認知症サポートの道

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【前頭側頭型認知症】に関する完全ガイド: 病気の理解から予防まで

誰もが共感するかもしれない、身近な問題に直面しているのではないでしょうか?それは、【前頭側頭型認知症という病気です。我々の大切な人々がこの病気にかかる可能性があるとしたら、私たちはどのように向き合うべきでしょうか?科学的な研究から、前頭側頭型認知症の原因やリスク要因が明らかにされつつあります。この記事では、前頭側頭型認知症についての基本的な知識から、その症状、治療方法、予後に至るまでを網羅的にご紹介します。あなたの身の回りにも、この情報が役立つ方がいるかもしれません。また、前頭側頭型認知症への理解を深めることで、適切なケアや支援を提供できるかもしれません。大切な人々と共に、前頭側頭型認知症に対する理解を深め、適切な対応策を見つけていく手助けになることでしょう。

 

1|前頭側頭型認知症とはどのような病気か

この認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が委縮するというものです。これらの脳の部分は、人間らしさを司るところなので、委縮すると色々な問題が起こります。例えば、不適切な行動をしたり、言葉が出なくなったり、体が思うように動かなくなったりします。原因はまだわかっていませんが、ピック小体というタンパク質が関係していると考えられれています。

 

 

2|ピック病について

ピック病は、初老期に発症する神経変性疾患で、前頭側頭型認知症 (FTD) の一種です。この病気は、人格変化、行動異常、言語機能障害などの特有の症状を示します。また、運動ニューロン疾患症状も現れることがあります。ピック病は、脳の前頭葉と側頭葉にある神経細胞が死んでしまうことで起こります。この部分は、感情や判断力、社会性などに関係しています。原因はまだ分かっていませんが、遺伝的な要因が関係している可能性があります。診断は、神経学的検査や画像診断などによって行われます。現在のところ治療法はありませんが、薬物療法心理療法などで症状を和らげることができます。

ピック病の原因は、タウ蛋白やTDP-43などのタンパク質が変性して脳の神経細胞に蓄積されることで、前頭葉や側頭葉の機能が低下することです 。しかし、なぜそのような変化が起こるのかはまだ明らかになっていません 。一部の患者では遺伝的な要因が関係していることもわかっていますが、日本では遺伝性のものはほとんどみられません 。

ピック病では、認知症による記憶障害が病気発症時期には認められないこともあるため、たとえ社会ルールを逸脱した場合でも、病気とは気づかれずに社会的な不利益を受ける可能性がある。


3|前頭側頭型認知症の原因やリスク要因

前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって、様々な症状が引き起こされる病気です。

FTDの原因は、まだ明確には解明されていません。しかし、タウタンパク質やTDP-43などの異常物質が脳に蓄積することが関係しているとされています。

FTDは、50~60歳代と比較的若く、65歳未満に起こる【若年性認知症の主な原因の1つとなっており、2015年に厚生労働省により「指定難病」に認定されています。

 

 3-1|若年性認知症について

若年性認知症は、65歳未満で発症する認知症の総称です。この疾患は、高齢者の認知症と同様に、脳に何らかの障害が起こるという共通点があります。ただし、若年性認知症では、脳血管障害が最も多く、生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)が大きな要因です。したがって、生活習慣の改善が予防につながります。

若年性認知症は、発症時期によって初老期認知症(40歳~64歳)と若年期認知症(18歳~39歳)に分類されます。日本では、およそ4万人が若年性認知症を患っており、そのうち男性が6割、女性が4割です。ただし、高齢者の認知症とは異なり、若年性認知症は発見が難しく、社会的・経済的な影響も大きいという特徴があります。

次に、若年性認知症の特徴を見てみましょう。この疾患は、高齢者の認知症と比べて、以下の点が異なります:

1. 発見が遅れやすい:若年性認知症は、「若いから大丈夫」という誤解や、「ストレスのせいだろう」という誤解によって、診断が遅れることがあります。また、高齢者の認知症と混同されることもあります。

2. 社会的・経済的影響が大きい:若年性認知症の患者は、働いていたり、家族を養っていたりすることが多いため、仕事や家庭の負担が増え、収入にも影響を及ぼすことがあります。家族も介護と仕事の両立に苦労し、精神的な負担を感じることがあります。

