こんにちは。今回は、認知症の治療とケアについてのアドバイスをお届けします。認知症になった方やそのご家族の方にとって、日常生活に多くの困難や不安が生じることでしょう。この記事ではでは、そんな方々のために、認知症の知識やケアについて解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
- 1|認知症の新薬【レカネマブ】が登場!でも予防が一番大切な理由
- 1-1|レカネマブとは
- 1-2|予防こそが最大の防御
- 1-3|予防は個人だけではできない
- 2|認知症の治療法ついて
- 3|甲状腺機能低下症や脳血管疾患による認知症
- 4|認知症の人に起こる心理的な変化とケア
- 6|高齢者心理とライフイベントの関係
1|認知症の新薬【レカネマブ】が登場!でも予防が一番大切な理由
認知症は、脳の神経細胞が壊れて、記憶や判断力などの認知機能が低下する病気です。認知症になると、日常生活や人間関係に大きな影響が出ます。認知症は不治の病と言われてきましたが、最近、米国で画期的な新薬が登場しました。その名は「レカネマブ」です。
1-1|レカネマブとは
レカネマブは、エーザイと米バイオジェンが開発した薬で、アルツハイマー型認知症の進行を抑える効果があります。アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも最も多いタイプで、脳にアミロイドベータという異常なたんぱく質がたまることが原因だと考えられています。レカネマブは、このたんぱく質を取り除いて、神経細胞を守る働きをします。
レカネマブは、今年7月に米食品医薬品局(FDA)から正式に承認されました。これは世界初の快挙です。レカネマブは、病気の原因物質に直接働きかけて進行を遅らせる薬だからです。これまでの認知症の薬は、症状を和らげるだけでした。
レカネマブは、日本でも承認申請中です。日本は高齢社会の先進国で、認知症の患者数も多くなっています。レカネマブが日本でも使えるようになれば、多くの人に希望を与えることでしょう。
しかし、レカネマブにも限界があります。まず、レカネマブはすべての認知症に効くわけではありません。アルツハイマー型以外の認知症には効果がないかもしれません。また、レカネマブは治癒する薬ではありません。神経細胞が壊れてしまったら元に戻すことはできません。レカネマブは、早期に投与すれば2〜3年ほど進行を遅らせることができますが、それ以上は期待できません。
つまり、レカネマブは発症を遅らせる「時間稼ぎ」にすぎないということです。それでも価値があると思いますか?私は思います。なぜなら、その時間を使って予防に力を入れることができるからです。
1-2|予防こそが最大の防御
認知症の原因はまだ完全には解明されていませんが、研究によって、認知症になりやすいリスク要因がいくつか見つかっています。それらのリスク要因は、人間の行動や生活環境に関係しています。つまり、自分で改善できる可能性があるということです。
英医学誌ランセット委員会は、認知症になりやすい12のリスク要因を発表しました。それらは以下の通りです。
- 教育水準が低い
- 難聴
- 高血圧
- 過度な飲酒
- 肥満
- 喫煙
- うつ病
- 社会的な孤立
- 運動不足
- 糖尿病
- 頭部外傷
- 大気汚染
これらのリスク要因を減らすことで、認知症の発症率を約40%下げることができると言われています。逆に言えば、これらのリスク要因を放置すると、認知症になる可能性が高まるということです。
これらのリスク要因は、人生の段階によって異なります。若年期には教育水準が重要です。教育を受ける期間が長いほど、脳が認知症に抵抗する力が強くなります。中年期には難聴や高血圧などの生活習慣病に注意しましょう。難聴は脳への刺激が減ることで認知機能を低下させます。高血圧は脳血管を傷つけて認知症を引き起こす可能性があります。高齢期には社会的な孤立や運動不足を避けましょう。社会的な孤立は脳の萎縮やうつ病を招きます。運動不足は血流や代謝を悪化させて脳にダメージを与えます。
これらのリスク要因は、一つ一つが大きな影響を与えるわけではありません。しかし、積み重なっていくと、認知症になる確率が高くなっていきます。だからこそ、早めに対策を取ることが大切です。
もちろん、予防をしても認知症になる人はいます。それは、未解明のリスク要因や遺伝的な要素が関係しているかもしれません。しかし、予防をしなければ、予防できたはずの約40%の可能性を失ってしまいます。
1-3|予防は個人だけではできない
認知症の予防は個人の努力だけではできません。社会全体で支援する必要があります。
例えば、教育水準です。教育水準は個人の能力や努力だけでは決まりません。社会的な背景や経済的な事情も影響します。
教育機会が平等に与えられるように、社会的な支援や制度が必要です。また、社会人になっても学び続けることができるように、リカレント教育の充実や働き方の改革が求められます。
