の方に血糖値を下げる薬を皮下注射します。
  • 痰の吸引:気管支や肺にたまった痰をチューブで吸い出します。
  • 経管栄養:食事ができない方に胃や小腸にチューブを通して栄養液を与えます。

これらの医療ケアは、高齢者の方の健康や生命を守るために重要です。しかし、介護従者の方は、これらの医療ケアを行うことができません。医療ケアは、医師や看護師などの医療従事者が行うものです。介護従者の方は、医療従事者と協力して、高齢者の方の医療ケアをサポートする役割を担います。

  介護サービス・生活支援

老健では、リハビリや医療ケアのほかに、入所者の方の日常生活をサポートするサービスもあります。これを介護・生活支援サービスと呼びます。

介護・生活支援サービスは、大きく分けて身体介護と生活援助の2つに分かれます。身体介護とは、入浴や排泄、食事、着替え、移動などの身体的なケアを行うことです。生活援助とは、居室の清掃やシーツ交換などの家事的なケアを行うことです。

老健では、これらのサービスを介護職員が担当します。介護職員は、入所者の方の状態やニーズに応じて、適切な介助や支援を行います。例えば、食事の際には、食べるスピードや量を調整したり、嚥下障害がある方には食事内容を変更したりします。また、入浴や排泄の際には、プライバシーを尊重しながら必要最小限の介助を行います。

老健で受けられる介護・生活支援サービスの一覧は以下の表の通りです。

サービス 内容
身体介護

入浴やシャワー浴などの清潔ケア

トイレ誘導やおむつ交換といった排泄ケア

食事の介助

着替えの介助

移動の介助

生活援助

居室の清掃やシーツ交換

※洗濯は家族が持ち帰るか外部業者に委託する

 

  食事の提供・栄養管理

老健では、入所者の方に1日3食の食事を提供しています。この食事は、栄養士が監修したメニューで作られているので、栄養バランスが良くカロリー管理されています。栄養士は、入所者の方の体重や身長、活動量などをもとに、必要な栄養素やエネルギー量を計算しています。そして、その計算結果に基づいて、個別の栄養ケア計画を作成し、食事の提供や評価を行っています。

老健では、入所者の方の健康状態に合わせて、食事の内容や形態を変えることができます。例えば、高血圧や糖尿病、腎臓病などの持病がある方には、塩分やタンパク質などを制限した治療食を提供します。また、嚥下機能が低下している方には、食べやすいように柔らかくしたり、ペースト状にしたりした嚥下食を提供します。このように、老健では、入所者の方が安全で快適に食事を楽しめるように配慮しています。

老健での食事の提供・栄養管理は、以下の表にまとめました。

項目 説明
食事の提供 1日3食の食事を提供する
栄養士の配置 入所定員が100名以上の場合は、栄養士1名以上を配置する
栄養士の役割 入所者の栄養状態を評価し、個別の栄養ケア計画を作成する。監修したメニューで食事を調理し、提供する。食事で摂取した栄養素やエネルギー量を確認する
食事の内容 栄養バランスが良くカロリー管理された食事を提供する
食事の形態 入所者の健康状態に応じて、治療食や嚥下食などを提供する

以上が老健での食事に関するサービス内容です。ご参考になれば幸いです。

  レクリエーション

老健では、入所者の方々が楽しく過ごせるように、さまざまなレクリエーションを提供しています。レクリエーションは、身体や心の健康にも良い影響を与えるだけでなく、他の入所者やスタッフとの交流の場にもなります。新しい環境に慣れるまでの間、レクリエーションは気分転換にも役立ちますよ。

老健で行われるレクリエーションの例を挙げてみましょう。

種類 内容
手芸・書道 自分の作品を作ったり、先生から教わったりします。
ボードゲーム チェスやオセロなどのゲームで頭を使ったり、仲間と盛り上がったりします。
脳トレ・クイズ 記憶力や判断力を鍛える問題に挑戦したり、雑学やニュースに関するクイズに答えたりします。
アロマ・アニマルセラピー 香りや動物と触れ合ってリラックスしたり、癒されたりします。

※これらは一例です。施設によっては他にもレクリエーションが用意されている場合があります。

レクリエーションは自由参加です。その日の気分や体調に合わせて、参加するかどうかを決められます。また、人と話すのが苦手だったり、好きではなかったりする方も無理に参加する必要はありません。施設に相談すれば、レクリエーション以外の方法で気分転換できるかもしれません。

 2.3 介護老人保健施設の人員配置基準

それでは老健ではどのような職種の職員が働いているのでしょうか?まずは配置の基準を見てみましょう。

職種 基準 定員100人当たり
医師 常勤1人以上 1人
看護師 入所者3人に対し看護師or介護職員が1人以上
看護師・介護職員の総数の7分の2程度
9人
介護士 入所者3人に対し、看護師または介護職員が1人の割合
看護師・介護職員の総数の7分の5程度
25人
理学療法士作業療法士言語聴覚士 いずれかの1人以上 1人
支援相談員 1人以上(100対1以上) 1人
栄養士 定員100人以上の場合、1人以上 1人
薬剤師 実情に応じた適当数 (300対1を標準とする) 0人
調理員、事務員、その他従業者 実情に応じた適当数 適当数
  医師

老健の医師は、高齢者の健康を守るために、さまざまなサービスを提供する施設の中で、医療の責任者として活躍しています。具体的には、以下のようなことを行っています。

  • 入所サービスやショートステイ、通所リハビリなどで訪れる高齢者に対して、診断や治療を行う。
  • 高齢者の状況を把握し、看護師やリハビリ職に指示を出す。チームワークが大切です。
  • 入所者に安心して暮らしてもらうために、看護・介護・リハビリの役割を理解し、協力する。
  • 緊急時には迅速に対応し、必要ならば救急車を呼ぶ。
  • 亡くなるまで高齢者を見守り、看取りを行う。