3. 症状の進行が速い:若年性認知症は、高齢者の認知症よりも症状の進行が速いとされています。特に若年性アルツハイマー病は、高齢者のアルツハイマー病よりも進行が早いことがあります。そのため、早期の診断が非常に重要です。

続いて、若年性認知症の症状を見てみましょう。症状は原因によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります:

  • 記憶障害:最近の出来事を忘れたり、同じことを何度も尋ねたりします。
  • 見当識障害:日付や場所、自分の名前や年齢を忘れたり、混乱したりします。
  • 判断力・思考力の低下:物事の計画や問題解決が難しくなります。
  • 言語障害:言葉を発することや理解することが難しくなります。
  • 失語:話すことや書くことが難しくなり、読むことや聞くことができなくなります。
  • 失行:日常生活での基本的な動作ができなくなります。
  • 失認:物や人を見分けられなくなります。
  • 幻覚・妄想:存在しないものを見たり聞いたりします。
  • 性格・気分の変化:怒りっぽくなったり、無気力になったりします。

これらの症状は、中核症状(認知機能の低下に関連するもの)と周辺症状(精神・行動面に関連するもの)に分けられます。周辺症状は本人や家族にとって大きな負担となることがあり、薬物療法心理的支援などが有効です。

診断方法についても触れましょう。若年性認知症の診断には、問診、神経心理検査、画像診断、血液検査などが利用されます。一般的には神経内科や精神科で診断が行われますが、専門的な知識が必要な場合は認知

症専門医や老年精神科医に紹介されることもあります。

最後に、若年性認知症の治療についても説明します。治療は原因に応じて異なりますが、薬物療法リハビリテーション、介護支援などが一般的に用いられます。

薬物療法では、特定の薬剤が認知機能の改善に寄与することがあります。リハビリテーションでは、認知機能や日常生活能力を維持するための訓練が行われます。介護支援は、患者と家族が適切な支援を受けることができるようにするための重要な要素です。

若年性認知症は難しい病気ですが、早期の発見と適切な治療と支援が大切です。本人や家族が一人で悩まず、専門家や地域の支援機関に相談することが大切です。

 

4|前頭側頭型認知症の症状や経過

この認知症が発症すると、平均6〜9年ほどの寿命になると言われています。最初は怒りっぽくなったり、特異な行動をしたりする人が多いですが、だんだん無感情になってしまうこともあります。

前頭側頭型認知症の診断方法

前頭側頭型認知症の診断は、医師が患者とその家族に問診を行い、前頭側頭型認知症に特徴的な症状があるかどうかを判断します。また、CT検査やMRI検査を行い、脳の前頭部に萎縮が認められた場合、前頭側頭型認知症と診断されます。これらの検査は、脳腫瘍、脳膿瘍、脳卒中など他の原因の可能性を否定するためにも行われます。

 

5|前頭側頭型認知症の治療方法

前頭側頭型認知症は、記憶障害よりも人格や行動の変化が目立つ認知症です。この認知症に対する特効薬はありませんが、症状に合わせて薬物療法や非薬物療法を行うことで、生活の質を向上させることができます。作業療法では、患者さんの興味やこだわりを生かしたリハビリを提供します。治療やケアは個人差が大きいので、医師や作業療法士と相談しながら決めましょう。また、周りの人にも認知症の特徴を理解してもらい、必要ならば専門的な施設のサポートを受けることも大切です。

 

6|前頭側頭型認知症の予後

前頭側頭型認知症は、発症してから平均6〜9年の寿命と言われています。また、発症後平均6〜8年で寝たきりの状態になると言われています。ただし、個人差がありますので、必ずしもこの通りではありません。また、病気の進行に伴い、筋力の低下や筋萎縮がある場合は、その進行がさらに早いとされています。前頭側頭型認知症は、現在根本的な治療法がなく、対症療法が中心となります。医師や作業療法士などの専門家とよく話し合って治療法を決めることが大切です。

 

7|前頭側頭型認知症の利用者様への介護

前頭側頭型認知症の利用者様は、病気の影響で理性的な行動が取れなくなったり、人格が変わったりするため、介護をする家族は戸惑い、困惑することも多いでしょう。病気の特性を生かして先回りして対策することで、病気によるトラブルを減らすことができます。例えば、毎日同じ時間に同じ行動をする「常同行動」に対しては、ルーチン化療法を実践するなど、症状の特徴を生かして対処することが大事です。

