認知症サポートの道

「認知症と向き合う人々の支え手。認知症の勉強を日々研鑽中。」

高齢者転倒の危険性と予防法

高齢者の方々は、転倒によって大きな怪我をする可能性があります。転倒は、身体機能の低下や知的機能の低下と密接に関係しています。特に、75歳以上の後期高齢者の方々は、74歳以下の前期高齢者の方々よりも、転倒の頻度が高いというデータがあります。

では、なぜ後期高齢者の方々は転倒しやすいのでしょうか?その原因と予防法について、簡単に説明します。

1|転倒の原因と対策

高齢者の方が転倒すると、大きなけがや後遺症につながることがあります。転倒を防ぐためには、なぜ転倒するのかを知ることが大切です。転倒の原因は、大きく分けて二つあります。

 1-1|内的要因

身体機能や知的機能が低下することで、バランス感覚や判断力が悪くなり転倒につながりやすくなります。内的要因には身体機能の低下と知的機能の低下の二つの側面があります。

  • 身体機能の低下:筋力や柔軟性、バランス感覚などが衰えることで、歩行や立ち上がりなどが困難になります。また、視力や聴力も低下することで、周囲の状況を把握しにくくなります。
  • 知的機能の低下認知症などによって、判断力や注意力が低下することで、転倒の危険性を見誤ったり、不注意な行動をとったりします。また、記憶力や言語能力も低下することで、介護従者とのコミュニケーションが困難になります。

 1-2|外的要因

周囲の環境が転倒しやすい状態になっていることもあります。例えば、以下のようなものが挙げられます。

    • 物質的環境:段差や滑りやすい床、段差があったり、敷きっぱなしの布団や絨毯、足元にある物など照明が暗かったりすることで、転倒しやすくなります。また、靴や服装が不適切だったりすることもあります。
    • 人的環境:介護者や家族の不在や不十分なサポート、医師や看護師など専門家のアドバイスが得られないことなど

これらの要因を把握した上で、転倒を防ぐための対策を考えましょう。内的要因に対しては、適度な運動やリハビリで身体機能を向上させたり、認知症うつ病などの治療やケアで知的機能を改善したりすることが有効です。外的要因に対しては、段差や滑りやすい床を改善したり、布団や絨毯を片付けたり、足元に物を置かないようにしたりすることで安全性を高めることができます。また、介護者や家族は常に目を配って危険な行動を防いだり、必要に応じて専門家に相談したりすることも大切です。

 

2|転倒の予防法

後期高齢者の方々が転倒しないようにするためには、以下のような予防法が有効です。

  • 身体機能の維持・向上:適度な運動をして筋力や柔軟性、バランス感覚を保つことが大切です。また、定期的に眼科や耳鼻科で検査を受けて視力や聴力をチェックしましょう。
  • 知的機能の維持・向上認知症などの早期発見・治療が重要です。日常生活で頭を使うことや趣味などを楽しむことで知的機能を刺激しましょう。また、介護従者と積極的に話すことでコミュニケーション能力を保ちましょう。
  • 環境改善:床を滑りにくくしたり、段差をなくしたり、照明を明るくしたりすることで安全性を高めましょう。また、靴や服装はフィット感があって動きやすいものを選びましょう。家具や物は邪魔にならないように片付けましょう。

以上が、転倒の原因と予防法についての簡単な説明でした。後期高齢者の方々は、転倒によって命に関わることもあります。介護従者の方々は、常に転倒の危険性を意識して、高齢者の方々の安全を守ってください。

 

3|具体的な骨折について

 3-1|高齢者の大腿骨頸部骨折について知っておきたいこと

高齢者の大腿骨頸部骨折とは、太ももの付け根の骨が折れることです。この部分は大腿骨という骨の一部で、大腿骨頸部と呼ばれます。高齢者の場合、転倒などのちょっとした衝撃で大腿骨頸部が折れることがあります。

高齢者の大腿骨頸部骨折は、年々増加している問題です。日本では、毎年約15万人が大腿骨頸部骨折を起こしています。そのうち約8割が女性です。女性は閉経後に骨粗しょう症になりやすく、骨がもろくなるためです。

高齢者の大腿骨頸部骨折は、ほかの骨折と比べて非常に重大な影響を及ぼします。その理由は以下の通りです。

  • 受傷直後から歩行不能になる
    • 大腿骨頸部は体重を支える重要な部分です。そのため、大腿骨頸部が折れると、歩くことができなくなります。歩行不能になると、筋力や関節の可動域が低下し、日常生活に支障が出ます。
  • 入院・臥床を余儀なくされ
    • 大腿骨頸部骨折はほとんどの場合、手術が必要です。手術後は安静にしなければならず、長期間の入院・臥床が必要になります。入院・臥床すると、さらに筋力や関節の可動域が低下し、血栓症や肺炎などの合併症のリスクが高まります。
  • 手術後も骨折前の状態まで回復しないことが多い
    • 大腿骨頸部骨折は単純な骨折ではありません。大腿骨頸部は血管が多く通っている部分であり、血流が悪くなると壊死(死んでしまうこと)する可能性があります。壊死すると、人工関節置換術(人工的な関節を入れる手術)が必要になります。人工関節置換術は高度な技術を要する手術であり、感染症や人工関節の緩みなどの合併症のリスクがあります。また、人工関節は本物の関節と同じように動かすことができません。そのため、手術後も骨折前の状態まで回復することは難しいです。
  • 生命予後も悪い
    • 大腿骨頸部骨折は、高齢者の生命予後にも影響します。大腿骨頸部骨折を起こした高齢者の約3割が1年以内に死亡しています。その原因は、合併症や栄養不良、うつ病などが挙げられます。

以上のように、高齢者の大腿骨頸部骨折は、歩行能力や日常生活の自立度、生命予後などに大きな影響を与える深刻な問題です。

 

おわりに

転倒による怪我や骨折は、誰にでも起こりうるリスクですが、正しい知識と予防策を身につけることで、そのリスクを最小限に抑えることが可能です。内的要因と外的要因、そして転倒の予防法について詳しくご紹介しましたが、これらの情報が皆さんの健康と安全をサポートする一助となれば幸いです。
特に高齢者の大腿骨頸部骨折についての理解は、身の回りの環境や生活スタイルにおいて大きな影響を与えることでしょう。その予防法や注意点をしっかりと把握し、日々の生活に取り入れていただければと思います。
皆さんの健康と安全が第一です。今後も正しい知識を身につけて、転倒予防に努めていただきたいと願っています。何か質問やご意見がありましたら、お気軽にお知らせください。引き続き、安全で健康的な日々をお過ごしください。