認知症サポートの道

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【日常生活動作】(ADL)とは:自己ケアの基盤を知ろう

老後の健康を考える多くの方々へ向けて、高齢者の自立と介護予防についてお伝えします。日常生活動作(ADL)の重要性やその評価方法、特にバーセルインデックスについて解説します。何故ADLが健康に影響を与えるのか、その背後にある問題を掘り下げつつ、具体的な予防方法もご紹介。この記事では、基本的・手段的日常生活動作の評価や、バーセルインデックスの意義に触れつつ、高齢者の自立を支えるセルフケアの重要性もお伝えします。老後の安心な生活のため、ぜひご一読ください。

1|高齢者の自立と介護予防:健康な生活のための3つの要素

自立した生活とは、他人に頼らずに自分の力で生活できることです。しかし、高齢になると、身体や精神の機能が低下して、日常生活に困難が生じることがあります。そこで、介護予防の重要性が注目されています。

介護予防とは、高齢者が要介護状態になることを防ぐための取り組みです。具体的には、以下の3つの要素にバランスよく働きかけることが必要です。

  • 心身機能…身体や精神の健康を保つために、適度な運動や栄養、睡眠などを心がけることです。
  • 活動…日常生活動作(ADL)や家事、屋外歩行などを自分でできるようにすることです。ADLとは、食事や入浴、排泄などの基本的な動作のことです2。
  • 参加…生きがいや仕事などを通じて社会に関わることです。地域の人と交流したり、趣味やボランティアなどに参加したりすることです。

これらの要素を高めることで、自立した生活を送り、生活の質を向上させることができます。

自立した生活とは、自分の力で生活できることですが、それを維持するためには介護予防が必要です。介護予防は難しいことではありません。日常生活に気を付けて、心身機能や活動性、社会参加を高めることが大切です。また、必要に応じて介護予防のサービスも利用しましょう。自分らしく元気でいるために、今から始めてみませんか。 

1|日常生活動作(ADL)とは

認知症の方の日常生活動作(ADL)について解説します。ADLとは何でしょうか?

ADLとは、Activities of Daily Livingの略で、日常生活に必要な基本的な動作のことです。具体的には、食事、排泄、着替え、入浴、歩行などの身体的運動のほかに、精神活動やコミュニケーション能力も含まれます。ADLは、自分の身体や生活を自分で管理する能力を表します。

認知症の方は、脳の機能が低下することで、ADLにも影響が出ます。特に、高度な脳機能を必要とする手段的日常生活動作(IADL)は、早い段階で障害が現れます。IADLとは、Instrumental Activities of Daily Livingの略で、社会生活に必要な応用的な動作のことです。具体的には、食事の準備、買い物、掃除、洗濯などの家事、金銭管理、交通機関の利用、服薬管理、電話の使用などです。

  • 基本的日常生活動作(BADL):起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容など
  • 手段的日常生活動作(IADL):掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味など

認知症は、高度な脳機能から失われるため、手段的日常生活動作(IADL)が基本的日常生活動作(BADL)よりも先に低下します。

認知症の進行に伴って、基本的日常生活動作(BADL)も低下していきます。運動や脳を使って考えること、コミュニケーションの機会が減ると、身体や脳の機能はさらに低下して、「寝たきり」の状態へと進行しやすくなります。

症状の具体例は以下になります。

  • 人や物の名前が思い出せない
  • 料理の手順がわからない
  • 季節や目的にあった洋服を選べない
  • 買い物でお金の計算ができない
  • 道に迷う

などです。

IADLが低下すると、社会的な役割や自己価値感が失われることもあります。また、IADLが低下する前兆として、「できるけれどもしない」という状態が見られることもあります。これは、「できるADL」と「しているADL」の乖離(かいり)と呼ばれます。例えば、

  • 電話をかけることはできるけれどもかけない
  • 買い物に行くことはできるけれども行かない
  •  趣味や余暇活動をすることはできるけれどもしない

などです。

このように、「できるADL」と「しているADL」を評価することで、認知症の方の生活能力や介護ニーズを把握することができます。ADLやIADLを評価するためには、専門的な評価指標を用います。


2|介護やリハビリに役立つ評価方法、バーセルインデックスとは?



 2-1|ADLの評価方法とは

認知症の方は、脳の機能が徐々に低下していくため、日常生活動作(ADL)にも支障が出てきます。ADLとは、食事や入浴、着替えなどの基本的な動作や、買い物や電話などの社会的な動作を指します。ADLの評価は、認知症の方の自立度や介護の必要性を判断するために重要です。

ADLの評価には、さまざまな尺度や指標がありますが、ここでは代表的なものを紹介します。

  【基本的日常生活動作(BADL)の評価】

基本的日常生活動作(BADL)とは、食事・移動・整容・トイレ・入浴・歩行・階段・着替え・排便・排尿などの日常生活上必要な動作です。BADLの評価には以下のような尺度があります。

  • Barthel Index(バーセルインデックス)

