こんにちは、私は認知症のブログ記事を書いていこうと思います。認知症とは何か、どうやって予防するか、どうやって対処するかなどについてお話しします。認知症は誰にでも起こりうる病気ですが、それを恐れる必要はありません。むしろ、笑って楽しく過ごすことが大切だと思います。でもいざ認知症についてどれだけ知っていますか?と聞かれればよく理解できていない事もたくさんあるかと思います。そこで、このブログでは認知症に関する知識を介護の仕事をしている方々と一緒に学んでいきたいと思います。では、さっそく始めましょう!
1|認知症とは
【認知症】とは、脳の機能が低下して、記憶力や判断力、言語能力などが衰える病気です。認知症という呼称は、2004年(平成16年)に使用されるようになった当初は行政用語として使用されていたのです。それまでは、【老人性痴呆】という言葉が使われていましたが、この言葉は差別的で不適切だという指摘がありました。
そこで、厚生労働省が老人性痴呆の代わりに認知症という言葉を提案しました。この言葉は、老人や痴呆という単語を含まず、原因や年齢に関係なく認知機能の低下を表す中立的な言葉だと考えられました。
その後、医学の分野でも「老人性痴呆」から「認知症」へと呼称が変わりました。現在では、「認知症」という言葉は一般的に広く使われるようになっています。
認知症にはさまざまな原因や症状がありますが、一般的には以下のような特徴があります。
- 認知症は加齢に伴って発症することが多く、高齢者に多い病気です。しかし、認知症は老化の自然な過程ではなく、正常な老化とは異なります。
- 認知症は進行性の病気であり、治ることはありません。しかし、早期に発見し、適切な治療やケアを受けることで、症状の悪化を遅らせたり、生活の質を向上させたりすることができます。
- 認知症は一つの病気ではなく、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など、さまざまなタイプがあります。それぞれに原因や症状、進行の仕方が異なります。
- 認知症は単に記憶力が低下するだけではなく、思考力や判断力、言語能力、空間認識能力なども影響を受けます。また、感情や性格、行動も変わることがあります。
認知症は介護従事者にとって大きな負担となることがあります。しかし、認知症の人に対して理解を深めたり、コミュニケーションの方法を工夫したりすることで、介護のストレスを軽減したり、関係性を良好に保ったりすることができます。また、介護従事者自身も自分の健康や精神面に気を配り、必要ならば専門家や支援団体に相談したりすることも大切です。
2|認知症の種類
誰もが心配する認知症。その実態は、アルツハイマー型から混合型まで、さまざまな顔を持っていて認知症になる原因となる病気は、多くの種類があります。その数は、研究者によって違いますが、50種類から100種類ぐらいあると言われています。
私たちや大切な人々がその影響を受ける可能性は、決して無視できないものとなっています。 「自分や家族が認知症になるかもしれない」という不安は、多くの人々が共有しているでしょう。
しかし、その中でもアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、そして他のタイプの認知症が、どのようにして私たちの日常生活に影響を及ぼすのか、真剣に考えるべきです。 近年の研究により、認知症は一つの単一の疾患とは言えないことが明らかになってきました。
アルツハイマー型認知症の神経変性プロセス、脳血管性認知症の血管障害、そして他のタイプの特異的な病理学的特徴を理解することは、効果的なケアや予防策を見つけるための鍵となるでしょう。この項では、代表的な認知症のタイプ、アルツハイマー型から混合型までの違いについて探究していきます。それぞれの症状や影響、診断の手法などを解説し、その背後にあるメカニズムを明らかにしていきます。
この項では、異なる認知症のタイプに関する基本的な知識を得るだけでなく、自身や家族の健康管理に役立つ情報を手に入れることができます。早期の認知症の兆候に気付く方法や予防策を学び、より良い生活を送るためのヒントを見つけるでしょう。
2-1|アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は脳の機能が低下する病気で、記憶力や判断力などが衰えていきます。この病気の原因は、脳の細胞の間にアミロイドβという異常な蛋白質がたまって、細胞同士のつながりを妨げることです。その結果、細胞が死んで脳が小さくなってしまいます。アルツハイマー型認知症は、現在治すことができる病気ではありませんが、早期に発見して適切な治療を受けることで、症状の進行を遅らせることができます。
