認知症サポートの道

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認知症の中核症状について

 

こんにちは、皆さん。今日は認知症の中核症状についてお話ししたいと思います。認知症とは、記憶や判断力、言語能力などの認知機能が低下する病気です。認知症にはさまざまな原因やタイプがありますが、共通して見られるのが中核症状と呼ばれるものです。認知症に関心のある方や、ご自身やご家族が認知症を患っている方はぜひお読みください。

 

1|中核症状とは

中核症状は、脳の病的な変化や障害によって、脳の細胞が破壊されることが原因で現れる症状です。 脳の老化のメカニズムとして、中年を過ぎると、脳・神経細胞の微細構造に変化がおこり、異常なたんぱく質が沈着し、やがて細胞が少しずつ脱落して、全体が萎縮していきます。脳の細胞が担っていた役割が失われることで中核症状は起こります。

 

 

2|中核症状の種類

中核症状には記憶障害や見当識障害などの症状が代表的です。 具体的には、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害(遂行機能障害とも言われます)、失語・失認・失行などがあります。
これらの症状を総称して認知機能障害と呼びます。認知機能は誰もがゆうする機能なので、いずれかの認知機能障害を認知症の利用者は必ず持っているといえます。

以下はそれぞれの障害の簡単な説明をさせていだきます。

 

 

 2-1|記憶障害

新しいことを覚えられなくなり、さっき聞いたこと、したことを記憶することが難しくなります。次第に、覚えていたことも忘れるようになっていきますが、自分が子供の頃の記憶など、昔の出来事は比較的覚えています。記憶障害は、その程度が進行していくものですが、初期から軽度の時期は、健康な人の物忘れとなかなか区別しにくい。また、本人も周囲から指摘されれば思い出すことができ、自覚がもてる場合があります。

  【エピソード記憶

エピソード記憶とは、自分が体験した出来事に関する記憶です。例えば、「昨日の夕飯は何を食べたか」「先週の日曜日にどこに行ったか」「子供の頃にどんな遊びをしたか」などがエピソード記憶にあたります。エピソード記憶は、「いつ」「どこで」「何をした」のように時間や場所や内容が結びついています。エピソード記憶の障害とは、このような出来事の記憶が失われたり、曖昧になったりすることを言います。

エピソード記憶の障害が起こる原因

エピソード記憶の障害が起こる原因は、主に以下の4つに分けられます。

アルツハイマー認知症は、脳内に異常なタンパク質が蓄積して神経細胞が壊れていく病気です。この病気では、特に側頭葉内側という部分が変化していきます。この部分はエピソード記憶意味記憶(言葉の意味などの普遍的な知識)に関係しています。そのため、アルツハイマー認知症では、最初にエピソード記憶意味記憶が障害されやすくなります。

脳外傷とは、交通事故や高所からの落下などで頭を強く打つことで起こる脳へのダメージです。脳外傷では、脳が傷つく部位によって記憶障害の種類が異なります。エピソード記憶に関係する部位は、海馬周辺や側頭葉内側部、間脳や前脳基底部などです。

これらの部位が傷つくと、新しい出来事を覚えられなかったり、過去の出来事を思い出せなかったりするようになります。

脳血管障害とは、脳卒中を始めとする血管が詰まったり破れたりして脳の一部が機能しなくなる病気です。脳血管障害も脳外傷と同様に、障害される部位によって記憶障害の種類が異なります。また、脳血管障害も回復の可能性があります。

その他には、感染症や自己免疫疾患などでも記憶障害は起こり得ます。

エピソード記憶の障害への対応

エピソード記憶の障害は、本人にとっても周囲にとっても大きな困難をもたらします。本人は自分の体験したことが思い出せないために不安や孤独を感じることがあります。周囲は本人との会話や共有ができなくなるためにイライラや悲しみを感じることがあります。エピソード記憶の障害への対応には、以下のようなポイントがあります。