  看護師

老健の看護師とは、入所者の医療面のサポートをするスタッフです。具体的には、以下のような仕事をしています。

  • 入所者の体温や脈拍、血圧などのバイタル測定を行う
  • 医師の指示に従って、投薬やインスリン投与、たん吸引などの処置を行う
  • 介護士やリハビリ職と連携して、入所者の体調や生活リズムを管理する

老健の看護師は、日常的な健康管理から高度な医療ケアまで、入所者の健やかな生活を守る大切な役割を担っています。老健の看護師になるには、国家試験に合格して看護師免許を取得する必要があります。また、老健で働くには、高齢者への理解やコミュニケーション能力も重要です。

  介護士

老健介護士とは、入所者の生活を様々な面から支えるスタッフのことです。具体的には、以下のような仕事をします。

  • 身体介護:食事や入浴、排せつなど、日常生活で必要な身体的なサポートを行います。
  • 生活援助:洗濯や掃除など、生活環境を整えるためのサポートを行います。
  • 余暇活動:レクリエーションや趣味など、楽しく充実した時間を過ごすためのサポートを行います。企画や運営も担当します。

老健介護士は、24時間体制で入所者の安全と快適さを守ります。夜間に入所者の体調が急変した場合は、オンコールシステムで呼び出されて対応します。

老健介護士は、介護のプロフェッショナルであるだけでなく、入所者にとって心のパートナーでもあります。入所者と信頼関係を築き、心豊かな暮らしを支えることが大切です。

  理学療法士

老健(介護老人保健施設)で働く理学療法士とは 老健では、病気やケアで身体に障害が出た方のリハビリを担当する専門職がいます。それが理学療法士です。理学療法士は、以下のような仕事をしています。

  • 入所者ひとりひとりの身体能力や生活習慣を医学的視点から見極めます。
  • 在宅復帰に向けて適切なリハビリプログラムを作成します。
  • 関節可動域の拡大、麻痺の回復、痛みの軽減など運動機能に直接改善する治療法を行います。
  • 動作練習・歩行練習などの能力の向上を目指すリハビリテーションを行います。
  • 自立した生活を支援します。
  作業療法士

作業療法士とは、リハビリの専門家の一種です。高齢者の方が、日常生活で必要な動作をできるようにするために、さまざまなサポートを行います。

例えば、食事や入浴、着替えや排せつなどの基本動作は、自分でできるということが、高齢者の方の自立や自信につながります。しかし、病気やけがなどで、これらの動作が困難になってしまうこともあります。そんなときに、作業療法士は、高齢者の方の身体的な能力や環境に合わせて、適切なリハビリを提供します。

リハビリの方法は、人によって違います。基本動作だけでなく、趣味や仕事、遊びなどの応用的な動作や社会参加も重要です。作業療法士は、高齢者の方が楽しみや目標を持ってリハビリに取り組めるように、運動や手工芸などを用いて工夫します。

また、作業療法士は、高齢者の方の心のケアも行います。日常生活ができなくなるということは、大きなショックです。作業療法士は、高齢者の方の気持ちを理解し、励ましやアドバイスをしてくれます。

  言語聴覚士

老健には、リハビリの専門職として言語聴覚士というスタッフがいます。言語聴覚士は、ことばや聴こえに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門家です。

言語聴覚士の仕事内容

言語聴覚士は、以下のような仕事をします。

  • 失語症聴覚障害、嚥下障害などの症状に合わせた検査や訓練、指導を行う
  • 医師の指示のもと、嚥下訓練や人工内耳の調整などを行う
  • 本人だけでなく家族にもあたたかく寄り添う
  支援相談員

老健では、入所者やその家族の生活相談を担当するスタッフがいます。そのスタッフのことを「支援相談員」と呼んでいます。支援相談員の主な仕事は、次のとおりです。

  • 施設利用に関する手続きや説明などの窓口業務
  • 入所者やその家族の日常的な悩みや不安などの相談対応
  • 地域や関連機関との連携や調整などの外部連絡業務

支援相談員は、入所者やその家族にとって大きな支えとなる存在です。在宅復帰に向けて何か困ったことがあれば、気軽に相談することができます。また、介護制度やサービスの費用面など、分からないことがあれば、教えてもらうこともできます。

支援相談員は、入所者やその家族の立場に立って、親切に対応してくれます。老健での生活を快適にするために、支援相談員と良好な関係を築くことが大切です。

  栄養士

老健の栄養士は、入所者の健康を食事からサポートする大切な役割を担っています。具体的には、以下のような業務を行っています。

  • 献立の作成:栄養バランスや季節感、入所者の好みやアレルギーなどを考慮して、日々の献立を決めます。
  • 食材の発注・調理:献立に合わせて食材を発注し、衛生的に安全な調理を行います。食材の管理や在庫の確認も重要です。
  • 個別対応:入所者の身体状況や嚥下機能に合わせて、ソフト食や刻み食などの食事形態を提供します。必要に応じて栄養補助食品や経管栄養も対応します。
  • イベントメニュー:季節のイベント時には、旬の食材を使った特別メニューやおやつを用意します。入所者の楽しみや活気づけになるように工夫します。

老健の栄養士は、食が細くなりがちな高齢者にとって、美味しく・楽しい食事を提供することで、元気の源となる存在です。入所者とコミュニケーションを取りながら、その人らしい生活を支えることができます。

  薬剤師

老健の薬剤師とは、入所者の健康管理に欠かせない存在です。老健には、常駐する医師や看護師がいますが、薬剤師もその一員としてチームで連携しています。薬剤師の主な業務は、以下のようなものです。