アルツハイマー型認知症の初期症状には、次のようなものがあります。
これらの症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診してください。アルツハイマー型認知症の診断には、脳の画像検査や認知機能検査が行われます。
アルツハイマー型認知症の治療法はありませんが、薬物療法やリハビリテーションによって、症状の進行を遅らせることができます。また、健康的な食事や運動、規則正しい生活を心がけることで、アルツハイマー型認知症の発症リスクを下げることができます。
2-2|脳血管性認知症
脳の一部に酸素と栄養素を運ぶ血液が不足することによって引き起こされる状態です。この病気は、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血などの脳の血管の病気が原因で起こります。これらの病気は、動脈硬化による血管の詰まりや破れが原因で、高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などが危険因子となります。
脳血管性認知症の症状は、障害された脳の部位によって異なります。記憶障害や判断力の低下などの認知機能の低下に加えて、運動麻痺や歩行障害、言語障害、嚥下障害などの神経症状が現れます。また、感情失禁や抑うつなどの精神的な変化もみられることがあります。脳血管性認知症は、「まだら認知症」とも呼ばれます。
脳血管性認知症の治療には根治的なものはありませんが、脳卒中の再発予防やリハビリテーションが重要です。生活習慣を見直し、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を適切に管理し、喫煙をやめるなどして動脈硬化を防ぎます。また、麻痺や歩行障害などの身体機能の回復を目指してリハビリテーションを行います。さらに、認知機能を向上させるために、記憶訓練や生活リハビリなども有効です。
2-3|レビー小体型認知症
認知症の中でも二番目に多いタイプで、脳の神経細胞にレビー小体と呼ばれる変性したたんぱく質が溜まることで引き起こされる病気です。この病気は、認知症の患者さんの約20%に見られます。レビー小体は、大脳皮質や脳幹などの脳の重要な部分に集中しています。レビー小体が多くなると、神経細胞が傷ついて死んでしまい、神経信号が正常に伝わらなくなります。その結果、記憶や判断力などの認知機能が低下したり、幻覚やパーキンソン病のような運動障害が起こったりします。
2-4|前頭側頭型認知症(FTD)
脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、思考や感情、言語などに影響を与える病気です。この病気は、40~60歳代に発症することが多く、指定難病に認定されています。原因はまだはっきりわかっていませんが、タウたんぱくやTDP-43などの異常なたんぱく質が関係していると考えられています。
前頭側頭型認知症(FTD)の症状は、前頭型と側頭型に分けられます。前頭型は、行動や人格に変化が見られるタイプで、不適切な行動や共感の欠如、反復的な強迫行動などが特徴です。側頭型は、言語や記憶に障害が見られるタイプで、言葉の意味がわからなくなったり、知人の顔がわからなくなったりします。
前頭側頭型認知症(FTD)の診断は、問診やCT、MRI、シンチグラフィーなどの検査によって行われます。根本的な治療法はありませんが、出現している症状に対して薬物療法や作業療法で対処します。
前頭側頭型認知症(FTD)の対応方法としては、家族や周囲の人の適切な介護が重要です。家族だけで負担を抱えないためにデイサービスを活用したり、患者さんの常同行動を利用したりすることが有効です。また、行動を誘発する物を管理し、目の前に置かないことも必要です。
混合型認知症とは、2種類以上の認知症を合併している状態を指します。たとえば、アルツハイマー型認知症と血管性認知症や、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症などが組み合わさる状態です。もっとも多いパターンは、アルツハイマー型認知症と血管性認知症の組み合わせと言われています。
2-5|混合型認知症
複数の原因によって引き起こされる認知障害です。そのため、混合型認知症の症状や進行は、個人差が大きくなります。一般的には、合併している認知症の特徴がそれぞれ現れますが、どちらか一方の影響が強く出る場合もあります。混合型認知症の診断は、画像検査や神経心理検査などを行って行われます。治療法は、現在確立されていませんが、合併している認知症に応じて薬物療法や生活指導などが行われます。
3|認知症の原因
