認知症サポートの道

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【認知症】と関係する脳の部位について

こんにちは。認知症は、脳の機能が低下して、記憶や判断力、言語能力などが衰える状態です。認知症にはさまざまなタイプがありますが、今回は、認知症と関係する脳の部位についてご紹介します。脳は私たちの思考や感情、行動を司る重要な器官ですが、その中でも特に認知症に影響を与える部位はどこでしょうか?それでは、一緒に見ていきましょう。

 

1|前頭葉

前頭葉は思考や判断、意志、感情、コミュニケーションなどに関係する部位です。前頭側頭型認知症では、この部位が萎縮し、性格や行動に変化が現れます。

その中でも前頭葉は重要な役割を担います。

 1-1|前頭前野とは何でしょうか?

前頭前野とは、脳の一部である前頭葉の最前部にある部分です。この部分は、人間の高度な精神活動を担っています。具体的には、以下のような機能があります。

  • 経験したことの記憶をコントロールする
  • 感情を制御する
  • 意欲を持つ
  • 計画や判断をする
  • 行動や言動を抑制する

このように、前頭前野は人間らしさを形成する重要な役割を果たしています。そのため、脳の司令塔とも言われています。

 

 1-2|前頭前野の活性化と認知症予防の関係は?

認知症とは、脳の機能が低下して記憶力や判断力などが衰える病気です。認知症にはさまざまな原因がありますが、一般的には加齢や生活習慣などが影響します。

認知症予防には、脳を刺激することが大切です。脳を刺激することで、脳細胞の新生や回路の強化が促されます。これにより、脳の機能が維持されるか改善される可能性が高まります。

特に、前頭前野認知症予防に重要な部分です。前頭前野は高度な精神活動を担っているため、その機能が低下すると日常生活に大きな支障が出ます。例えば、以下のような症状が現れることがあります。

  • 物事を忘れやすくなる
  • 感情が不安定になる
  • 意欲が低下する
  • 計画や判断ができなくなる
  • 行動や言動が乱れる

これらの症状は、認知症の初期段階で見られることも多いです。そのため、前頭前野の活性化は認知症予防に効果的だと言われています。

 1-3|前頭前野を活性化する方法は?

では、具体的にどうすれば前頭前野を活性化できるでしょうか?前頭前野を活性化するには、目的ある活動を手を使って行うのが最も簡単な方法です。手を使うことで、脳と体の連携が強化されます。また、目的ある活動とは、自分の興味や目標に沿った活動のことです。自分の意思で行うことで、前頭前野の機能が刺激されます。

具体的には、以下のような活動がおすすめです。

  • 趣味やスポーツなどの楽しい活動
  • 習い事や勉強などの学びの活動
  • ボランティアや仕事などの社会貢献の活動
  • 料理や掃除などの家事の活動
  • パズルやゲームなどの頭を使う活動

これらの活動は、自分のレベルに合わせて挑戦することが大切です。あまりにも簡単だと脳が刺激されませんし、あまりにも難しいとストレスになります。自分にとって適度な難易度で、楽しく取り組むことがポイントです。

 

 

2|側頭葉と頭頂葉

 

 2-1|大脳皮質の側頭葉にある海馬体

大脳皮質の側頭葉は、脳の両側にある部位で、私たちが聞いたり話したり見たりする能力と密接に関係しています。側頭葉の奥深くには、記憶を形成する海馬という部位がありますが、アルツハイマー認知症では、この海馬が縮小してしまいます。その結果、物事を忘れたり、自分がどこにいるのか分からなくなったりするようになります。

アルツハイマー認知症は、脳の海馬にタンパク質が異常にたまることで起こる病気です。このタンパク質は、海馬の細胞を傷つけて死滅させます。海馬体は、記憶や空間認知などの機能を司ります。海馬体が萎縮すると、これらの機能が低下し、物忘れや見当識障害などの症状が現れます。

アルツハイマーでは、海馬体が最初に障害されるため、これらの症状が初期症状として認められます。

 

  【有酸素運動が海馬体に与える影響】

 

有酸素運動とは、酸素を使ってエネルギーを作り出す運動のことです。例えば、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどがあります。有酸素運動には、健康や美容にいろいろな効果がありますが、その中でも注目したいのが、記憶力や判断力などの認知機能の向上です。