  • 調剤:医師が処方した薬を、入所者に合わせて調合したり分包したりします。薬の量や種類に間違いがないか、注意深くチェックします。
  • 薬の受け渡し:調剤した薬を、入所者に直接渡すのではなく、担当の看護師に渡します。看護師が入所者に薬を飲ませたり、点滴をしたりするときに使います。
  • 服薬指導:場合によっては、入所者と直接顔を合わせて、薬の効果や副作用、飲み方などを説明します。入所者が自分の薬について理解し、正しく服用できるようにサポートします。

老健に入所する高齢者は、ほとんどが何かしらの病気や障害を抱えています。そのため、多くの薬を飲んでいることが多いです。薬剤師は、今までの薬の服用履歴や生活習慣を加味しながら、入所者の身体状況に適した薬を提供します。また、薬同士の相互作用やアレルギーなどのリスクを予防し、安全性を確保します。

老健の薬剤師は、入所者の健康と生活の質を向上させるために重要な役割を果たしています。医療チームと協力しながら、入所者一人ひとりに寄り添ったケアを行っています。これからも高齢化社会が進む中で、老健の薬剤師はますます必要とされる職業ですね。

 2.3 介護老人保健施設の設備

入所者は自分の居室を持ち、生活の一部を自立して行うことができます。

では、居室はどんなものなのでしょうか?居室には以下のような基準があります。

  • 居室の広さ
    • 多床室(4人以下):1人当たり8㎡以上
    • 個室(ユニット型など):10.65㎡以上
  • 居室内の設備
    • ベッド
    • タンスなどの収納用具
    • ナースコール
    • エアコン

居室だけでなく、施設内には入所者が快適に暮らすために必要な様々な部屋や設備があります。例えば、

  • 診察室:医師や看護師が入所者の健康状態をチェックする場所です。
  • 機能訓練室:リハビリを行う場所です。入所定員数に応じて最低面積が決まっています。ベッドや平行棒、階段、運動療法機器などがあります。
  • リビング:入所者がくつろいだり、交流したりする場所です。テレビやソファ、テーブルなどがあります。
  • 食堂:入所者が食事をする場所です。食事は栄養バランスに配慮されています。
  • 浴室:入所者が入浴する場所です。バスタブやシャワー、手すりなどがあります。
  • レクリエーションルーム:入所者が楽しみや趣味を楽しむ場所です。カラオケやゲーム、手芸などがあります。
  • 洗面所・トイレ:入所者が身だしなみを整えたり、排泄をしたりする場所です。洗面台やトイレ、手すりなどがあります。
  • サービス・ステーション:入所者が日用品を購入したり、相談したりする場所です。売店や窓口などがあります。
  • 調理室・洗濯室・汚物処理室:施設の運営に必要な場所です。調理室では食事を作ります。洗濯室では衣類や寝具を洗います。汚物処理室では排泄物やゴミを処理します。

以上が、介護老人保健施設の居室についての説明でした。居室は入所者のプライバシーや安全性を保障するとともに、生活の質を高めるために重要な役割を果たしています。

3. 介護老人保健施設の費用について

 3.1 介護老人保健施設の費用

介護老人保健施設老健)に入るときに気になるのが、費用ですよね。老健は有料老人ホームと違って、入居一時金は必要ありません。でも、月額利用料はどれくらいかかるのでしょうか?

  月額利用料
要介護度 多床室 従来型個室 ユニット型個室
要介護1 2万3,640円 2万1,420円 2万3,880円
要介護2 2万5,080円 2万2,770円 2万5,230円
要介護3 2万6,940円 2万4,630円 2万7,090円
要介護4 2万8,470円 2万6,220円 2万8,680円
要介護5 3万90円 2万7,750円 3万270円
食費 4万3,350円
居住費 1万1,310円 5万40円 6万180円
日常生活費 1万円

実は、月額利用料は部屋のタイプによって大きく異なります。相部屋と個室では、約2倍もの差があります。以下の表を見てください。

部屋のタイプ 費用
相部屋タイプ 7~10万円
個室タイプ 18~22万円

相部屋タイプは費用が安いですが、他の入居者と共有することになります。個室タイプは費用が高いですが、プライベートを確保できます。どちらを選ぶかは、自分の希望や予算に合わせて決めましょう。

  入居金について

老健に入居するときには、初期費用として入居一時金や敷金などを支払う必要はありません。これは、老健介護保険施設の一種であるためです。介護保険施設では、利用者の負担は月額の利用料だけです。

ただし、老健以外の介護保険施設でも、初期費用がかからない施設があります。例えば、民間企業が運営する老人ホームの中には、「入居金一時金0円」のものもあります。このような施設は、利用者が自由に入退去できることや、サービス内容が豊富であることなどが特徴です。

老健に入居するかどうかを決めるときには、初期費用だけでなく、月額の利用料やサービス内容なども比較検討してみましょう。自分に合った施設を見つけることが大切です。

  月額料金制
利用者負担段階
居住費
食費
ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 従来型個室 多床室
第1段階 2万4,600円 1万4,700円 9,600円 0円 9,000円
第2段階 1万2,600円 1万1,100円 1万1,700円
第3段階(1) 3万9,300円 2万4,600円 1万9,500円
第3段階(2) 4万800円

 

介護老人保健施設に入所すると、毎月支払う費用は以下の3つに分かれます。

  • 介護サービス費
  • 居住費
  • 食費

このうち、介護サービス費は介護保険制度に基づいて決まります。利用者は自分の収入や資産に応じて、介護サービス費の1割から3割を負担します。残りは国や自治体が補助します。