人間の一生を通じて、私たちは数々の思い出や経験を積み重ねてきます。しかし、時にはその中で大切な記憶や認識が薄れていく瞬間が訪れることがあります。それが、認知症と呼ばれる症状です。この項では、私たちの日常生活において直面する認知症の原因や、その背後に潜む要因について探求してみましょう。
3-1|加齢
認知機能が低下する最も大きな要因になります。60歳以上になると、脳の老化に伴って認知機能が徐々に低下すると言われています。しかし、もの忘れはすべて認知症というわけではありません。もの忘れには「加齢性」のものと「認知症性」のものがあります。
加齢性のもの忘れは、脳の自然な老化によって起こるもので、一部のことを忘れる程度で、ヒントを与えれば思い出せます。本人は自分で気づいていますが、進行することはなく、日常生活に影響はありません。
一方、認知症性のもの忘れは、脳の神経細胞が急速に壊れることで起こるもので、物事全体を忘れてしまい、ヒントを与えても思い出せません。本人は自分で気づいていませんが、徐々に悪化していき、日常生活に大きな困難をもたらします。
3-2|認知症が遺伝する可能性
実際に遺伝する確率は低いとされています。例えば、アルツハイマー型認知症の場合、高齢者の発症率が高く、遺伝による発症は少ないとされています。若年性アルツハイマーでも、実際に遺伝の可能性があるのは1割ほどで、明らかに遺伝子による影響を受けているのはさらにその半数といわれています。
認知症の発症には、遺伝子以外にも様々な要因が複雑に関わっております。生活習慣やストレス、食生活なども大きな要因として挙げられます。日ごろから健康的な生活を送ることで認知症の発症を予防したり、発症を遅らせる事が可能となります。
このように、認知症は遺伝だけでなく、様々な要因が関係しています。日々の生活習慣を見直し、健康的な生活を心がけることが大切です。
3-3|認知症と生活習慣の関係
高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因の一つとされています。これらの生活習慣病は、脳に悪影響を及ぼし、認知症を引き起こす可能性があります。
高血圧は、脳の血管が詰まったり、切れたりすることで脳梗塞や脳出血を引き起こし、脳細胞が死んでしまうことがあります。これが脳血管性認知症の原因になります。一方、糖尿病は、食べ過ぎや運動不足などで血液中の糖分が高くなります。そのため、インスリンというホルモンがうまく働かず、血液中の糖分を下げることができません。その結果、余分な糖分は体内に蓄積されて肥満になったり、血液がドロドロになったりします。ドロドロの血液は、血管を傷めて動脈硬化を進行させます。動脈硬化は、血管がもろくなって割れやすくなります。そのため、脳梗塞や脳出血のリスクが高まります。
認知症を予防するためには、生活習慣を改善することが大切です。具体的には、バランスの良い食事を摂る、適度な運動をする、十分な睡眠をとる、タバコをやめる、お酒はほどほどにするといったことです。健康的な生活習慣を心がけることで、認知症の発症リスクを減らすことができます。
3-4|認知症と高血圧、糖尿病との関係
認知症のリスク要因は、認知症にかかりやすくする要因です。例えば、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、認知症のリスク要因としてよく知られています。これらの疾患は、脳の血管に損傷を与えたり、脳細胞に損傷を引き起こしたりすることで、認知症の発症リスクを高める可能性があります。
実際、福岡県の久山町で行われた長期調査では、高血圧や糖尿病と認知症の関連が明らかになりました。この調査では、1985年から2012年までに5回にわたり、65歳以上の住民を対象に認知症の有病率を調査しました。その結果、高血圧や糖尿病の有病率が上昇するにつれて、認知症の有病率も増加していることが示されました。特に、アルツハイマー型認知症は、食後高血糖などの血糖異常と強く関連していました。
このように、高血圧や糖尿病は科学的に認知症のリスクを高めることが証明されています。したがって、これらの生活習慣病を予防することは、認知症の予防にもつながります。
3-5|認知症とウイルスと薬物の影響
認知症の原因は何かと言うと、加齢、遺伝、生活習慣病などがよく知られていますが、それに加えてウイルス感染、薬物の乱用、梅毒なども関連しています。ウイルス感染による脳炎や髄膜炎、薬物の摂取による脳へのダメージ、神経梅毒などの感染症が、認知機能障害を引き起こす可能性があるのです。
この情報は、自分や家族の健康に興味を持つ人々にとって非常に重要です。認知症を早期に発見し、適切に対処することは、患者の生活の質を向上させるための鍵となります。
4|認知症の症状