難聴や高血圧などの生活習慣病も、個人の責任だけではありません。職場や地域での健康管理や相互支援が大切です。また、医療や福祉のアクセスや質を向上させることも必要です。
社会的な孤立は、高齢者だけでなく若い世代にも広がっています。コロナ禍での自粛生活やテレワークなどで、人との交流が減っている人も多いでしょう。社会的な孤立を防ぐためには、家族や友人とのコミュニケーションを大切にしましょう。また、趣味やボランティアなどで地域社会に参加することもおすすめです。
大気汚染は、個人ではどうすることもできません。環境問題は国際的な協力が必要です。私たち一人一人も、エコな生活を心がけて、地球に優しい行動をしましょう。
認知症は個人の問題ではなく、社会の問題です。認知症になった人やその家族に対して、理解や配慮を示すことが大切です。また、認知症にならないためには、自分だけでなく周りの人も気をつけることが必要です。
レカネマブは認知症の進行を遅らせる薬ですが、予防する薬ではありません。予防する方法は、私たち自身の手で作り出すことができます。認知症は座して待つ宿命ではありません。予防する力は私たちにあります。
2|認知症の治療法ついて
認知症は、脳の機能が低下することで起こるさまざまな症状の総称であり、その原因となる疾患によって治療方法が異なります。
認知症の治療薬は大きく2種類あります。
2-1|認知症機能改善薬
認知機能改善薬: 記憶や判断力をサポート
認知機能改善薬は、認知症の症状である記憶や判断力の低下を改善するための薬です。アルツハイマー型認知症では、脳内のメッセンジャーである神経伝達物質が不足します。これらの薬は、神経伝達物質の働きを高めることで脳の活動を活性化させます。
ドネペジル(アリセプト): アセチルコリンという重要な神経伝達物質の量を増やす薬です。アリセプトは錠剤や口腔内崩壊錠で1日1回服用します。副作用として吐き気や下痢があることがあります。アルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症にも効果があります。
ガランタミン(レミニール): アセチルコリンの効果を増強する薬で、1日2回の服用がおすすめです。副作用は吐き気や下痢があります。
リバスチグミン(イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ): アセチルコリンを増やす薬で、皮膚に貼るパッチ剤として使用します。副作用は皮膚のかゆみや発赤が報告されています。
メマンチン(メマリー): グルタミン酸の過剰な刺激を抑える薬で、神経細胞を保護します。頭痛やめまいが副作用として現れることがあります。
2-2|精神安定剤薬
精神安定薬: 不安や精神行動症状の軽減
認知症には不安やうつ、幻覚、妄想などの精神行動症状が現れることがあります。精神安定薬はこれらの症状を和らげるために使われます。
抗精神病薬: 幻覚や妄想、興奮、攻撃性を抑える薬です。副作用として筋肉のこわばりや震えが報告されています。定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬があり、それぞれ特徴があります。
抗不安薬: 不安や焦燥感、睡眠障害を軽減する薬です。ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系があり、効果や副作用に違いがあります。
抗うつ薬: うつや無気力、自殺念慮を改善する薬です。セロトニンやノルアドレナリンの量を調整します。副作用として頭痛や吐き気があります。
これらの治療薬は、専門医の指導の下で使用されるべきです。ご自身や家族の状態に合った選択肢を専門家と相談してみてください。認知症の治療には個別のアプローチが必要ですが、適切な治療薬は症状の軽減や生活の質の向上に役立つことでしょう。
例えば、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、脳内の神経伝達物質の分解を抑える薬物治療が効果的ですが、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫では、手術によって原因を取り除くことができます。
2-3|非薬物療法
薬物治療だけでなく、非薬物治療と呼ばれる、生活習慣の改善や趣味などの活動によっても、認知症の進行を遅らせたり、生活の質を高めたりすることが可能です。
非薬物療法には、レクリエーションや回想法、補完代替療法などがあります。レクリエーションとは、音楽や運動などを通して楽しみながら心身の機能を活性化させる活動です。回想法は元気な頃の自分を思い出す療法です。補完代替療法とは、西洋医学以外の医学や民間療法などを用いる治療です。例えば、漢方薬や気功、鍼灸、アロマテラピーなどがあります。
レクリエーションや回想法、補完代替療法には、以下のような効果が期待されています。
