認知症サポートの道

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認知症の方への傾聴

こんにちは、認知症のブログを読んでくれてありがとうございます。今回のテーマ傾聴とは、相手の話をじっくりと聞き、理解し、共感することです。傾聴は、コミュニケーションや人間関係を改善するだけでなく、自分自身の成長にもつながります。この記事では、傾聴の基本知識や方法について、お伝えしたいと思います。興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。

1|傾聴とは

傾聴とは、相手の話を深く丁寧に聞き、相手に肯定的な関心を寄せ、共感的理解を示すコミュニケーションの技法です。傾聴により、話し手は自分自身について深く理解することができ、どのような行動をとるべきか気付くきっかけを与えることが期待できます。

 1-1|傾聴の三原則

傾聴力とは、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」の3つの原則ができていることです。傾聴力の3原則は次の通りです。


1. 共感的理解

相手の考え、話し、感情をその通りだと感じ、気持ちや立場を察することです。


2. 無条件の肯定的関心

相手の話を良い悪いと決めつけず、ありのままを受容することです。


3. 自己一致

自分が感じていることと相手の感情や話すことが一致していることです。聴き手が自分の気持ちを偽ったり、表面的に受容共感をしている振りをすることなく、無理せずそのままの自分の姿でいるようにしましょう。

傾聴は相手に寄り添って話を聞くだけでなく、相手の気持ちや考え方を理解し、受け入れることで信頼関係を築くことができるコミュニケーションスキルです。傾聴する際には、相手の話に注意深く耳を傾け、相槌や要約などでフィードバックをしながら、相手の感情や意図に共感し、無条件に受容する姿勢が大切です。

 

 1-2|傾聴を生み出した心理学者ロジャース

傾聴は、アメリカの心理学者ロジャースが提唱したカウンセリングの方法です。ロジャースは、人間は自分自身を肯定的に受け入れることができれば、自己実現に向かって成長すると考えました。そのためには、カウンセラーが来談者(相談者)に対して以下の三つの条件を満たす必要があります。

  • 無条件の肯定:来談者の存在や感情を否定せず、受け入れること。
  • 共感的理解:来談者の気持ちや考え方を感じ取り、反映すること。
  • 真摯さ:カウンセラー自身が本当の自分であり、偽りや隠しごとがないこと。

これらの条件を満たすカウンセリングを、ロジャースは非指示的カウンセリングと呼びました。非指示的というのは、カウンセラーが来談者に対して指示や助言を出さないという意味です。ロジャースは、来談者が自分自身の主人公であり、自分の問題に対して最善の答えを持っていると信じていました。そのため、カウンセラーは来談者に寄り添いながら傾聴することで、来談者が自分で気づきや変化を起こすことを促します。

 

2|傾聴の基本的な技法や使い方

傾聴の効果としてまず大切なことは、介護を受ける人が心を開いて前向きになることが大切です。そういった変化を引き出すのに基本的な技法を身につけましょう。

傾聴の基本的な技法として、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」「沈黙」「アイコンタクト」などがあります。これらの技法は、話し手が自分の考えや感情を整理し、具体的な行動に移れるようにするために役立ちます。

傾聴する際には、相手の話に注意深く耳を傾け、相槌や要約などでフィードバックをしながら、相手の感情や意図に共感し、無条件に受容する姿勢が大切です。

 

うなずき

 うなずきとは、相手の話に対して、頷くことで聴いていることを示す技法です。うなずきは、相手に関心や理解を伝えるとともに、話を続けてほしいというサインにもなります。うなずきは、話のペースや内容に合わせて自然に行うことが大切です。過度に頷いたり、無関心に見えたりしないように注意しましょう。

 

あいづち

あいづちとは、相手の話に対して、「はい」「そうですか」「へえ」などの言葉や音声で反応する技法です。あいづちは、相手の話を受容し、共感していることを伝える効果があります。あいづちは、相手の言葉を少しだけ繰り返すことで、より聴いていることを示すことができます。例えば、「苦しかったんですね」「楽しかったんですね」などです。あいづちは、相手の話を遮らないようにタイミングを見て行うことが重要です。また、否定的なあいづちや評価的なあいづちは避けましょう。