「認知症の症状とは何か?」と考えると、私たちは日常生活で直面するであろう悩みや困難についても想像することができるかもしれません。この症状がもたらす影響について深く理解することは、予防やサポートの一環として欠かせないのではないでしょうか。
医学的な見地から、認知症の症状は記憶障害、見当識障害、判断力障害、実行機能障害、注意力障害、言語障害、失行、失認などに分類されます。これらの症状がどのようにして現れるのかを通じて、認知症の進行メカニズムにも迫りたいと思います。
この項では、認知症の主な症状を個別に掘り下げながら、それぞれの特徴や日常生活への影響を紐解いていきます。読者の方々には、それぞれの症状がどのように生活に影響を及ぼすのか、具体的な事例を通じて理解していただけるでしょう。
この項で、認知症の症状が持つ幅広い側面を理解するだけでなく、家族や友人、関わる全ての人々へのサポート方法についても示唆が得られるはずです。認知症に対する理解が、個人と社会の質を向上させる第一歩となることでしょう。
認知症の症状は私たちの生活に深刻な影響を及ぼす可能性がありますが、理解と支援があればその影響を軽減することができるのです。この記事を通じて、認知症の症状に対する理解を深め、共に支え合う大切さを再認識しましょう。
4-1|認知症の記憶障害
自分が経験したことや昔のことを思い出せなくなる状態のことです。これは認知症の主な症状のひとつです。
認知症の人は、新しいことを覚えるのが難しくなったり、覚えたつもりでもすぐに忘れてしまったり、思い出そうとしてもできなかったりします。最近起こったことから順に記憶が消えていくという特徴があります。そして、認知症の症状は、時間が経つにつれてどんどんひどくなっていきます。
認知症の人の記憶には、長さで分けると短期(すぐ)記憶と長期(遠い)記憶があり、内容で分けるとエピソード(出来事)記憶と意味記憶と手続き記憶があると言われています。
認知症の人は、記憶障害のせいで生活に困ることが多くなります。そのため、認知症であることを受け入れて安心して暮らせるようにすることが大切です。また、新しいことを覚える時のコツとして、一度に一つだけ覚えること、何度も練習することが大切です。
4-2|見当識障害
認知症の中核症状のひとつで、自分がいる時間や場所、人物などを正しく認識できなくなる状態です。見当識障害には、時間の見当識障害、場所の見当識障害、人の見当識障害の3つがあります。
時間の見当識障害では、今日の日付や曜日、季節などがわからなくなります。場所の見当識障害では、自分がいる場所や目的地がわからなくなります。人の見当識障害では、家族や友人などを認識できなくなります。これらの症状は、認知症の進行によって徐々に現れます。
見当識障害は、社会生活や日常生活に大きな影響を与えます。例えば、約束の時間に遅れたり忘れたりすることや、迷子になったり徘徊したりすることがあります。また、トイレを間違えたり失敗したりすることもあります。これらのトラブルは、本人や家族にとってストレスや不安を引き起こします。
見当識障害への対応としては、まず本人の気持ちを理解し、責めたりせずに優しく声かけをすることが大切です。また、カレンダーや時計などを使って時間や日付を確認させたり、トイレの場所を目印で示したりすることも効果的です。さらに、散歩などの運動やリアリティオリエンテーションというリハビリ法も見当識障害の改善に役立ちます。見当識障害は完全に治すことは難しいですが、早期発見・早期対応で進行を遅らせることは可能です。
4-3|認知症における判断力障害
物事を理解し、日常生活の些細なことでも判断できなくなることです。これは認知症の中核症状のひとつであり、症状は幅広く、事故にあう危険性や他人に迷惑をかけてしまうこともあります。また、家族が認知症に気づくきっかけになることもある症状です。
認知症による理解力や判断力の障害では、次のような症状が現れます。
- 考えるスピードの低下
- 2つ以上のことを一度に処理できない
- 変化が苦手に
- 観念的な事柄が分かりにくくなる
- 問題が解決できない
認知症のため理解力や判断力の障害のある方には、どのように対応したらいいのでしょうか。すぐにでも実践できる対応方法としては、あいまいな表現を避けてシンプルに伝える、ゆっくり待つ、介護サービスを利用する、怒ったり責めたりするのはNGです。
認知症は難しい問題ですが、適切な対応をすることで、患者さんや家族の方々がより良い生活を送れるよう支援することができます。
4-4|認知症における実行機能障害
自分の行動をコントロールしたり、調整したりする能力が低下することです。人間は日常生活の中で
- 目的を決める
- やり方を考える
- 行動に移す
- 結果を評価する
というステップを踏んでいます。これらのステップがうまくいかなくなるのが実行機能障害です。実行機能障害は、特にアルツハイマー型認知症によく見られます。