  • 本人に安心してもらう
  • 環境を整える
  • 繰り返して覚えてもらう

本人に安心してもらうためには、まずは責めるのではなく理解を示すことが大切です。エピソード記憶の障害では、本人に自覚がないことが多いです。本人は体験そのものが抜け落ちてしまっているのです。周囲から事実を伝えても、本人は嘘をつかれていると感じます。話がかみ合わないことで、周囲はイライラするかもしれませんが、本人を責めてもどうしようもありません。否定ばかりされると、本人はストレスを感じます。本人が安心できるように、家族や介護者の工夫が必要です。

環境を整えるためには、日常生活におけるルーチンや物の置き場所をできるだけ変えないことが重要です。エピソード記憶の障害では、出来事がすっぽり抜け落ちます。そのため、環境が急に変わると混乱してしまいます。全く知らない環境に連れて行かれたと感じるのです。本人が混乱しないように、日用品の置き場所は固定しましょう。使用後はすぐに定位置に戻してください。また、規則正しい生活を送ることで混乱を避けることにもつながります。

繰り返して覚えてもらうためには、新しいことを覚えるときは一つずつ丁寧に教えることが必要です。一つのことを反復して練習することで記憶を保持しやすくなります。五感を使いながら同じ環境下でくり返すことで効果を高めることができます。

エピソード記憶の障害への対策

エピソード記憶の障害は、治療可能な要因が背景にある場合を除いて、完治することは、残念ながら難しいと言われています。しかし、エピソード記憶の障害を予防したり、進行を遅らせたりすることは可能です。エピソード記憶の障害への対策には、以下のような方法があります。

  • 食生活や運動などの生活習慣を改善する
  • 脳トレや趣味などで脳を刺激する
  • 本人の思い出や趣味に関する話題を提供する
  • 写真や日記などで出来事を記録する

食生活や運動などの生活習慣を改善することで、脳の血流や酸素供給を良くすることができます。これは、脳血管障害やアルツハイマー認知症のリスクを低減することにもつながります 。バランスの良い食事や適度な運動は、脳の健康に欠かせません。

脳トレや趣味などで脳を刺激することで、脳の機能を維持したり向上させたりすることができます。新しいことに挑戦したり、難易度の高い問題に取り組んだりすることで、脳に刺激を与えることができます 。また、趣味や楽しみは、気分を良くしたりストレスを解消したりする効果もあります。

本人の思い出や趣味に関する話題を提供することで、本人のエピソード記憶を呼び起こすことができます。本人が好きな音楽や映画、旅行先やペットなどについて話しかけることで、本人の興味や感情を引き出すことができます 。また、本人の話を聞いて共感したり賞賛したりすることで、本人の自尊感情や自信を高めることもできます。

写真や日記などで出来事を記録することで、本人のエピソード記憶を補助することができます。写真は、本人が体験した出来事の証拠として役立ちます。写真には、日付や場所や内容などを書き込むとより効果的です 。日記は、本人が一日の出来事を振り返ることで記憶を定着させる手段として役立ちます。日記には、感想や感情なども書くとより効果的です 。

  意味記憶障害】

意味記憶の障害とは、ものや言葉の意味を忘れてしまう障害のことです。例えば、「あれ」とか「それ」などの表現が多くなり、意思疎通が難しくなってきます。これは、認知症の症状が軽度から中等度へ進行するに伴って、脳の側頭葉前方部が萎縮することで起こります。

意味記憶の障害は、認知症の中でも特に意味性認知症というタイプに多く見られます。意味性認知症は、65歳未満で発症することも多く、言語的要素だけではなく、相貌や物体の認識においても問題が出現します。

意味記憶の障害を持つ方に対する介護や対応では、以下の点に注意しましょう。

  • 本人の言動を訂正したり否定したりしないでください。本人にとっては自分の認識している世界こそが真実なので、ウソをつかれたと感じてしまう可能性があります。
  • 本人に安心感を与えてください。記憶障害は本人にとって不安や混乱を引き起こすものです。笑顔でいったん受け止めて、優しく声をかけてください。
  • 言葉だけでなく絵や写真などを使ってコミュニケーションを図ってください。言葉の意味が分からなくても、視覚的な情報は理解しやすい場合があります。
  • 本人が興味や関心を持つ話題や活動を見つけてください。記憶障害は全ての分野で同じように進行するわけではありません。本人が得意だったり好きだったりすることに関しては記憶力が高い場合もあります。