一方、居住費と食費は自己負担です。しかし、これらも一定の上限があります。つまり、月額利用料は定額ということです。

冒頭の表からわかることは、利用者の負担段階が高くなるほど、居住費と食費の負担限度額が高くなるということです。負担段階は、利用者の収入や資産によって決まります。収入が低い方や生活保護を受けている方の場合、賃料や食費が安く設定されています。

また、施設のタイプによっても費用が異なります。ユニット型は個室や共用スペースが広く、プライバシーが保たれています。従来型は個室や共用スペースが狭く、他の利用者との交流が多いです。ユニット型は従来型よりも居住費が高くなりますが、快適さや生活スタイルに合わせて選ぶことができます。

以上が、介護老人保健施設の月額利用料についての説明です。介護老人保健施設は民間が運営する施設と比較しても、家賃や管理費が低額に抑えられています。しかし、それでも毎月数万円から数十万円の費用がかかります。入所を検討する際には、経済状況や希望するサービス内容をしっかりと確認しましょう。

 3.2 費用の内訳

  食費

老健の食費について、初心者の介護従者の方にもわかりやすく説明します。

老健では、食事は毎日3食提供されますが、自分で食べられない場合や、家族と外出して食事をとる場合など、食事を抜くこともありますよね。

そんなとき、食費はどうなるのでしょうか?

老健の食費は、以下の2つの要素で構成されています。

  • 食材費: 料理に使われる食材の原価です。野菜や肉、魚などの素材や、調味料や油などの調理用品が含まれます。
  • 調理費: 料理を作るためにかかる費用です。厨房の設備や器具の維持費や消耗品、食堂の人件費や清掃費などが含まれます。

多くの施設では、食材費は食事の回数に応じて変動します。つまり、3食のうち1食でも抜いたら、その分だけ食材費が減額されます。

しかし、調理費は固定的なものなので、食事を抜いても変わりません。これは、厨房や食堂は常に稼働しているからです。

施設によっては、食事を抜いても「調理費」の分だけ「食費」を支払わなければならないことがあります。この点は契約時に確認しておくと良いでしょう。

また、老健の食費は医療費控除の対象となります。医療費控除とは、自分や家族の病気や怪我にかかった医療費を所得税から差し引く制度です。老健では医療サービスを受けているとみなされるため、入所料や介護料だけでなく、食費も医療費として扱われます。

  居住費

老健の居住費は居室のタイプによって費用は異なります。

  医療費

老健では、入所者の健康管理をするために、医師や看護師などの医療スタッフが常駐しています。入所者が病気になったり、ケガをしたりした場合、老健の医師が診察や治療を行います。その際にかかる医療費や薬代は、老健が全額負担してくれるので、入所者や家族は一切払う必要がありません。

しかし、老健の医師が負担する医療費には条件があります。それは、老健の医師が必要と判断した医療行為だけです。例えば、以下のような場合は自己負担となります。

  • 老健の医師と相談せずに、他の病院やクリニックに行った場合
  • 老健の医師が必要と認めない検査や治療を受けた場合
  • 老健の医師が処方しない薬を購入した場合

このように、老健での医療費は、老健の医師と連携して適切なケアを受けることが大切です。もし、老健以外の医療機関を受診する必要がある場合は、必ず事前に老健の医師に相談しましょう。そうすれば、不必要な自己負担を避けることができます。

  日常生活費

老健にはまず基本的な費用として、居住費食費があり次に、介護保険サービス料があります。

さらに、これら以外にも、以下のようなその他費用が発生することがあります。

項目 説明
洗濯代 施設で洗濯をしてもらう場合の費用 月額2,000円~3,000円
理美容代 施設で理髪や美容をしてもらう場合の費用 月額1,000円~2,000円
電話代 施設で電話を利用する場合の費用 月額500円~1,000円
新聞・雑誌 施設で新聞や雑誌を購読する場合の費用 月額500円~1,000円
その他嗜好品 施設でお菓子や飲み物などを購入する場合の費用 月額1,000円~2,000円

その他費用は、施設によって単位や項目が異なることがあります。入所前に確認しておくと良いでしょう。

ここで注意したいのは、おむつや薬に関する費用です。

おむつは、介護保険サービス料に含まれていますので、別途請求されることはありません。しかし、自分で好きなメーカーや種類のおむつを使いたい場合は、自己負担となります。

薬は、原則として施設が負担します。ただし、高価な薬を服用している場合は、入居を断られることもあります。また、自分で好きな医師や薬局を選びたい場合は、自己負担となります。

  介護サービス費

介護サービス費は、以下のように決まります。

  • 要介護度:自分の身体や生活に関する状態を評価したものです。要介護度が高いほど、介護サービス費も高くなります。
  • 加算料金:特別なサービスや設備を利用する場合にかかる追加料金です。例えば、個室や専門的なリハビリテーションなどです。加算料金は施設によって異なりますので、事前に確認しましょう。

介護老人保健施設での生活は、自分の負担額を把握することが大切です。介護サービス費については、施設の担当者やケアマネージャーに相談してください。

 3.2 サービス加算

介護老人保健施設では、基本的なサービスのほかに、リハビリや医療連携サービスという特別なサービスがあります。これらは、利用者の体の状態やニーズに合わせて提供されるもので、加算サービスと呼ばれています。

加算サービスを利用すると、料金が上がります。基本的なサービス料と同じく、原則1割負担となります。ただし、加算サービスは種類や内容によって料金が異なります。

  在宅復帰・在宅療養支援機能加算

介護老人保健施設老健)は、入所した高齢者が自宅に戻れるように、医療と介護の両方を提供する施設です。この老健のサービスの質を高めるために、在宅復帰・在宅療養支援機能加算という制度があります。