実行機能障害は、認知症患者さんの日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼします。計画立った行動ができなくなることで、生活が不自由になり、孤立感や不安感が高まります。また、周囲の人も患者さんの言葉や行動に戸惑ったり、イライラしたりすることがあります。そこで、実行機能障害に対する適切な対応や支援が必要です。
認知症は難しい問題ですが、適切な対応をすることで、患者さんや家族の方々がより良い生活を送れるよう支援することができます。ぜひ参考にしてください。
4-5|認知症の方には、注意力障害
注意力障害は、他の認知機能の低下にも影響します。注意力障害を改善するためには、リハビリが必要です。リハビリには、いくつかの方法があります。
まず、非特異的介入という方法があります。これは、注意力を持続させるための基本的な練習です。数字や色や形などを見て、それを覚えたり言ったりするようなものです。このような練習を繰り返すことで、注意力が長く続くようになります。
次に、特異的介入という方法があります。これは、特定の分野の注意力を強化するための練習です。音や文字や動きなどに注目して、それに関する問題を解いたり答えたりするようなものです。このような練習をすることで、その分野の注意力が高まります。
最後に、段階的介入という方法があります。これは、自分で目標を設定して、それに向かって努力するための練習です。本を読んだり映画を見たりして、その内容について話したり書いたりするようなものです。このような練習をすることで、注意力を集中させることができます。
認知症の方は、注意力障害によって日常生活に困難が生じることがあります。そのため、リハビリだけでなく、周囲の環境も整えることが大切です¹。騒音や明るさや温度などを調整したり、物を整理整頓したりすることで、注意力が散らかることを防ぐことができます。
4-6|認知症における言語障害
言葉の理解・表出が難しくなることです。音として聞こえていても、ことば、話として理解できない、自分が思っていることを言葉として表現する、相手に伝わるように話すことが難しくなります。
認知症の中核症状の一つである言語障害は、高次機能障害とアルツハイマー型認知症によって引き起こされることが多いです。これらの疾患は、脳の神経細胞や神経伝達物質の減少によって、言語を処理する部位に影響を与えます。言語障害の程度や種類は、個人差や病期によって異なりますが、一般的には以下のような特徴が見られます。
- 言葉の意味を忘れたり、間違ったりする(語彙障害)
- 文章を作るのが困難になる(文法障害)
- 話す順序や内容が混乱する(話題維持障害)
- 聞いた話や読んだ文章を理解できない(聴覚理解障害・読解障害)
- 話し手の気持ちや意図を把握できない(プラグマティック障害)
言語障害は、認知症患者さんの日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼします。コミュニケーションがうまくできないことで、孤立感や不安感が高まり、自己肯定感や生きがいが低下する可能性があります。また、周囲の人も患者さんの言葉や行動に戸惑ったり、イライラしたりすることがあります。そこで、言語障害に対する適切な対応や支援が必要です。
認知症は難しい問題ですが、適切な対応をすることで、患者さんや家族の方々がより良い生活を送れるよう支援することができます。ぜひ参考にしてください。
4-7|失行
運動機能に問題がないのに、日常生活の動作や道具の使い方ができなくなる状態を指します。これは、脳の頭頂葉や前頭葉などの障害によって起こります。失行には、肢節運動失行、観念運動失行、観念失行などの種類があります。
失行のリハビリテーションには、様々な方法があります。機能改善型治療では、低下した機能を反復して訓練することで改善を図ります。能力補填型治療では、感覚情報を補うことで動作をスムーズに行えるようにします。環境調整型治療では、環境を整理して動作をしやすくすることが目的です。行動変容型治療では、動機づけや自己効力感を高めることで改善を図ります。能力代償型治療では、代替的な方法で動作を行うことが目的です。
失行は、日常生活に大きな影響を与える障害ですが、適切なリハビリテーションによって改善する可能性があります。リハビリテーションでは、個々の症状やニーズに応じて最適な方法を選択し、実生活で役立つ動作を訓練することが重要です。
4-8|失認
認知症の中核症状の一つです。失認では、目や手、耳などの感覚は正常なのに、それらを使って物や人を見分けることができなくなります。例えば、半側空間失認という種類の失認では、自分の身体や周りの空間の半分(左か右)が存在しないように感じてしまいます。これは、脳の右半分や左半分に障害が起こることで引き起こされます。