 2-2|見当識障害

見当識とは今がいつ(時間、年月日、季節)で、ここがどこ(場所、何をしているのか)という、自分が今、置かれている状況を把握することです。自分と他人との関係性の把握も見当識に含まれます。

  【見当識の「いつ」が障害される】

「約束の時間を守れない」、「予定通りに行動することができない」などがみられます。「今日が何月何日なのか」、「自分は何歳なのか」ということもわからなくなり、季節感も薄れて、「季節に合わない服装をする」ことがみられます。

 認知症の方が季節感を失ってしまうと、気温に応じた服装や体温調節ができなくなります。これは徘徊や脱水症状などの危険につながる可能性があります。気温の低い冬でも薄着のままで外出してまったり、夏でも暖房をつけてしまったりします。そこで、以下のような対策を取ることが大切です。 

  • カレンダーや時計を効果的に使って、今日の日付や時間、季節を声に出して確認するように促します。
  • 1日のスケジュールを作って規則正しい生活を送るようにします。
  • 季節に合わせた服装や食事を準備して、季節を感じられるように工夫します。
  • 外出する際は必ず付き添って目を離さず見守ります3。名前や住所、電話番号などを衣服やバッグにつけておきます。
  • 夏場は冷房をつけて温度調整をしたり、水分補給を促したりします。
  【「どこ」が障害される】

「道に迷う」ことや、「自分の家のトイレの場所がわからなくなる」、「ものすごく遠いところに歩いてでかけようとする」ことなどがみられます。

  【自分と他人との関係性が障害される】

自分と家族との関係や、過去に亡くなったという事実もわからなくなり、「自分の息子を『お父さん』と呼ぶ」ことや、「亡くなった親に会いに行くと言う」ことなどがみられます。

 

 2-3|理解・判断力の障害

理解することに時間がかかるようになり、情報を処理する能力も低下して、一度に2つ以上のことを言われる、早口で言われると理解することが難しくなります。いつもとは違う出来事が起こると対応できず、混乱することがみられます。目に見えないものが理解しにくく、自動販売機や駅の自動改札機、銀行のATMなどを前にすると、どうすれば良いのかがわからなくなります。あいまいな表現も理解・判断しにくく、例えば「暖かい恰好をしてね」と言われても理解できず、「セーターとコートを着てね」と具体的な指示が必要になります。善悪の判断もつきにくくなります。

 

 2-4|実行機能障害

実行機能障害は、具体的な目標を持ち、それを計画し、実行し、効果的に遂行する能力が制限される障害です。例えば、料理を行う際には、メニューの決定、材料の調達、調理、後片付けなど、一連の作業がうまくいかなくなることがあります。認知症が初期段階では、単純なタスクはまだこなせることがありますが、病状が進行するにつれて、できることが減少します。

実行機能障害の原因は、大脳皮質にある前頭連合野と呼ばれる部位に障害が生じることにあります。前頭連合野は計画立案や判断などの役割を果たしており、アルツハイマー認知症ではこの部位が次第に縮小してしまいます。血管性認知症や前頭側頭型認知症でも、この部位に悪影響が及ぶことがあります。

実行機能障害は完全に治癒する方法はありませんが、根気強くリハビリテーションを継続することで、症状の改善や進行の遅延が期待できます。リハビリテーションの方法としては、以下のアプローチがあります:

1. 作業を段階的に分解し、習慣化させ、反復する。
2. 作業に必要な道具や場所を整理し、わかりやすく配置する。
3. 作業の開始と終了時に声をかけ、スタートの合図を与える。
4. 作業中に指示を一つずつ提供し、サポートする。

