認知症サポートの道

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【脳血管認知症】に迫る:症状、原因、治療法、予防策を解説

脳血管認知症とは、我々の身近な問題として浮上してきています。誰もが心を揺さぶられる、その深刻な現実。日常の些細な出来事から感じる感情の変化、その背後に潜む可能性とは一体何なのでしょうか?本記事では、脳血管認知症の症状から始まり、その原因、特徴、そして治療法や予防策までを探っていきます。認知症の割合から男女比まで、脳血管認知症の背後に潜む現実と向き合い、対策を知ることの重要性。また、その知識を持つことで日常の選択にどのような影響を与えるのかについても考えてみましょう。脳血管認知症に対する理解を深め、その影響を軽減する方法についてご紹介します。

 

1|脳血管認知症とは

脳血管認知症とは、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の細胞が死んでしまうことで起こる認知症の一種です。脳の細胞が死ぬと、記憶や判断力、言語能力などが低下したり、感情がコントロールできなくなったりします。脳血管認知症は、生活習慣病や心臓病などが原因で起こることが多いので、予防や治療には生活習慣の改善や薬物療法が重要です。また、リハビリテーションや介護サービスの利用も、機能回復や生活の質の向上に役立ちます。

2|脳血管認知症の症状

 2-1|主な症状

脳血管認知症はさまざまな症状が現れますが、一般的には以下のようなものがあります。

  • 記憶障害: 物事を忘れやすくなったり、同じことを繰り返し聞いたりする。
  • 見当識障害: 時間や場所、自分の身分などを正しく認識できなくなる。
  • 注意障害: 物事に集中できなくなったり、話を聞き逃したりする。
  • 言語障害: 言葉を話したり理解したりするのが困難になる。
  • 運動麻痺: 手足や顔の一部が動かせなくなったり、力が弱くなる。
  • 歩行障害: 歩くスピードが遅くなったり、バランスを崩したりする。
  • 感覚障害: 触覚や痛みなどの感覚が鈍くなったり、失われたりする。
  • 構音障害: 口や舌の動きが悪くなって、発音が不明瞭になる。
  • 嚥下障害: 食べ物や飲み物を飲み込むのが困難になる。
  • 排尿障害: 尿意を感じられなかったり、尿失禁したりする。
  • 夜間せん妄: 夜間に錯乱したり、不安や恐怖を感じたりする。
  • 抑うつ: 気分が落ち込んだり、自分に自信が持てなくなったりする。
  • 感情失禁: 感情をコントロールできずに、すぐに泣いたり怒ったりする。
  • 動作緩慢: 行動や反応が遅くなる。

これらの症状は、脳血管障害の発作が起こるたびに急激に出現したり、徐々に悪化したりします。また、脳の正常な部位と障害された部位が混在しているため、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。これは、記憶障害があっても判断力や専門知識は保たれている場合や、出来る時と出来ない時の波がある場合を指します。

脳血管認知症は、生活習慣の改善や薬物治療によって再発予防や症状の進行抑制が可能です。また、リハビリテーションや生活リハビリによって機能回復や自立度向上を目指すことも重要です。ご自身やご家族に心当たりのある方は、早めに医師に相談してください。

特に注意すべき症状をピックアップします。

 

 【感情失禁】

感情失禁とは、感情の調節がうまくいかず、泣いたり笑ったり怒ったりといった感情を過度に出してしまう状態です。感情失禁は、脳の細胞が壊れて本来の機能を失うことが原因で起きるもので、血管性認知症の高齢者に多く見られます。血管性認知症は、記憶障害や見当識障害などの一般的な認知症の症状に加えて、感情失禁やまだら認知症(できることとできないことに大きな差がある状態)などの特徴的な症状があります。血管性認知症は、脳卒中脳出血などの脳血管障害が再発することにより、脳細胞の障害が広がり、感情失禁の症状も悪化してしまいます。

そのため、再発を防ぐためには、高血圧や高コレステロールなどの危険因子を管理し、健康的な生活を送ることが大切です。感情失禁のある人と接するときには、感情失禁が脳の疾患によるものであることを理解し、冷静に対応することがコツです。感情失禁が起きるタイミングやきっかけを把握し、その人らしさとして受け止めてあげましょう。

 2-2|進行の仕方

脳血管認知症の進行は、脳血管障害が起きるたびに急激に悪化し、その後は一定期間安定した状態が続くという特徴があります。

脳血管認知症の初期段階では、記憶障害や見当識障害などの症状が現れます。 例えば、財布を置いた場所や食事をしたことを忘れたり、今いる場所や時間、家族や友人の顔や名前を思い出せなかったりします。

中期以降では、実行機能障害や失行・失認・失語などの症状が加わります。例えば、計画的な行動ができなかったり、物の使い方や言葉の意味がわからなくなったりします。

最終段階では、自分の名前や人生を思い出せなくなったり、食事や排泄などの日常生活動作ができなくなったりします。

脳血管認知症は進行すると回復することはほとんどありませんが、再発予防やリハビリテーションによって症状の安定化や改善を目指すことができます。

脳血管認知症の予防には、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病をコントロールし、適度な運動やバランスの良い食事を心がけることが重要です。

3|脳血管認知症の原因

脳血管認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の一部に酸素や栄養が届かなくなることで起こる認知症です。脳の血管が詰まる原因は、動脈硬化です。動脈硬化は、高血圧、糖尿病、心臓病、高コレステロール、喫煙などの生活習慣によって引き起こされます。 脳の血管が破れる原因は、脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの血管の先天的な異常や、高血圧や外傷などの後天的な要因です。