失認は、脳卒中や頭部外傷などで脳に損傷が生じたときに起こることが多く、治療法はまだ確立されていません。失認になった人は、言語療法や作業療法などで日常生活を支援してもらう必要があります。
このように、失認は認知症の中核症状の一つであり、その治療法はまだ確立されていません。しかし、言語療法や作業療法などで日常生活を支援することができます。もし身近な人に失認の兆候がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
5|医師の診察・治療等
認知症と向き合う日々、その中での医師の診察や治療は、私たちや大切な人の未来を左右する重要な一歩です。認知機能検査や脳画像検査を通じて、病状を正確に把握しましょう。しかし、認知症の治療は単なる症状緩和だけでなく、生活の質を高めることも目指します。さらに、リハビリテーションは患者の日常生活への復帰を支援します。この記事では、医師の役割や各種検査、治療法、リハビリテーションについて探ってみましょう。認知症との闘いにおける知識と情報は、家族や患者自身の心の支えとなることでしょう。知って得する情報をまとめてお届けしますので、ぜひご一読ください。
5-1|認知機能検査
認知症の早期発見と早期治療が重要です。検査を受けることで、正確な診断ができます。
認知症の検査には、神経心理検査と画像検査の2種類があります。神経心理検査は、質問や作業によって認知機能の状態を測る検査です。代表的なものには、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)などがあります。これらの検査では、30点満点で20点以下だと認知症の疑いが高いとされます。他にも、時計描画テスト(CDT)やアルツハイマー病評価スケール(ADAS)などがあります。
認知症の検査は、かかりつけ医に相談して紹介してもらうか、脳神経内科や精神科などの専門医に直接受診することができます。地域包括支援センターに問い合わせても、認知症対応可能な医療機関の情報を得ることができます。
認知症は早期発見・早期治療が重要です。ぜひ一度検査を受けてみてください。
5-2|認知症の脳画像検査
CTスキャン、MRI、脳SPECT検査などがあります。これらの検査は、認知症の原因や進行度を判断するのに役立ちます。
MRI検査では、脳の形やとくに記憶を司る海馬の萎縮状態がわかります。認知症、とくにアルツハイマー型認知症では記憶を司る「海馬」の萎縮が特徴的なため、この部分の萎縮を見る「VSRAD」という検査も注目されています。VSRADは早期アルツハイマー型認知症の発見にもつながりますので、50歳以上で症状が気になる人は受けてみると良いでしょう。
CTスキャンは脳の血管や出血などをチェックするのに適しています。MRIは脳の細かい構造や水分量を詳しく見ることができます。脳SPECT検査は脳の血流や代謝を測定することができます。VSRADは海馬の萎縮度を正確に評価することができます。これらの検査は、認知症の診断や治療において重要な情報を提供します。
認知症は早期発見・早期治療が重要です。
5-3|認知症の治療
【薬物療法】
薬物療法は、認知症の原因や症状に応じて、適切な薬を処方することで、脳の機能を保護したり、病気の進行を遅らせたりすることができます。
薬物療法には大きく分けて2種類あります。
認知機能改善薬
記憶や判断力などの認知機能を改善するための薬です。アルツハイマー型認知症では、神経伝達物質という脳内のメッセンジャーが減少します。認知機能改善薬は、この神経伝達物質を増やしたり、その働きを強めたりすることで、脳の活動を活性化させます。代表的な認知機能改善薬には以下のようなものがあります。
- ドネペジル(アリセプト):コリンエステラーゼ阻害剤という種類の薬で、神経伝達物質の一種であるアセチルコリンを分解する酵素を阻害することで、アセチルコリンの量を増やします。アセチルコリンは記憶や学習に関係する重要な神経伝達物質です。ドネペジルは錠剤や口腔内崩壊錠などの形で1日1回服用します。副作用としては吐き気や下痢などがあります。ドネペジルはアルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症というタイプの認知症にも効果があるとされています。
- ガランタミン(レミニール):ドネペジルと同じくコリンエステラーゼ阻害剤ですが、ニコチン受容体という神経細胞の受け皿にも働きかけることで、アセチルコリンの効果をさらに高めます。ガランタミンは錠剤や口腔内崩壊錠、経口液剤などの形で1日2回服用します。副作用としてはドネペジルと同様に吐き気や下痢などがあります。