これらの方法は、患者自身ができることとできないことを理解しながら実施する必要があります。また、患者のストレスを最小限に抑えるように心がけることも重要です。

 

 2-5|失語・失認・失行

失語・言語障害は言葉の理解・表出が難しくなります。音として聞こえていても、ことば、話として理解できない、自分が思っていることを言葉として表現する、相手に伝わるように話すことが難しくなります。失語にはさまざまな種類のものがあり、例えば、相手の言葉をオウム返しする「反響言語の出現」や自分のいいたい単語や人の名前が出てこなくなる「語想起の低下」などがあります。

失行は、「お茶を入れる」、「服を着る」、「スプーンを使ってご飯を食べる」など日常的に行っていた動作や物の操作が運動機能の障害がないにもかかわらず行えなくなります。

失認は、自分の身体の状態や自分と物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識することが難しくなることです。半側空間失認では、自分の身体の半分(左側または右側)の空間が認識できず、「ご飯を半側だけ残す」、「片方の腕の袖を通し忘れる」などがみられます。

ではそれぞれの詳しい症状を見てみましょう。

 

  【言語障害

認知症とは、脳の機能が低下することで、記憶や判断力などが衰える病気です。認知症の方は、日常会話ができるように見えても、言葉に関する問題を抱えていることが多いです。例えば、以下のようなことが起こります。

  • 語彙数が限られる:同じ言葉を繰り返したり、言いたいことを表現できなかったりします。
  • 固有名詞が出てこなくなる:人や物の名前を忘れたり、間違えたりします。
  • 代名詞が増える:「あの人」「これ」「それ」などの曖昧な言葉を多用します。

これらの現象は、比較的早期から見られることが多く、認知症の診断や進行度の判断に役立ちます。また、介護従者の方は、これらの現象に気づいて、認知症の方とのコミュニケーションに工夫をする必要があります。

では、具体的にどんな工夫ができるでしょうか。以下にいくつかのポイントを挙げてみます。

  • 語彙数が限られる場合:難しい言葉や専門用語は避けて、簡単でわかりやすい言葉を使います。また、質問や話題は一つずつにして、相手のペースに合わせます。
  • 固有名詞が出てこなくなる場合:名前や関係性を明確に伝えたり、写真やノートなどを使って思い出させたりします。また、間違えた名前を指摘せずに、正しい名前を自然に繰り返したりします。
  • 代名詞が増える場合:「あの人」「これ」「それ」などの言葉だけではなく、具体的な内容や感情を聞き出したり、自分から提供したりします。また、相手の視点に立って、話している内容や場面を想像したりします。

認知症の方とコミュニケーションする際には、言葉だけではなく、表情や身振りなども大切です。相手の気持ちや意図を理解しようとする姿勢が何よりも重要です。

 

  【失語症状】

失語症とは、脳の障害によって言葉の理解や発話が困難になる病気です。失語症にはさまざまなタイプがありますが、その中でも重度のもの「言葉のサラダ」と呼ばれる現象を引き起こすことがあります。

「言葉のサラダ」とは、思考障害が原因で、意味のない支離滅裂な言葉の羅列を発することです。 例えば、「今日はお茶を飲んで、赤い靴下を履いて、パンダが飛んで、電話が鳴って…」というように、関係のない単語や発音が次々と出てきてしまいます。このような場合、本人は自分が何を言っているかわからなくなりますし、周りの人も理解できません。

「言葉のサラダ」を起こす人に対して、どのように介護すればよいでしょうか?以下にいくつかのポイントを挙げます。

  • 落ち着いて話しかける。焦らずにゆっくりと話し、相手の目を見て話すことで安心感を与えます。
  • 質問は簡単なものにする。はい・いいえで答えられるような質問や、選択肢を提示する質問が適切です。複雑な質問や長い文章は避けましょう。
  • 言葉以外のコミュニケーションを活用する。ジェスチャーや表情、絵や写真などを使って意思や感情を伝えることができます。また、相手のジェスチャーや表情にも注意して反応しましょう。
  • 言葉のサラダに対して否定的な態度をとらない。相手の言葉に意味がなくても、聞いていることや理解しようとしていることを示します。否定的な態度や無視は相手の自信や自尊心を傷つけるだけでなく、コミュニケーションへの意欲も減らしてしまいます。