    • 10項目で構成されており、各項目に2~4段階の得点がつけられます。
    • 得点が高いほど自立していることを表します。
  • Katz Index(カッツインデックス)

    • 6項目で構成されており、各項目に自立・介助の関係から7段階の自立指標がつけられます。
    • AからGまでのアルファベットで表されます。
    • Aが完全自立でGが完全介助を表します。
  • DASC-21(ダスク21)

    • 地域包括ケアシステムにおける認知症の評価尺度です。
    • 21項目で構成されており、その中にBADLの6項目が含まれています。
    • 各項目に4段階の得点がつけられます。
    • 得点が低いほど自立していることを表します。
  【手段的日常生活動作(IADL)の評価】

手段的日常生活動作(IADL)とは、基本的日常生活動作よりも高次の日常生活動作です。食事の準備や買い物などの家事や、電話や交通機関の利用などの社会的な動作が含まれます。IADLの評価には以下のような尺度があります。

  • Lawton(ロートン)の尺度

    • 8項目で構成されており、各項目に3~5段階の得点がつけられます。
    • 得点が高いほど自立していることを表します。
  • 老研式活動能力指標

    • 手段的自立や知的能動性や社会的役割の評価ができる尺度です。
    • 13項目で構成されており、各項目にはい・いいえで答えます。
    • 答えがはいの数が多いほど自立していることを表します。
  • DASC-21(ダスク21)

    • 地域包括ケアシステムにおける認知症の評価尺度です。
    • 21項目で構成されており、その中にIADLの15項目が含まれています。
    • 各項目に4段階の得点がつけられます。
    • 得点が低いほど自立していることを表します。
  【ADLの評価のポイント】

ADLの評価は、認知症の方の自立度や介護の必要性を判断するために重要ですが、以下の点に注意する必要があります。

  • ADLの評価は、できるADLとしているADLの両方を見ることが大切です。評価の場面ではできているADLも、実際の日常生活ではしていないこともあります。その場合は、なぜしていないのか、どうすればできるようになるのかを考える必要があります。
  • ADLの評価は、認知症の方の能力の変動にも対応する必要があります。同じ環境でも、ある時はできるが他の時はできないということがよくあります。その場合は、どんな要因が影響しているのか、どうすれば安定してできるようになるのかを考える必要があります。

 

 2-2|パーセルインデックスとは

パーセルインデックスとは、高齢者や障害者の方の日常生活動作(ADL)を評価するための指標のひとつです。食事や着替えなどの10項目について、自立できるかどうかを0点から15点の4段階で採点し、合計点数で自立度を表します。100点満点で、60点以上が部分自立、40点以下が大部分介助とされています。

パーセルインデックスは、以下のようなメリットがあります。

  • 採点が簡便で時間がかからない
  • 自立度が一目でわかる
  • 最大限の能力を表しやすい
  • 評価法が世界共通

一方で、以下のようなデメリットもあります。

  • 実際にしている動作の評価ではない
  • 評価が大まか
  • 時系列での変化が分かりにくい

パーセルインデックスは、介護従事者向けの初心者にもわかりやすくシンプルな評価法です。しかし、細かい動作や介助量の変化には対応できないため、他のADL評価法と併用することが望ましいです。

 

 

3|ADL低下による影響と予防方法を紹介


 3-1|ADL低下による生活への影響と予防用法

日常生活動作(ADL)とは、食事や着替え、トイレや入浴など、毎日の生活に必要な基本的な動作のことです。このADLができるかどうかは、高齢者の自立度や生活の質に大きく関わっています。

しかし、年齢とともに身体や心の機能が低下すると、ADLも難しくなってしまいます。例えば、筋力や体力が落ちると立ったり歩いたりすることが困難になります。認知症うつ病があると、物事を計画したり実行したりすることができなくなります。

ADLが低下すると、外出や趣味などの活動性も低下します。すると、社会とのつながりや生きがいを失ってしまうこともあります。家に引きこもってしまうと、さらに身体や心の機能が衰えてしまいます。

このようにして、ADLの低下は自立度の低下につながります。介護を必要とするようになると、自分でできることが少なくなってしまいます。最終的には寝たきりになってしまう可能性もあります。


では、どうすればADLを低下させずに自立した生活を続けることができるでしょうか?

