認知症サポートの道

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認知症のBPSDによる性的な異常行動について

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https://youtube.com/shorts/kMKO_TRJ360?si=Du5y3XtaUQgBGa0B
認知症のBPSDとは、認知症の進行に伴って現れる行動や心理の変化のことで、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略です。BPSDにはさまざまな症状がありますが、その中でも性的な異常行動は、介助者や家族にとって大きな悩みや苦痛の原因となります。

性的な異常行動とは、認知症の人が、自分や他人の性器に触れたり、下着を脱いだり、性的な言葉やジェスチャーを発したり、性交渉を求めたりするなどの行動のことです。このような行動は、認知症の人にとっては自然なことかもしれませんが、周囲の人にとっては不快であり、場合によっては暴力や虐待につながる恐れもあります。

では、なぜ認知症の人は性的な異常行動を起こすのでしょうか?その原因は、主に以下の3つに分けられます。

- 脳の機能低下による欲望のコントロールの喪失
- 記憶の障害による自分や他人の認識の変化
- 環境や対人関係のストレスによる不安や欲求不満の発散

まず、脳の機能低下による欲望のコントロールの喪失とは、認知症の人の脳では、前頭葉という部分が萎縮していきます。前頭葉は、自分の感情や欲望を抑えたり、社会的なルールや常識に従ったりすることを司る部分です。したがって、前頭葉が機能しなくなると、認知症の人は、自分の性的な欲望をコントロールできなくなり、場所や相手を選ばずに性的な行動をとるようになります。

次に、記憶の障害による自分や他人の認識の変化とは、認知症の人の脳では、側頭葉という部分が萎縮していきます。側頭葉は、自分や他人の顔や名前、過去の出来事などを記憶する部分です。したがって、側頭葉が機能しなくなると、認知症の人は、自分や他人の正しい年齢や関係性を忘れてしまい、自分は若い頃に戻ったと思ったり、配偶者や子供を見知らぬ人だと思ったりします。その結果、認知症の人は、自分にとっては恋人や配偶者だと思っている人に対して、性的な行動をとるようになります。

最後に、環境や対人関係のストレスによる不安や欲求不満の発散とは、認知症の人は、自分の身体や生活が変化していくことに不安や恐怖を感じたり、周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、孤独や退屈を感じたりします。そのような状況では、認知症の人は、性的な行動をとることで、自分の存在やアイデンティティを確認したり、人とのつながりや愛情を求めたり、ストレスや不満を発散したりするようになります。

以上のように、認知症のBPSDによる性的な異常行動は、脳の機能低下や記憶の障害、環境や対人関係のストレスなどの複雑な要因によって引き起こされるものです。そのため、介助者や家族は、単に止むを得ないと割り切るのではなく、認知症の人の気持ちや状況を理解し、適切な対応をすることが大切です。

では、具体的にどのように対応すればよいのでしょうか?以下に、性的な異常行動に対する対応のポイントをいくつか紹介します。

- 性的な行動をとる理由や背景を探る
- 性的な行動をとるトリガーを避ける
- 性的な行動をとるタイミングや場所を予測する
- 性的な行動をとる相手を変える
- 性的な行動をとる代わりの行動を提供する
- 性的な行動をとる際の注意や制限を伝える
- 性的な行動をとった後のフォローや評価をする

まず、性的な行動をとる理由や背景を探るというのは、認知症の人が性的な行動をとるのは、何かしらのメッセージを伝えたいからだと考えることです。例えば、性的な行動をとるのは、自分の存在やアイデンティティを確認したいからかもしれませんし、人とのつながりや愛情を求めているからかもしれませんし、ストレスや不満を発散したいからかもしれません。そのようなメッセージを読み取ることで、認知症の人の気持ちやニーズに寄り添うことができます。

次に、性的な行動をとるトリガーを避けるというのは、認知症の人が性的な行動をとるのを引き起こす要因を特定し、できるだけ排除することです。例えば、性的な行動をとるのは、テレビや雑誌などの性的な刺激に反応しているからかもしれませんし、下着やパジャマなどの衣服に不快感を感じているからかもしれませんし、排泄や入浴などの介助に恥ずかしさや不安を感じているからかもしれません。そのようなトリガーを減らすことで、性的な行動をとる頻度や程度を抑えることができます。