失語症は治る可能性がありますが、そのためには適切なリハビリテーションや介護が必要です。 言葉のサラダを起こす人に対しても、上記のポイントを参考にして、忍耐強く寄り添ってあげましょう。

 

  【身体失認】

身体失認とは、自分のからだの一部が自分のものだと認識できなくなることです。この状態では、排泄や病気・けがによる痛みなど、自分のからだに関する感覚を正しく捉えることができません。身体失認になると、次のようなことが起こります。

他人の手足を自分のものだと勘違いする 自分の手足が消えたり、増えたりしたように感じる 自分の手足が動かないと思い込む 自分の手足に触っても何も感じない 自分の手足が痛くても気づかない

身体失認は、脳にダメージを受けたことが原因で起こることがほとんどです。特に右側の脳が傷ついた場合、左側のからだに失認が起こりやすいです。これは、右側の脳が左側のからだや空間について処理する役割を持っているからです。

身体失認の原因

身体失認は、脳にダメージを受けたことが原因で起こることがほとんどですが、そのダメージを与える要因は様々です。代表的なものを以下に挙げます。

脳卒中:脳の血管が詰まったり切れたりして、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなることです。脳卒中は日本で最も多い神経系の病気で、10人に1人は生涯で発症する可能性があると言われています。 外傷:交通事故や転落事故などで頭を強く打つことです。頭部外傷は若者や高齢者に多く見られます。 腫瘍:脳に良性や悪性のしこりができることです。腫瘍は周りの正常な脳細胞を押したり壊したりして、その働きを妨げることがあります。 膿瘍:細菌や真菌などに感染して、脳に膿がたまることです。膿瘍は頭痛や発熱などの全身的な症状や、神経系の異常を引き起こすことがあります。 変性:アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患によって、脳細胞が少しずつ死んでいくことです。神経変性疾患は進行性であり、記憶力や運動能力などに影響を及ぼします。 身体失認の対処法

身体失認は、脳のダメージによって起こる障害なので、完治することは難しいです。しかし、以下のような対処法を行うことで、症状を和らげたり、日常生活の質を高めたりすることができます。

原因の治療:身体失認の原因となる病気や障害に対して、適切な治療を受けることが大切です。例えば、脳卒中や膿瘍の場合は、血管や感染の治療を行います。腫瘍の場合は、手術や放射線治療などを行います。変性の場合は、薬物療法や非薬物療法などを行います。

リハビリテーション:身体失認に対する特定のリハビリテーション法はありませんが、一般的には言語療法や作業療法などが行われます。これらのリハビリテーションでは、失認の部位に注意や意識を向けたり、失認を克服するための方法や技術を学んだりすることが目的です。

環境整備:身体失認のある人は、日常生活で様々な問題や危険に遭遇する可能性があります。例えば、食事で皿の半分を見落としたり、着替えで片方の袖を忘れたりすることがあります。そこで、以下のような工夫をすることが有効です。

失認のある側に物を置かない 失認のある側に声をかけたり触れたりして注意を引く 失認のある側に目立つ色や柄のものを置く 鏡や写真で自分のからだを確認する

 

  【触覚認知障害

触覚認知障害とは、認知症の中核症状の一つで、自分がよく使っていたものや身近なものを手で触っても、それが何なのかわからなくなることです。例えば、スプーンやフォーク、鍵や財布などを手に取っても、それらの名前や使い方が思い出せないという状態です。これは、脳の感覚情報を処理する部分が障害されることで起こります。

触覚認知障害があると、日常生活に大きな支障が出ます。食事や着替え、身だしなみの整え方などが分からなくなり、自分でできることが少なくなってしまいます。また、自分の持ち物や大切なものを見失ったり、間違ったものを持ってしまったりすることもあります。