この制度では、老健が以下の3つのことをしっかり行っているかどうかをチェックします。

  • 週3回以上、効果的なリハビリを行う
  • リハビリの計画や成果を定期的に見直す
  • 退所後の生活についてアドバイスやフォローを行う

これらのことを満たしている老健は、国から加算というお金がもらえます。その分、高齢者により良いサービスを提供できます。

なぜこの制度が必要なのか

高齢者は、自分の家で暮らすことができれば、心も体も元気になります。しかし、病気やケガなどで自宅で生活できなくなった場合、老健に入所することになるかもしれません。

老健では、医師や看護師、介護士などが高齢者の健康や生活をサポートします。しかし、老健に長くいると、自分で動くことや考えることが少なくなります。その結果、自宅に戻っても生活できなくなる可能性があります。

そこで、老健では、高齢者が自宅に戻れるように、リハビリや指導を積極的に行う必要があります。それが在宅復帰・在宅療養支援機能加算の目的です。

この制度のメリットは何か

この制度のメリットは、高齢者と老健の両方にあります。

高齢者にとっては、

  • 自分の力を取り戻すことができる
  • 自宅に戻れる可能性が高まる
  • 退所後も安心して生活できる

老健にとっては、

  • サービスの質を向上させることができる
  • 国から加算を受け取ることができる
  • 高齢者や家族から信頼されることができる

というメリットがあります。

この制度を利用する方法は何か

この制度を利用する方法は簡単です。まず、在宅復帰・在宅療養支援機能加算を適用している老健を探します。次に、その老健に入所申し込みをします。そして、老健のスタッフと一緒にリハビリや指導を受けます。

ただし、この制度は全ての老健が適用しているわけではありません。また、入所するためには医師の診断書や介護保険の認定書などが必要です。詳しくは、老健や市町村の窓口に問い合わせてください。

  排泄支援加算

排泄支援加算とは、介護老人保健施設で排泄に介護を必要とする利用者に対して、排泄の自立を目指す支援を行うことで、報酬が加算される制度です。2018年度から始まりました。

排泄支援加算の対象者は、次のような条件を満たす方です。

  • 医師や看護師が、利用者の身体機能や環境を改善することで、排泄の介護が減らせる可能性があると判断した場合
  • 利用者が、排泄支援加算の制度に参加することを希望した場合

排泄支援加算の内容は、以下の通りです。

  • 介護老人保健施設の医師や看護師、介護支援専門員などがチームを組んで、利用者の排泄に関する問題点を分析します。
  • 分析に基づいて、利用者に合った支援計画を作成します。支援計画には、目標や方法、期間などが記載されます。
  • 支援計画に沿って、利用者に排泄の自立を促す支援を実施します。支援の例としては、トイレの位置やタイミングの調整、腹圧呼吸法や骨盤底筋トレーニングなどがあります。
  • 支援の効果や進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて支援計画を見直します。

排泄支援加算は、利用者の排泄の自立や生活の質の向上に役立つ制度です。介護従者としては、利用者の意思や状態を尊重しながら、適切な支援を提供することが大切です。

  短期集中リハビリテーション実施加算

介護老人保健施設でリハビリを受けると、どんなメリットがあるのでしょうか?実は、入所から3ヵ月間は、特別な加算がつくんです。それが「短期集中リハビリテーション実施加算」です。この加算とは、どんなものなのでしょうか?どんな施設が対象なのでしょうか?今回は、その内容と条件についてご紹介します。

短期集中リハビリテーション実施加算とは

短期集中リハビリテーション実施加算とは、医師の指導のもと、専門的なリハビリを行っている施設に支払われる加算です。この加算がつくと、施設はより高い報酬を受け取ることができます。この加算は、入所から3ヵ月間だけ適用されます。その後は、通常の介護サービス加算に切り替わります。

短期集中リハビリテーション実施加算の対象となる施設

短期集中リハビリテーション実施加算の対象となる施設は、以下の条件を満たしている必要があります。

個別リハビリとは、一人ひとりの状態や目標に合わせて、専門家が行うリハビリのことです。例えば、歩行や日常生活動作の改善や維持、認知機能やコミュニケーション能力の向上などが目的です。

短期集中リハビリテーション実施加算のメリット

短期集中リハビリテーション実施加算のメリットは、以下のようになります。

  • リハビリを受けることで、身体機能や精神状態の改善や予防が期待できること
  • リハビリを受けることで、自立した生活や社会参加への希望や意欲が高まること
  • リハビリを受けることで、退院後の在宅復帰や移行先への適応がスムーズになること
  認知症短期集中リハビリテーション実施加算

認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは、以下の条件を満たす場合に適用される加算です。

この加算の目的は、認知症患者の身体機能や日常生活能力の低下を防ぎ、自立した生活を支援することです。認知症患者にとって、適切なリハビリテーションは大切なケアの一つです。

この加算は、介護老人保健施設の基本料金に上乗せされます。具体的な金額は、地域や施設によって異なりますが、平均して1日あたり約300円程度の加算となります。

  再入所時栄養連携加算

介護老人保健施設では、入所者の栄養状態を見守り、必要に応じて管理栄養士が栄養指導や食事療法を行います。しかし、入所者が入院したり、病状が変化したりすると、栄養管理も変わることがあります。その場合は、どのように対応すればいいのでしょうか?