そのためには、「介護予防」という考え方が重要です。「介護予防」とは、人が生きていくための生活機能を高めることによって自立した生活を送り、生活の質の向上を目指すことです11。

具体的には、「身体機能」「認知機能」「精神面」「社会環境」の4つの要素にバランスよく働きかけることが必要です。

  • 身体機能を高めるためには、適度な運動や栄養の摂取が大切です。筋力や体力を維持することで、転倒や骨折などの予防にもなります。
  • 認知機能を高めるためには、脳トレや趣味などの刺激が大切です。認知症の早期発見や早期治療も重要です。
  • 精神面を高めるためには、自分の気持ちを表現したり、人とコミュニケーションをとったりすることが大切です。うつ病や孤独感などの予防や対処も重要です。
  • 社会環境を高めるためには、地域の活動やボランティアなどに参加したり、支援サービスを利用したりすることが大切です。生きがいや役割を見つけることも重要です。

以上のように、介護予防は自分だけでなく、周りの人や地域との関わりも必要です。自分のできることを見つけて、少しずつでも取り組んでみましょう。そうすれば、ADLを低下させずに自立した生活を続けることができます。

 3-3|ADL低下予防に対するセルフケア

セルフケアとは、自分自身の健康や生活を管理することです。ADL低下している方がセルフケアを行うためには、以下のようなポイントがあります。

  • 自分のできることやできないことを把握する
  • できることは自分で行う
  • できないことは適切な介助を受ける
  • 自助具や福祉用具を利用する
  • 環境を整えて安全に動けるようにする

セルフケアは、自分の能力に合わせて行うことが重要です。無理をせずに、自分のペースで進めましょう。また、周囲の人からのサポートも必要です。家族や介護者は、本人の意思やニーズを尊重し、必要最低限の介助を提供しましょう。

以上が、「ADL低下のセルフケア」についての説明です。ADL低下は、自立した生活に影響しますが、予防やセルフケアによって改善する可能性があります。本人も周囲も一緒に協力して、快適な生活を目指しましょう。

 

4|認知症による日常生活動作低下の対応

認知症の人の介護をするとき、どのように日常生活動作をサポートすればいいのでしょうか?今回は、特に整容に関する注意点をお伝えします。

整容とは、顔や髪の毛を洗ったり、髭を剃ったり、化粧をしたりすることです。整容は、自分の身だしなみを整えるだけでなく、自分の存在感や自尊感情を高める効果もあります。認知症の人も、整容をすることで自分らしさや生きがいを感じることができます。

しかし、認知症の人は、日常生活動作が低下していることが多く、整容に必要な道具や方法を忘れてしまうことがあります。また、洗面用具や化粧品など、口に入れると危険なものを間違って飲んでしまう恐れもあります。危険なものは、できるだけその人の目のとどかないところに置くようにした方がよいと思いがちです。しかし、日常に目に届くところに置いてあるからこそ、その人自身が整容する力を維持することができます

そこで、介護従者としては、以下のような対応が必要です。

  • 整容に必要な道具は、その人が目に見えるところに置く:例えば、歯ブラシや歯磨き粉は洗面台の上に、髭剃りや化粧品は鏡台の上に置くなどです。これは、その人が自分で整容する気持ちや能力を維持するためです。目に見えるところに道具があれば、その人は「今日は歯を磨かなくちゃ」とか「今日は化粧をしよう」という気持ちが湧いてくるかもしれません。また、道具を使う方法を忘れてしまっても、介護従者が手本を見せたり一緒にやったりすることで思い出すことができるかもしれません。
  • 口に入れると危険なものは、その人が手に取れないように注意:例えば、洗面用具や化粧品はキャップをしっかり閉めておく、髭剃りは電源コードを抜いておくなどです。これは、その人が誤って飲んだり切ったりしないようにするためです。もしもそういう事故が起きたら、すぐに医療機関に連絡してください。
  • 整容の時間や頻度は、その人の生活リズムや好みに合わせる:例えば、朝起きたら顔を洗って歯を磨くという習慣がある人は、それに沿ってサポートするということです。また、化粧をするかどうかやどんな色やデザインを好むかなども、その人の個性や趣味を尊重してください。
  • 整容の様子や効果は、記録しておく:例えば、「今日は自分で歯ブラシを持って歯を磨いた」「今日は赤い口紅を塗って嬉しそうだった」などです。これは、その人の状態や変化を把握するためです。記録した内容は、その人の家族や医療スタッフと共有することで、より良い介護を提供することができます。

以上が、認知症の人の整容に関する注意点です。整容は、その人の心と身体の健康に大きく影響する重要な日常生活動作です。介護従者としては、その人が自分らしく整容できるようにサポートすることが大切です。その人の笑顔が見られるように、一緒に頑張りましょう。

おわりに

高齢者の自立と介護予防について、健康な生活を維持するための重要な要素を探求しました。日常生活動作(ADL)の意義や評価方法、そして介護予防の視点からの重要性を深く掘り下げてきました。
日常生活動作(ADL)がいかに個々の健康に影響を及ぼすか、バーセルインデックスを通じて紐解きました。これにより、高齢者の生活の質を向上させ、自己の健康状態をより的確に把握することができるでしょう。
また、ADL低下が生活に与える影響やその予防方法についても詳しく考察しました。自己ケアの大切さやセルフケアの方法に焦点を当てつつ、健康な日常生活を維持するためのアプローチをご紹介しました。
高齢者の皆様がより健やかな日々を過ごすために、今回の情報がお役立ていただければ幸いです。自立と健康の大切さを忘れず、明るい未来を迎えるお手伝いができれば光栄です。
ご愛読いただき、誠にありがとうございました。