脳血管認知症の原因には、さまざまな種類がありますが、主なものは以下のとおりです。

  • 多発性脳梗塞: 小さな脳梗塞を何度も繰り返すことで、脳の細胞が壊れていきます。
  • 戦略的部位梗塞: 認知機能に重要な役割を果たす部位に大きな脳梗塞が起こることで、急激に認知症が発症します。
  • 脳出血: 脳内やくも膜下に出血が起こることで、出血した部位や周囲の細胞が壊れます。

4|脳血管認知症の特徴

 4-1|認知症の割合と男女比

認知症全体中で脳血管認知症の割合は19.5%でアルツハイマー認知症認知症に次いで多い認知症です。男性の方が女性よりも発症率が高く、男性の有病率は女性の2倍近くと報告されています。

参照サイト:朝日ネットほけん

認知症のおもな4つの種類・特徴・割合について解説

 

5|脳血管認知症の治療



 5-1|治療

脳血管認知症の治療方法は、以下のようになります。

  • 脳血管障害の再発予防:脳血管障害は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、喫煙や肥満などの危険因子が関係しています。これらの危険因子を改善するために、生活習慣の見直しや適切な投薬治療が必要です。例えば、高血圧や脂質異常症の場合は、降圧剤やコレステロール低下剤などを服用します。また、心房細動などの不整脈がある場合は、血液を固まりにくくする抗凝固剤を服用します。
  • 認知機能の回復・維持:脳血管障害によって失われた認知機能を回復・維持するために、リハビリテーションや認知訓練が行われます。リハビリテーションでは、運動麻痺や歩行障害などの身体的な機能を改善するために、理学療法作業療法などが行われます。認知訓練では、記憶や注意などの認知機能を向上させるために、パズルやゲームなどの活動が行われます。
  • 精神的なサポート:脳血管認知症では、抑うつや不安などの精神的な問題も起こりやすいです。これらの問題を解決するために、心理的なカウンセリングや投薬治療が行われます。また、家族や介護者も精神的に負担を感じることが多いので、支援団体や専門家と連携してサポートを受けることが大切です。 


 5-2|脳血管認知症の治療薬

脳血管認知症の治療薬について詳しく教えていただきありがとうございます。脳血管認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳の一部に酸素や栄養が届かなくなることで起こる認知症です。脳血管障害の再発を防ぐことが、認知症の進行を遅らせるために重要です。

脳血管認知症の治療薬には、主に以下の2つの種類があります。

  • 脳卒中の危険因子を改善する薬
  • 認知機能を改善する薬

脳卒中の危険因子を改善する薬は、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの生活習慣病に対する薬です。これらの病気は、血管を硬くしたり、血液が固まりやすくしたりして、血管障害を引き起こす可能性が高くなります。そのため、これらの病気をコントロールすることで、脳血管障害の再発を予防することができます。

例えば、高血圧に対しては、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗剤などの降圧剤が処方されます。糖尿病に対しては、インスリンやメトホルミンなどの抗糖尿病薬が処方されます。

コレステロールに対しては、スタチンやフィブラートなどの脂質降下薬が処方されます。

これらの薬は、それぞれの病気に応じて医師から指示された用量と服用方法で服用する必要があります。また、副作用もあるので、服用中に異常な症状が出た場合は医師に相談してください。

認知機能を改善する薬は、アルツハイマー認知症に効果的な薬ですが、一部の脳血管認知症にも有効な場合があります。これらの薬は、神経伝達物質と呼ばれる脳内の情報伝達物質の働きを改善したり、神経細胞の死滅を防いだりすることで、記憶や判断力などの認知機能を向上させる効果があります。

例えば、ドネペジルやガランタミンなどは、アセチルコリンという神経伝達物質を分解する酵素を抑制して、アセチルコリンの量を増やすことで認知機能を改善します。メマンチンは、グルタミン酸という神経伝達物質の過剰な刺激を抑えて、神経細胞の死滅を防ぎます。

これらの薬も、医師から指示された用量と服用方法で服用する必要があります。また、副作用もあるので、服用中に異常な症状が出た場合は医師に相談してください。

脳血管認知症の治療薬は、認知症の進行を遅らせることができますが、根本的な治癒はできません。そのため、薬物療法だけでなく、リハビリテーションや生活習慣の改善なども併せて行うことが大切です。また、薬物療法は個人差がありますので、効果や副作用については定期的に医師と相談してください。


 5-3|リハビリテーション

脳血管認知症は、脳の血管が詰まったり出血したりすることで、脳の細胞が壊れてしまい、認知機能が低下する病気です1。脳血管認知症リハビリテーションは、脳卒中の再発予防や機能回復訓練、生活リハビリが主な目的です。

脳卒中の再発予防には、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病をコントロールすることが重要です。これらの病気は、脳血管障害の危険因子となるので、定期的に受診し、適切な治療を受けてください。また、喫煙や飲酒を控える、塩分や動物性脂肪を摂りすぎない、適度な運動をするなどの生活習慣の改善も効果的です。

機能回復訓練には、麻痺や歩行障害などに対する理学療法作業療法があります。これらのリハビリテーションは、専門家の指導のもとで行うことが望ましいです。理学療法では、筋力や関節可動域を向上させるためにストレッチや筋トレを行います。作業療法では、日常生活で必要な動作や手先の操作を訓練します。

生活リハビリには、認知機能を刺激するためにゲームやパズルなどを行うことがあります。

これらの活動は、本人の興味や特性に合わせて選ぶことが大切です。例えば、音楽が好きな人には歌うことや楽器を演奏することが効果的です。また、家族や友人とのコミュニケーションも認知機能の向上に役立ちます。

脳血管認知症リハビリテーションは、本人の「楽しみ」と「特性」そしてリハビリの「効果」が上手く合わさることが理想です。いつも上手く行くとは限りませんが、上手くいくと信じて、リハビリを続けることが大事です。


 5-4|予防法