その一つの方法が、「再入所時栄養連携加算」という制度です。これは、以下のような場合に適用されます。

  • 入所者が医療機関に入院し、経管栄養や嚥下調整食など、施設入居時とは異なる栄養管理が必要になった場合
  • 入所者が再入所する際に、管理栄養士が医療機関での栄養食指導に同席し、再入所後の栄養管理について医療機関の栄養士と調整を行った場合

この制度は、介護老人保健施設の介護サービス加算として評価されます。つまり、施設が高品質なサービスを提供したことを認められて、報酬が増えるということです。

再入所時栄養連携加算は、入所者の栄養状態を改善し、生活の質を向上させることを目的としています。また、医療機関と施設の連携も促進されます。このように、再入所時栄養連携加算は、介護老人保健施設で働く介護従事者にとっても重要な制度です。

  その他加算の種類

上記で紹介した加算項目以外にも、多くの種類があります。

加算項目 自己負担額
30日あたり 1日あたり
ターミナルケア加算
※死亡日以前31日~45日
- 80円
ターミナルケア加算
※死亡日以前4日~30日
  160円
ターミナルケア加算
※死亡日前日~前々日
  820円
ターミナルケア加算
※死亡日
  1,650円
再入所時栄養連携加算   200円
入所前後訪問指導加算(Ⅰ)   450円
入所前後訪問指導加算(Ⅱ)   480円
試行的退所時指導加算   400円
退所時情報提供加算   500円
入退所前連携加算(I)   600円
入退所前連携加算(Ⅱ)   400円
退所前連携加算   500円
訪問看護指示加算   300円
かかりつけ医連携
薬剤調整加算(Ⅰ)
  100円
かかりつけ医連携
薬剤調整加算(Ⅱ)
  240円
かかりつけ医連携
薬剤調整加算(Ⅲ)
  100円
緊急時施設療養費   511円
所定疾患施設療養費(Ⅰ)   235円
所定疾患施設療養費(Ⅱ)   475円
認知症情報提供加算   350円
地域連携診療計画
情報提供加算
  300円
経口維持加算(Ⅰ) 400円 -
経口維持加算(Ⅱ) 100円  
口腔衛生管理体制加算 30円  
口腔衛生管理加算(Ⅰ) 90円  
口腔衛生管理加算(Ⅱ) 110円  
褥瘡マネジメント加算(Ⅰ) 3円  
褥瘡マネジメント加算(Ⅱ) 13円  
褥瘡マネジメント加算(Ⅲ)
※令和4年3月31日まで算定加算可能
10円  
排せつ支援加算(Ⅰ) 10円  
排せつ支援加算(Ⅱ) 15円  
排せつ支援加算(Ⅲ) 20円  
排せつ支援加算(Ⅳ) 100円  
療養体制維持特別加算(Ⅰ) 810円 27円
療養体制維持特別加算(Ⅱ) 1,710円 57円
栄養マネジメント強化加算 330円 11円
経口移行加算 840円 28円
療養食加算 180円 6円
在宅復帰在宅療養支援機能加算(Ⅰ)
(基本型のみ)
1,020円 34円
在宅復帰在宅療養支援機能加算(Ⅱ)
(在宅強化型のみ)
1,380円 46円
認知症専門ケア加算(Ⅰ) 90円 3円
認知症専門ケア加算(Ⅱ) 120円 4円
認知症行動・心理症状
緊急対応加算
6,000円 200円
サービス提供体制
強化加算(Ⅰ)
660円 22円
サービス提供体制
強化加算(Ⅱ)
540円 18円
サービス提供体制
強化加算(Ⅲ)
180円 6円

4. 介護老人保健施設への入居条件と流れ


 4.1 介護老人保健施設の入居条件

老健へ入所するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 原則65歳以上であること
  • 要介護1以上の介護認定を受けていること
  • 伝染病などの疾患がないこと
  • 病気での長期入院などを必要としないこと

ただし、40歳から64歳の特定疾病による要介護認定を受けている方も入所が可能です。また、施設によっては、他にも入所条件がある場合があります。そのため、入所を希望する施設に事前に確認することが大切です。

 4.2 入居までの流れ

老健へ入所する主な手続きの流れは以下の通りです。

手順 内容
①希望条件を整理する 入所したい地域や施設の種類、費用などを考える
②担当ケアマネジャーや医療ソーシャルワーカーに相談する 入所可能な施設や空き状況、費用負担などを確認する
③パンフレットの確認 施設の概要やサービス内容、費用などを見る
④施設見学 施設の雰囲気や設備、スタッフの対応などを実際に見る
⑤入所申し込み・書類の提出 入所申込書や身分証明書、医師の診断書などを提出する
⑥面接 施設長や担当者と話し合い、入所条件やサービス内容に同意する
⑦医師の診察 施設内で医師による健康チェックを受ける
⑧検討・入所判定 施設が入所者を選考し、結果を通知する
⑨契約 入所契約書や利用規約などに署名・捺印する
⑩入所 入所日に荷物や必要品を持って施設へ移動する

以上が老健入所の条件と手続きの概要です。

老健は高齢者が安心して暮らせる施設ですが、入所するためには多くのことを考える必要があります。

自分や家族の希望や状況に合った施設を選ぶためには、事前に情報収集や相談を行うことが大切です。

また、入所後も施設とのコミュニケーションや家族との連絡を維持することが重要です。

老健入所は、高齢者の人生の一つの節目です。

自分らしく快適に暮らせるように、入所前後の準備や対応をしっかりと行いましょう。

5. 介護老人保健施設のメリットとデメリット


 5.1 在宅復帰を目指せる

介護老人保健施設とは、要介護状態の高齢者が入所し、医療と介護の両方を受けながら、在宅復帰を目指す施設です。介護老人保健施設に入所するメリットは、以下の通りです。

  • 医療と介護の連携:介護老人保健施設では、医師や看護師、理学療法士作業療法士などの専門職が常駐し、入所者の健康状態やリハビリテーションの進捗をチームで管理します。また、必要に応じて、外部の医療機関とも連携して、適切な医療サービスを提供します。
  • 在宅復帰への支援:介護老人保健施設では、入所者の在宅復帰を最終目標としています。そのため、入所者や家族と協力して、個別の在宅復帰計画を作成し、定期的に評価や見直しを行います。また、在宅復帰に向けて、日常生活動作や社会参加などの能力向上を目指すリハビリテーションや生活訓練を行います。
  • 費用負担の軽減:介護老人保健施設では、医療費は公的医療保険制度でカバーされます。また、介護費は介護保険制度で一部負担されます。そのため、自己負担額は月額約10万円程度となります。これは、特別養護老人ホームなどの他の施設よりも安いです。