- 心身機能の維持・向上:体を動かしたり、頭を使ったりすることで筋力や体力、記憶力や判断力などを高めることができます。
- 脳の活性化:音楽や香りなどの刺激を受けることで脳の神経細胞が活発に働くようになります。
- コミュニケーションの機会:他の人と一緒にレクリエーションを楽しんだり、補完代替医師と話したりすることで人間関係を築くことができます。
- 自尊心や有用感の回復:自分にもまだできることがあると感じたり、自分の作品や成果を見たりすることで自信を取り戻すことができます。
このように、レクリエーションや回想法、補完代替療法は、認知機能だけでなく心身全体の健康に寄与する可能性があります。ただし、これらの方法は個人差があるため、必ずしも効果があるとは限りません。また、副作用や相互作用などのリスクも考えられます。そのため、レクリエーションや回想法、補完代替療法を行う場合は、主治医や専門家と相談して、適切な方法や量を決めることが大切です。
認知症は、現在のところ完治することはできませんが、薬物療法と非薬物療法の組み合わせによって、症状の進行を遅らせたり、生活の質を高めたりすることは可能です。レクリエーションや補完代替療法は、認知症の方にとって有効な非薬物療法の一つと言えるでしょう。ぜひ、ご自身に合った方法を見つけて、楽しく健康的な生活を送ってください。
3|甲状腺機能低下症や脳血管疾患による認知症
認知症は、原因疾患によっては予防できる場合もあります。甲状腺機能低下症や脳血管疾患は、認知症の主な原因の一つです。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足で脳の機能が低下する病気です。脳血管疾患は、脳の血管が詰まったり切れたりして脳細胞が死ぬ病気です。これらの病気は、定期的な健康診断や生活習慣の改善で予防や治療が可能です。高血圧や高コレステロールなどの生活習慣病をコントロールすることで、認知症の発症や進行を遅らせることができます。認知症は完全に予防できるものではありませんが、事前に注意することが重要です。
4|認知症の人に起こる心理的な変化とケア
認知症は、脳の機能が低下する病気であり、その影響で記憶力や判断力、空間認識能力などが衰えます。そのため、認知症になると、日常生活で何気なく行っていたことが困難になったり、自分が住んでいる場所や身近な人々の顔も思い出せなくなったりします。これらのことは、本人にとっては不安や恐怖を感じたり、自分を守ろうとする自然な反応ですが、周囲の人には理解しにくく、イライラや怒りを引き起こすことがあります。その結果、本人は家族や友人との関係が悪化したり、社会的な役割や活動を失ったりすることで、孤立や自己否定感を抱くことになるかもしれません。
認知症の人へのケアでは、彼らの気持ちや考え方を理解しようとする気持ちが大事です。そして、認知症になっても人間としての尊厳を守ってあげることが必要です。そのためには、認知症によって起こるいろいろな困りごとやつらさに目を向けて、適切な支援や対応をしてあげることが必要です。例えば、外出したいという希望があれば、安全に配慮しながら一緒に散歩したり、買い物したりすることです。また、自分の過去の話をしたいという場合は、写真や音楽などを使って思い出話を聞いたり、共感したりすることです。
認知症の人の心理的な変化によくみられる症状としては、不安や恐怖、怒り、悲しみ、孤立感、自己否定感、妄想、幻覚などがあります。これらの症状は、認知症の進行とともに悪化したり、新しい症状が現れたりすることがあります。しかし、認知症の高齢者に対しては、外出を強制したり、理解できない説明をしたり、怒ったりするなど一方的な対応をすることは避けるべきです。それは、高齢者の心理にさらなるストレスや混乱を与えてしまうからです。認知症の高齢者に対しては、まずは彼らの心理的な変化に理解を示し、安心感や信頼感を与えられるようなケアをする必要があります。
4-1|感覚低下能力が低下している人への対応
感覚知覚能力が低下している認知症の人には、強すぎる光や匂いなどは、その人を混乱させることがあります。また介護者の大きな声は、騒音としか聞こえないことがあるので注意が必要です。このような状況を避けるために、以下のポイントを参考にしてください。
- 照明は明るすぎず暗すぎず、自然光に近い色温度のものを選びましょう。目に刺さるような蛍光灯や白熱灯は避けましょう。また、窓からの直射日光や反射光もカーテンやブラインドで調整しましょう。
- 部屋の香りは清潔で爽やかなものにしましょう。強い香水や芳香剤、タバコの煙などは不快感やイライラを引き起こす可能性があります。また、食事の匂いも気になる場合は、換気扇や空気清浄機を使って消臭しましょう。
- 声のトーンやボリュームは穏やかで優しく、相手の耳元で話すようにしましょう。大声で叫んだり怒鳴ったりすると、相手は攻撃されていると感じて恐怖や不安を感じるかもしれません。また、話す内容も簡単でわかりやすい言葉を使って、一度に一つのことだけ伝えましょう。