 

繰り返し

繰り返しとは、相手の話した内容やキーワードをそのまま繰り返して伝える技法です。繰り返しは、相手の話を正確に理解していることを確認するとともに、相手に自分の考えを整理させる効果があります。繰り返しは、相手の話が長くなった時や要点が分かりにくい時に行うと効果的です。ただし、機械的に繰り返すのではなく、相手の感情やニュアンスも含めて繰り返すように心がけましょう。

 

言い換え

言い換えとは、相手の話した内容やキーワードを自分の言葉で言い換えて伝える技法です。言い換えは、相手の話を深く理解していることを示すとともに、相手に自分の気持ちや考えを気づかせる効果があります。言い換えは、否定的な発言を肯定的な言い方に変えたり、抽象的な発言を具体的な言葉に変えたりすることで行うことができます。例えば、「人の顔色を気にしてしまいます」→「相手の気持ちを大切にされていますね」などです。言い換えは、相手の話の内容や意味を変えたり付け加えたりしないように注意しましょう。また、相手の感情やニーズにも配慮して言い換えるようにしましょう。

 

沈黙

傾聴とは、相手の話をよく聞き、理解し、共感することです。傾聴をする際には、沈黙を活用することが有効です。沈黙とは、相手の話を聴きながら、自分は何も発言しないで黙っている技法です。

沈黙は、相手に話す時間や空間を与えるとともに、相手の自己洞察や気づきを促す効果があります。相手が話の途中で沈黙した時や、相手が深い話をしている時に行うと効果的です。ただし、沈黙が長すぎると相手に不安や圧迫感を与えることもあるので、適度な長さにしましょう。また、沈黙中も相手の表情や態度に注意を払って関心を示すようにしましょう。そして沈黙は、相手との信頼関係を築くための重要なコミュニケーションスキルです。沈黙を活用することで、相手の話がよく理解できたり、さらに深く相手を理解したりしたいときには、相手にその気持ちを伝えることができます。

 

アイコンタクト

アイコンタクトは、話し手にこちらの気持ちが伝わっていることを示すために重要なテクニックです。アイコンタクトをすることで、話し手は自分が真剣に話を聞いてくれていると感じ、安心して話すことができます。

アイコンタクトをするときは、相手の目を見続けるのではなく、適度に目をそらしたり、うなずいたりすることで、自然な雰囲気を作ります。視線を長時間固定されると、相手に威圧感を与えてしまうことがあります。

また、アイコンタクトは、話し手の感情を読み取るためにも役立ちます。話し手が悲しんでいるときは、悲しそうな表情を、喜んでいるときは、喜んでいる表情をするようにしましょう。

アイコンタクトは、傾聴の基本的なテクニックです。アイコンタクトをすることで、より効果的に傾聴することができます。

以下に、アイコンタクトの具体的なポイントをまとめます。

 

  • 相手の目を見続けるのではなく、ときどき視線を外す。
  •  話し手の感情を読み取る。
  • アイコンタクトをすることで、相手にこちらの気持ちが伝わっていることを示す。

 

アイコンタクトを習得することで、より効果的に傾聴できるようになり、利用者様との人間関係を円滑にすることができます。

 

 

 

3|傾聴する際に気をつけるべきポイント

傾聴する際には、いくつかのポイントに注意することが大切です。まず、相手の話を否定したり反論したりしないようにしましょう。

これは、「受容」と呼ばれる傾聴の原則の一つです。「受容」を実践することで、相手は自分の気持ちや考えを安心して伝えることができます。

しかし、私たちは、自分とは異なる意見を聞くと、反論したくなることがあります。これは、自分の意見を正しいと思いたい気持ちや、自分の価値観を守りたい気持ちが働くからです。例えば、利用者様が