 5.2 機能訓練が充実している

老健のリハビリは、家庭復帰を目指す生活期リハビリです。入所から退所までの流れを、わかりやすく解説します。

入所後3ヶ月以内は集中的にリハビリ 老健に入ってから3ヶ月以内は、短期集中リハビリや認知症短期集中リハビリが受けられます。これらは、身体機能や生活動作の改善を目指す個別のリハビリです。1週間に3回以上、1回20分以上行われます。

認知症短期集中リハビリは、認知症と診断された方が対象です。3ヶ月以内に限り、1週間に3回まで受けられます。ただし、実施している施設は少ないので注意が必要です。

3ヶ月以上経過後はリハビリ頻度が減る可能性あり 3ヶ月以降は、短期集中リハビリや認知症集中リハビリが受けられなくなります。そのため、少ない場合1週間に2回にリハビリ頻度が減る可能性があります。

老健の種類によっても、リハビリの充実度が違います。超強化型や在宅強化型老健は、他の施設よりも多くの回数や時間で個別のリハビリを行っています。また、週3回以上の充実したリハビリを行っている割合も高いです。

老健で行うさまざまな種類のリハビリ 老健では、個別の機能訓練だけでなく、集団で行う運動や歌などの集団リハビリや、日常生活そのものが生活リハビリとなります。

集団リハビリでは、同じ悩みを持つ仲間と交流しながら、意欲や自信を高めます。生活リズムを整えて社会参加につなげます。

生活リハビリでは、トイレや入浴、食事など日常場面で、個別の機能訓練でできるようになった動作を練習します。日常生活のリハビリは、看護師や介護士などのスタッフが一緒になって行います。

家庭復帰に向けてのサポート 老健のリハビリの目標は、家庭復帰です。そのため、退所前には自宅を訪問して、自宅生活で必要な動作練習や介助方法を指導します。また、車椅子や手すりなどの環境調整や、在宅サービスの手配もします。

退所前後訪問指導は、超強化型や在宅強化型老健では約7割が実施していますが、基本型やその他型老健では約4割以下です。施設によって違いがあるので、事前に確認しましょう。

老健でリハビリを受けることで、家庭復帰や社会参加を目指すことができます。老健の種類や施設ごとにリハビリの内容や頻度が違うので、自分に合った施設を選ぶことが大切です。

老健に入居したいけど、どんな施設がいいかわからない」という方は、ケアスル介護で相談してみることがおすすめです。

 5.3 デメリットとしての入居期間の限定

介護老人保健施設老健)は、在宅復帰を目指すための介護保険施設です。しかし、その目的から、入居期間に制限があることがデメリットとして挙げられます。

老健の入居期間は原則3ヶ月 老健に入居するには、要介護1以上の認定を受けていることが条件です。しかし、それだけではなく、在宅復帰が見込めることも重要な判断基準です。老健は、病院から退院した後や特別養護老人ホーム(特養)の入居待ちの間など、一時的に介護や医療が必要な方を受け入れる施設です。そのため、入居期間は原則3ヶ月と定められており、その後は在宅復帰するか他の施設に移るかしなければなりません。

ただし、3ヶ月という期間はあくまで目安であり、個々の状況に応じて延長することも可能です。例えば、在宅復帰に向けてリハビリを続ける必要がある場合や、自宅や他の施設への移行が困難な場合などです。延長するかどうかは、施設側が入所者や家族と相談しながら判断します。ただし、延長できる期間にも上限があります。一般的には6ヶ月程度が限度とされており、それ以上は特別な事情がない限り認められません。

入居期間の限定によるデメリット 老健の入居期間の限定によって生じるデメリットは以下のようなものがあります。

  • 入居者や家族にとっては、短期間で何度も施設を移ることになり、精神的・経済的な負担が大きくなります。
  • 施設側にとっては、入居者の入れ替わりが激しくなり、人員配置やサービス計画の立案・実施が困難になります。
  • 地域全体にとっては、老健から特養への移行者が増えることで、特養の入居待ちが長くなります。

入居期間の限定に対処する方法 老健の入居期間の限定に対処する方法としては以下のようなものがあります。

  • 入居前に施設やケアマネジャーと相談し、在宅復帰や他施設への移行に向けた計画を立てる
  • 入居中にリハビリや医療ケアを積極的に受けるとともに、自宅で必要な介護サービスや福祉用具などを確認する
  • 入居後に在宅復帰できた場合は、通所リハビリや訪問看護・介護などを利用することで自立を維持する
  • 在宅復帰できない場合は、特養や有料老人ホームなどの長期入所施設を検討する

 5.4 デメリットとしての多床室の問題

多床室とは、複数の入居者が同じ部屋で生活することを指します。老健では従来型多床室が主流で、個室と多床室がある施設もありますが、個室は少数派です

多床室には、以下のようなメリットがあります。

  • 費用が安い
  • 他の入居者と交流できる
  • 緊急時にすぐに対応できる

しかし、多床室には以下のようなデメリットもあります。

  • プライバシーの確保が難しい
  • 騒音や臭いなどの環境ストレスがある
  • 感染症のリスクが高い
  • 他の入居者とのトラブルが起こりやすい

これらのデメリットは、入居者の心身の健康や生活の質に影響を与える可能性があります。特にプライバシーの確保は、人間の基本的な権利であり、尊重されるべきです

多床室の問題を解決するためには、以下のような対策が考えられます。

  • 個室への移行を促進する
  • 多床室内でプライバシーを保護する工夫をする(カーテンやパーテーションなど)
  • 入居者同士のコミュニケーションを支援する
  • 環境衛生や感染予防を徹底する