では、なぜ有酸素運動が認知機能に良いのでしょうか?その理由は、筋肉から出る神経信号が脳に影響を与えるからです。筋肉から出る神経信号とは、筋肉が動くときに発生する電気信号のことで、求心性の神経信号と呼ばれます。この求心性の神経信号は、以下のような経路で脳に伝わります。

  • 筋肉 → 脊髄 → 脳幹 → 視床 → 大脳皮質
  • 大脳皮質とは、脳の一番外側にある部分で、思考や感覚などの高次機能を担っています。

この経路の中で重要なのが、海馬体です。海馬体とは、大脳皮質の下にある部分で、記憶に関係する脳の回路です。求心性の神経信号は、視床から大脳皮質に伝わる途中で海馬体を通ります。そのときに、海馬体が刺激されて記憶力が高まると考えられています。

つまり、有酸素運動をすると、

  • 筋肉から求心性の神経信号が出る
  • その神経信号が海馬体を刺激する
  • 海馬体が記憶力を高める

という仕組みで認知機能が向上する可能性があるのです。

この仕組みはまだ推測の段階ですが、有酸素運動が認知機能に良いことは多くの研究で示されています。例えば、

  • 有酸素運動を続けた高齢者は、続けなかった高齢者よりも認知機能が低下しにくい
  • 有酸素運動をした後は、しなかった後よりも記憶力や注意力が高まる
  • 有酸素運動をすることで海馬体の大きさや血流量が増える

などの事実が報告されています。

以上からわかるように、有酸素運動は介護従者の方々にもおすすめです。介護従者の方々は、日々の仕事で多くの判断や記憶を必要とします。そのため、認知機能を高めることは、仕事の効率や質を向上させるだけでなく、自分の健康や幸福感にもプラスになります。有酸素運動は、時間や場所を選ばずにできるものが多いので、ぜひ日常に取り入れてみてください。

 

 2-2|頭頂葉

頭頂葉は、脳の中央に位置する部位で、様々な機能を持っています。例えば、知覚を感じたり、運動したり、読んだり、書いたり、話したり、計算したりすることができます。また、頭頂葉の後ろには記憶や空間認知に関係する部位があります。これらは後帯状回と楔前部と呼ばれます。

アルツハイマー認知症では、頭頂葉の後ろにある後帯状回と楔前部も萎縮します。これらの部位は記憶や空間認知に関係する部位であるため、萎縮すると言語障害や失認などの症状が起こります。言語障害とは、言葉を話したり、理解したりする能力が低下する症状です。失認とは、物の名前や場所などの記憶が失われる症状です。


3|後頭葉と脳血管


後頭葉
脳の背面にある後頭葉は、目で見たものを処理したり、それらのものが何であるかを判断したりする機能を担っています。そのため、後頭葉の機能が低下すると、見えないものが見えるようになる幻視や、視界が狭くなる視野障害などの症状が起こります。レビー小体型認知症になると、この後頭葉が縮んでしまいます。

 

脳血管
脳血管とは脳の血液を供給する管です。脳血管性認知症とは、脳の血液の通り道である脳血管に異常が起こり、脳の一部が損傷して認知機能が低下する病気です。脳血管にはいろいろな種類がありますが、主な異常としては、血栓動脈硬化などで血管が詰まる脳梗塞や、高血圧などで血管が破れる脳出血があります。これらの異常によって、脳の一部に酸素や栄養が届かず、脳細胞が死んでしまいます。その結果、障害された部位に応じて、言語障害や運動障害、視野障害や認知機能障害などのさまざまな症状が現れます。

脳血管性認知症の原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどが挙げられます。これらのリスク因子を減らすことで、脳血管性認知症の発症を予防することができます。

 

おわりに

認知症は、脳の様々な部位に影響を及ぼす病気ですが、その中でも特に重要なのは、海馬や前頭前野、側頭葉などです。これらの部位は、記憶や判断力、言語能力などを担っていますが、認知症によって損傷されると、それらの機能が低下してしまいます。認知症は現在治療法が確立されていませんが、予防法としては、脳トレや運動、栄養バランスの良い食事などが有効です。また、認知症になってしまった方やそのご家族に対しては、社会的な支援や理解が必要です。この記事を読んで、少しでも認知症について知るきっかけになれば幸いです。次回もお楽しみに。ありがとうございました。