「私はこんな料理は嫌いだ」

と折角用意した料理に対して批判するようなことを言ったときに、

「えっ、なんでこの料理が嫌いなの?」

ショックを受けたり、価値観の違いを受け入れれずに反対の気持ちを表してしまうことがあります。しかし、そうすると相手は「自分は受け入れられていない」と感じてしまい、話す気を失ってしまうかもしれません。これは、反論は相手の意見を否定している行為だからです。

私たちは、自分とは異なる意見を聞いても、反論せずに受け入れるように心がけましょう。そうすることで、利用者様との信頼関係を築くことができ、より良いコミュニケーションをとることができるようになります。

また、アドバイスをしないように心がけることも重要です。話を途中で遮らないようにし、自分の話ばかりしては上手くいかないでしょう。軽々しく「分かります」と言ってしまうのも禁物です。

傾聴する際には、「耳できく」「目できく」「心できく」の三点がポイントです。相手の言葉によるメッセージに最後まで耳を傾け、理解することが大切です。また、相手の言葉以外の行動(姿勢、表情、しぐさ、声の調子など)に注意を払うことも重要です。

共感と同情の違い

傾聴においては、話し手に対して共感することが重要ですが、同情することは避けるべきです。なぜなら、共感と同情は本質的に異なるからです。

共感とは、話し手の立場に立って感情を共有することです。共感を示すことで、話し手は自分の気持ちを受け入れられていると感じ、安心します。また、共感は話し手の自尊心や自己効力感を高めます。

同情とは、話し手の立場から離れて、哀れみや憐れみを抱くことです。同情を示すことで、話し手は自分の気持ちを否定されていると感じ、傷つきます。また、同情は話し手の自己否定や被害者意識を強めます。

傾聴においては、話し手の気持ちや考えを尊重し、自分の価値観や判断を押し付けないことが大切です。話し手に寄り添って共感することで、話し手との関係性を深めることができます。



4|認知症の方が話しやすい雰囲気を作る方法

認知症の方と話すときには、相手の気持ちに寄り添うことが大切です。認知症の方が嫌がる話題を避けて、好きなことや楽しかったことを話してあげましょう。そうすることで、認知症の方は安心感や幸福感を感じることができます。また、話し方も重要です。早口や大声は認知症の方に不快感や恐怖感を与える可能性があります。ゆっくりと優しく話すことで、認知症の方は話についていきやすくなります。認知症の方との会話は、相手のペースに合わせて行うことがコツです。

 

5|認知症の方の話を傾聴する

認知症の方とのコミュニケーションは、一般的な会話とは異なるスキルが必要です。認知症の方は、言葉を正しく使えなかったり、話の流れについていけなかったりすることが多いです。そのため、傾聴者は、相手の言葉だけでなく、表情やしぐさなどからも相手の気持ちを読み取ることが大切です。いわゆる非言語メッセージが大事になってきます。非言語メッセージついては別記事で詳しく解説していますので是非一読下さい。

 

yacchan77.hatenablog.com

 

 

傾聴するときには、認知症の方に寄り添い、相手のペースに合わせることが重要です。相手が話したいことを話させてあげたり、話題を変えたりすることで、相手の興味や関心を引き出すことができます。また、相手の話に肯定的に応えたり、感情的に共感したりすることで、相手に安心感や自信を与えることができます。

 

 

 

終わりに

今回は、傾聴の重要性や効果、方法などについてお話ししました。傾聴は、相手の気持ちや考えを理解するだけでなく、自分自身の感情や思考にも気づくことができる素晴らしいスキルです。傾聴をすることで、人間関係がより良くなり、ストレスや悩みも軽減されるかもしれません。傾聴は難しくないですが、習慣にするには練習が必要です。日常生活で、相手の話に耳を傾けることを心がけてみましょう。最後まで読んでくださってありがとうございました。次回のブログもお楽しみに!