以上が、介護老人保健施設の多床室の問題とその対策についてでした。多床室は費用面や交流面でメリットがありますが、デメリットも無視できません。老健を選ぶ際には、自分や家族のニーズに合った居室タイプを慎重に検討しましょう。

 5.5 デメリットとしての生活支援サービスの不足

老健では以下の理由から、生活支援サービスが十分に提供されていないことが多いのです。

  • 人員不足や時間不足により、介護や医療に優先的に力を入れなければならない
  • 入所者のニーズや個性に応えることが難しい
  • 施設内での活動に限られており、地域とのつながりが希薄である
  • 生活支援サービスに対する評価や報酬が低く、モチベーションが下がる

生活支援サービスの不足は、入所者の満足度や在宅復帰率に悪影響を及ぼします。また、介護職員の負担やストレスも増加させます。そのため、老健では以下のような取り組みが必要です。

  • 人員配置や勤務体制を見直し、生活支援サービスに充てる時間や人材を確保する
  • 入所者の意見や要望を聞き、個別化されたプランを作成する
  • 地域と連携し、外出や交流などの機会を増やす
  • 生活支援サービスの重要性や効果を認識し、評価や報酬を改善する

 5.6デメリットとしてのレクリエーションやイベントの充実度

その理由は、以下のようなものが挙げられます。

  • 介護老人保健施設は医療的なサービスが優先されるため、レクリエーションやイベントに割く時間や予算が少ない
  • 介護老人保健施設に入所する高齢者は重度の介護が必要な場合が多く、レクリエーションやイベントに参加することが困難な場合もある
  • 介護老人保健施設に勤務する職員はレクリエーションやイベントの企画や実施に関する研修や経験が不足している場合もある

このように、介護老人保健施設ではレクリエーションやイベントの充実度が低いことがデメリットとなります。レクリエーションやイベントの充実度が低いと、高齢者は以下のような問題に直面する可能性があります。

  • 気分が沈んだり、孤独感や虚無感を感じたりする
  • 認知機能や運動機能の低下や退化を招く
  • 人間関係やコミュニケーションの欠如により、孤立したり、対人恐怖症になったりする
  • 季節感や生活リズムを失ったり、日常生活に無関心になったりする

6. 特別養護老人ホームとの違いについて


 6.1 介護老人保健施設特別養護老人ホームの違いを理解する

介護老人保健施設特別養護老人ホームは、どちらも高齢者の介護を行う施設ですが、その目的やサービス内容には大きな違いがあります。以下に、主な違いをまとめてみました。

  • 介護老人保健施設は、医療と介護を一体的に提供する施設で、要介護状態の高齢者が入所し、リハビリや看護などの医療サービスを受けながら、日常生活の支援を受けます。介護老人保健施設では、入所者の状態に応じて、短期間の入所や通所サービスも利用できます。
  • 特別養護老人ホームは、要介護状態の高齢者が安心して暮らせるように、生活上の援助や介護を行う施設で、医療サービスは基本的に提供しません。特別養護老人ホームでは、入所者の自立や社会参加を促すために、レクリエーションや生活相談などのサービスも行われます。

以上のように、介護老人保健施設特別養護老人ホームは、それぞれ異なる役割や特徴を持っています。介護従事者としては、これらの違いを正しく理解し、利用者のニーズに合ったサービスを提供することが重要です。

7. 介護老人保健施設を探す方法と注意点


 7.1 老健を探すためのポイントと方法

老健には入所条件や費用負担などがありますので、適切な施設を探すことが重要です。

老健を探すためのポイントと方法は以下の通りです。

  • 入所条件を確認する老健に入所するには、要介護1以上であること、医師の同意書が必要であること、在宅復帰が見込めることなどが条件です。また、地域や施設によっては、空き状況や待機期間が異なりますので、事前に確認しておく必要があります。
  • 費用負担を把握する老健に入所する場合、医療費や介護費は公的な保険でカバーされますが、食費や住宅費などは自己負担となります。自己負担額は施設によって異なりますので、比較検討することが大切です。また、低所得者や障害者などは減免制度や補助金制度を利用できる場合がありますので、申請方法や条件を確認しておくことも忘れないでください。
  • サービス内容や環境を見極める老健では、入所者のニーズに応じて様々なサービスを提供しています。例えば、リハビリや看護だけでなく、レクリエーションや相談支援などもあります。また、施設の規模や立地、居室の種類や設備なども重要なポイントです。実際に見学や体験入所をしてみることで、サービス内容や環境をより具体的に把握できます。

老健は高齢者の自立を支える大切な施設ですが、入所するには様々な条件や費用がかかります。自分や家族の状況に合った施設を見つけるためには、事前に情報収集や比較検討を行うことが必要です。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

 

おわりに

介護老人保健施設老健)について様々な側面からご紹介しました。老健は高齢者の方々が健康的で快適な日々を送るための重要な場所であり、多くのサービスや支援が提供されています。費用や入居条件、利点とデメリット、そして特別養護老人ホームとの違いなど、老健に関するさまざまな情報をお伝えしました。

老健を選ぶ際には、ご自身やご家族の状況に合った最適な施設を見つけることが大切です。ポイントや注意点を把握し、じっくりと検討されることをお勧めします。