触覚認知障害は、アルツハイマー認知症だけでなく、他のタイプの認知症でも見られることがあります。特にレビー小体型認知症では、触覚認知障害が初期から現れることが多いと言われています。

触覚認知障害を持つ人に対しては、以下のような配慮が必要です。

  • 物を渡すときは、その名前や使い方を声に出して教えてあげる
  • 物を探すときは、一緒に手伝ってあげる
  • 物を置く場所は決めておき、見やすく整理しておく
  • 物にラベルやシールを貼って、名前や内容を分かりやすくする
  • 服や靴は色や形で区別できるようにする

触覚認知障害は、認知症の進行に伴って悪化していきます。しかし、早期に発見し、適切なケアを行うことで、その人らしく生活することをサポートできます。

 

  【感覚知覚障害】

認知症の方は、五感を通して周りのことを感じる力が弱くなることがあります。これを感覚知覚の低下と言います。感覚知覚が低下すると、自分や周囲の状況を正しく認識できなくなり、さまざまな問題に直面する可能性があります。例えば、味覚が鈍くなると、食べ物の美味しさや賞味期限がわからなくなります。その結果、食中毒や栄養不足になる恐れがあります。

このような問題を防ぐためには、介護者の方々が工夫してあげることが必要です。食べ物の賞味期限や保存状態をチェックし、見た目や香りで食欲を引き出すようにしましょう。味付けは濃すぎず薄すぎずでバランスよくしましょう。必要に応じて栄養補助食品やサプリメントを使いましょう。

感覚知覚の低下は、認知症の方にとって大きなストレスになります。そのストレスを和らげるためには、介護者の方々が感覚知覚に配慮した環境づくりやコミュニケーションを心がけることが大切です。

 

3|中核症状の進行を遅らせる方法

認知症の中核症状に対しては、抗認知症薬による治療が行われます。現在日本で使用されている認知症の薬は4種あり、現在、日本で認知症治療薬として認められている成分は4種類あります。それらは、1. アリセプト塩酸ドネペジル)、2. レミニール(ガランタミン)、3. イクセロン/リバスタッチパッチ、4. メマリー(メマンチン)です。

これらの薬はすべて根治による治療目的の薬ではありません。病気そのものを治す薬ではなく、病気の進行を抑える薬という位置づけです。

大きくふたつに分類されます。

認知症の治療薬は、大きく分けて2種類に分類されます。1つは神経伝達物質アセチルコリンの減少を抑える作用を持つ薬で、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3種類です。もう1つは、神経細胞の死滅を防ぐ作用を持つ、メマンチンです。

これら4種類の薬は、認知症の進行度によって使い分けたり、アセチルコリンの減少を抑えるドネペジルなどの3種類のうちの1つとメマンチンを併用したりする場合があります。

また、リアリティ・オリエンテーションという方法があります。これは、現在どのような状況なのかを確認しながら、不安を解消するための方法です。リアリティ・オリエンテーションは、認知症の進行を遅らせる効果があると言われています。

 

 

4|中核症状が現れた場合、どのように対応すべきか

認知症の中核症状は、脳の機能が低下することで直接的に現れる症状のことを指します。これらの症状に対応する際には、まず本人が現状できることとできないこと、症状を見極めることが重要です。そして、できることを活かした役割や、本人にとって楽しめることを考え提供してあげることが大切です。役割があること、できた・楽しめた経験が本人の自尊心保持につながると理解することも重要です。

また、認知症の中核症状により不安が引き起こされることは多いので、周囲の人々は不安を軽減するような声がけをすることが大切です。

 

 

 

おわりに

認知症の中核症状について、少しでも理解を深めていただけたら嬉しいです。認知症は、自分だけでなく、家族や周囲の人にも大きな影響を与える病気です。だからこそ、早期発見や適切な介護が重要です。認知症の人に寄り添い、快適な生活を支えるためには、知識や情報を得ることが第一歩です。このブログでは、今後も認知症に関するさまざまな話題をお届けしていきます。どうぞお楽しみに!