また、前頭側頭型認知症は比較的若い人が発症します。働く世代でも発症するため、場合によってはこれまで得られていた収入が絶たれることもあります。経済的な支援を活用して、少しでも負担を減らしましょう。前頭側頭型認知症は、「前頭側頭葉変性症」という名前で指定難病に登録されています。そのため申請することで医療費の助成を受けることができます。

介護保険サービスは本来、65歳以上でなければ利用することができません。しかし、特定疾患として定められた病気によって介護となった場合は、条件を満たすことで40〜64歳でも利用することができます。前頭側頭型認知症は「初老期における認知症」として特定疾患に含まれます。介護保険サービスの利用には要介護認定を受ける必要があるため、まずはお住まいの市区町村の担当部署に問い合わせてみましょう。

 

8|前頭側頭型認知症の利用者様への介護その2

地域包括支援センターに相談することもできます。デイケアやデイサービス、ショートステイなどのサービスを利用することで、家族の負担を軽減することができます。

前頭側頭型認知症の患者さんや家族が日常生活を穏やかに過ごすために重要なのが、家族や介護をする人がこの病気の特徴を知って「適切な接し方」をすることです。接し方の工夫は、介護をするうえでの負担を軽減し、よりよい介護も可能になってきます。以下は、介護の現場での多くの実例から導き出された前頭側頭型認知症のケア10か条です。できる範囲で実践してみるとよいでしょう。

1. 自然体で接する
2. 症状の特徴をケアに生かす
3. 「周徊(しゅうかい)」は放置しない
4. しっかりと行動を観察
5. 本人の「これまでの生活」を振り返る
6. コミュニケーションの方法を工夫
7. 環境を整える
8. 無理強いや強引な制止をしない
9. 得意なことを生かす
10. 食行動の変化を見落とさない

NHK健康チャンネルより
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_957.html

 

9|前頭側頭型認知症の予防方法

前頭側頭型認知症の予防方法については、まだ理解が十分にされていない病気であるため、具体的な予防方法は確立されていません。ただし、健康的な食生活がとても重要であるとされています。

前頭側頭型認知症は、異常なたんぱく質によって脳が部分的に萎縮していく病気です。アルツハイマー病の場合は、脳の海馬という記憶を司る部分から萎縮していきますが、前頭側頭型認知症の場合は脳の前頭葉や側頭葉のいずれかが萎縮し始めることで発症します。進行すると、側頭葉と前頭葉ともに萎縮していきます。

早期発見が重要です。早期発見に役立つ症状チェックがあります。例えば、「利き手」「長所」など知っているはずの言葉を聞いても意味がわからない、知人や友人の顔を見ても誰かわからない、店頭や人の家の庭先にあるものを勝手に持っていく、一時停止違反や信号無視など交通違反を繰り返す、毎日のように急に出かける、甘いものが過剰に好きになる、毎日同じ料理を食べる、食べ物をあればあるだけ食べる等です。

前頭側頭型認知症が疑われる場合、もの忘れ外来や全国にある認知症疾患医療センターの受診をおすすめします。こういった医療機関が近くにない場合は、「日本老年精神医学会」や「日本認知症学会」の専門医がいる医療機関を受診すると、専門医の診察を受けたり、専門医を紹介してもらったりすることが可能です。

前頭側頭型認知症の治療法は、そのメカニズムに不明点が多く、まだ開発されていません。ただし、記憶力や食事・着替えなど日常生活における動作が比較的維持される病気なので、家族や周りの人の適切な介護によって行動をうまくコントロールすれば、本人や家族の生活の質を長く保つことができます。その方法の1つが、家族だけで負担を抱えないためにデイサービスを活用することです。

 

終わりに

前頭側頭型認知症についお読みいただきありがとうございます。この記事では、前頭側頭型認知症の原因、症状、診断、治療、予防などについてご紹介しました。前頭側頭型認知症は、まだあまり知られていない病気ですが、早期発見と適切なケアが重要です。もし自分や身近な人に前頭側頭型認知症の兆候を感じたら、医師に相談してください。また、前頭側頭型認知症の患者さんやご家族の方々には、日々の生活を快適に過ごすためのサポートが必要です。そのためには、前頭側頭型認知症に関する正しい知識と理解が欠かせません。このブログ記事が、前頭側頭型認知症について学ぶきっかけとなれば幸いです。