以上のポイントを守って、認知症の人にとって快適で安心できる環境を作ってあげましょう。それが、介護者と認知症の人とのコミュニケーションをスムーズにする第一歩です。
4-2|リアリティオリエンテーション(RO)
認知症ケアの方法としてリアリティオリエンテーション(RO)という方法があります。リアリティオリエンテーション(RO)とは、認知症の人の記憶力や時間や場所などの認識力を回復させるための訓練です。現実世界についての情報を繰り返し提示したり、現実世界に触れさせたりすることで、認知機能を向上させることが目的です。ROには、「24時間RO」と「クラスルームRO」という2つの方法があります。
【24時間RO】
時計やカレンダー、テレビ、ラジオなどを使って、日常生活の中で本人に時間や場所、ニュースなどの情報を提供します。
【クラスルームRO】
クラスルームROとは、少人数で集まってゲーム感覚で勉強会形式によって時間間隔を高めたり、場所について話したりする方法です。例えば、以下のような流れで行うことができます。
- スタッフが進行役となり、参加者の名前や日時や場所などを確認します。
- スタッフがカレンダーや時計や地図などを使って、季節や気候や行事などを話題にします。
- スタッフが参加者に質問を投げかけたり、思い出話を聞いたりして、コミュニケーションを促します。
- スタッフが参加者に感想や意見を聞いたり、楽しかったことや嬉しかったことを共有したりして、気持ちを伝えます。
クラスルームROの目的は、認知症の方が自分の存在や周囲の状況を認識できるようにすることです。また、他者との関わりや関心を持つことで、認知症の進行を遅らせたり、生活の質を向上させたりすることも期待できます。
クラスルームROは、認知症の方だけでなく、介護従事者にとっても有益な方法です。介護従者は、認知症の方の見当識障害に対して無理に正しい答えを求めたりせず、優しく丁寧に情報を提供したりすることが大切です。また、認知症の方の気持ちや思い出に耳を傾けたり共感したりすることで、信頼関係を築いたり心の支えになったりすることができます。
クラスルームROは、認知症ケアの一つの手段です。介護従者は、認知症の方の個性やニーズに合わせて柔軟に対応したり工夫したりすることが必要です。クラスルームROを試してみて、認知症の方と楽しくコミュニケーションする方法を見つけてみませんか。
4-3|認知症の人の環境整備
認知症の人は、物事に集中したり注意したりする能力が低下しているため、転倒や火傷などの事故に遭いやすくなります。そのため、以下のような対策を行うことが大切です。
- 手すりの設置:階段や廊下、トイレや浴室などに手すりを設置しましょう。手すりは、認知症の人が歩行や立ち上がりに支えとなり、転倒を防ぐ効果があります。手すりは、握りやすく滑りにくいものを選び、高さや角度を調整できるものが望ましいです。
- 滑りにくいマットの敷設:床やカーペットが滑りやすい場合は、滑りにくいマットを敷きましょう。特に浴室やキッチンなど水回りは注意が必要です。滑りにくいマットは、転倒だけでなく、足元の冷えを防ぐ効果もあります。滑りにくいマットは、色や柄が目立つものよりも地味なものを選ぶと良いでしょう。色や柄が目立つと、認知症の人が段差や穴だと誤認してしまう可能性があります。
- 不要な物の片付け:家具や電化製品、衣類や雑貨など、不要な物は片付けておきましょう。不要な物は、認知症の人が躓いたり引っかかったりする原因になります。また、不要な物は視覚的に混乱を招き、認知症の人の判断力や記憶力を低下させます。不要な物は、できるだけ目に入らない場所に収納するか、処分することが望ましいです。
以上が、集中力や注意力が低下している認知症の人に対する住環境の整備のポイントです。住環境を整えることで、認知症の人の安全性と快適性を高めることができます。介護従者の方々も、ぜひ参考にしてみてください。
住宅改修という介護保険制度もあり別記事にしてますので是非ご覧ください。
6|高齢者心理とライフイベントの関係
ライフイベントとは、人生を過ごす中で起こる大きな出来事を指す。結婚や住宅購入、子どもの進学や結婚などの個人的な出来事はもちろん、戦争や災害、オリンピックや高度経済成長などの社会的な出来事もライフイベントに含まれます。これらの出来事は、その人にとって忘れられない思い出や影響を残すことが多くなります。高齢者の心理を理解するには、ライフイベントがその人の人生観や世代意識、価値観や信念、判断基準などを形成する重要なバックボーンがあるかもしれないと考えることが大切です。
終わりに
このブログ記事では、認知症の治療とケアについてお伝えしました。認知症は、患者さんだけでなく、家族や介護者にも大きな影響を与える病気です。しかし、適切な治療とケアを受けることで、生活の質を向上させることができます。認知症に関するさらに詳しい情報や相談をご希望の方は、専門の医師や相談機関にお問い合わせください。最後までお読みいただきありがとうございました。