- リバスチグミン(イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ):ドネペジルやガランタミンと同じくコリンエステラーゼ阻害剤ですが、別の酵素であるブチリルコリンエステラーゼも阻害することで、アセチルコリンの量をさらに増やします。リバスチグミンはパッチ剤という形で皮膚に貼り付けて1日1回使用します。副作用としては皮膚のかゆみや発赤などがあります。
- メマンチン(メマリー):NMDA受容体アンタゴニストという種類の薬で、神経伝達物質の一種であるグルタミン酸の過剰な刺激を抑えることで、神経細胞の傷害を防ぎます。グルタミン酸は学習や記憶に関係する神経伝達物質ですが、過剰になると神経細胞を傷つけることがあります。メマンチンは錠剤や口腔内崩壊錠などの形で1日1回服用します。副作用としては頭痛やめまいなどがあります。
精神安定薬
不安やうつ、幻覚や妄想、興奮や攻撃性などの精神行動症状を和らげるための薬です。認知症では、脳の機能低下によって感情や気分が不安定になったり、現実と区別がつかなくなったりすることがあります。精神安定薬は、これらの症状を引き起こす神経伝達物質のバランスを調整することで、心理的なストレスを軽減します。代表的な精神安定薬には以下のようなものがあります。
- 抗精神病薬:幻覚や妄想、興奮や攻撃性などの精神症状を抑えるための薬です。ドパミンという神経伝達物質の働きを抑えることで、現実感覚を回復させます。抗精神病薬には古いタイプの定型抗精神病薬と新しいタイプの非定型抗精神病薬があります。定型抗精神病薬はドパミンを強く抑えるために効果は高いですが、副作用として筋肉のこわばりや震えなどの運動障害が起こりやすいです。非定型抗精神病薬はドパミンだけでなくセロトニンという神経伝達物質も調節するために効果はやや弱いですが、副作用は少ないです 。
- 抗不安薬:不安や焦燥感、睡眠障害などを和らげるための薬です。GABAという神経伝達物質の働きを強めることで、心身をリラックスさせます。抗不安薬にはベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系があります。ベンゾジアゼピン系は効果が早く現れますが、依存性や眠気などの副作用があります。非ベンゾジアゼピン系は効果が遅く現れますが、副作用や依存性は少ないです。
- 抗うつ薬:うつや無気力、自殺念慮などを改善するための薬です。セロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質の量や働きを増やすことで、気分を高めます。抗うつ薬にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、TCA(三環系抗うつ薬)などがあります。SSRIやSNRIは副作用が少なく効果も高いですが、頭痛や吐き気などが起こることがあります。TCAは効果が高いですが、口渇や便秘などの副作用が多いです。
【非薬物療法】
しかし、薬だけでは十分ではありません。非薬物療法は、薬に頼らずに、認知症の人の心と体を活性化することで、残っている能力を最大限に引き出したり、生活の質を向上させたりすることができます。例えば、音楽や絵画などの芸術活動や、運動やゲームなどのレクリエーション活動があります。これらの活動は、認知症の人に楽しみややりがいを与えるだけでなく、記憶や思考力、コミュニケーション能力なども向上させる効果があります。また、家族や介護者も一緒に参加することで、認知症の人との絆を深めることができます。
認知症は現在の医学では完治することが難しい病気ですが、それは決してあきらめることを意味しません。薬物療法と非薬物療法の組み合わせによって、認知症の人は自分らしく生きることができます。そして家族や介護者も認知症の人を支えることができます。認知症の治療は一人ひとりに合わせた個別化されたプランが必要です。
5-4|認知症のリハビリテーション
認知症は、脳の機能が低下してしまう病気です。しかし、それをあきらめることなく、できるだけ元気に生活するためには、薬だけでなく、リハビリも大切です。リハビリというと、身体を動かすことばかりをイメージするかもしれませんが、実は脳も動かすことができるのです。脳を動かすことで、記憶力や判断力などの認知機能を維持したり、改善したりすることが期待できます。また、気分や精神状態も良くなります。
認知症のリハビリには、さまざまな種類があります。例えば、塗り絵や書道などの創作活動は、「認知刺激療法」と呼ばれるもので、五感を刺激して脳を活性化します。音楽や動物と触れ合うことは、「音楽療法」や「アニマルセラピー」と呼ばれるもので、心を癒したり、昔の思い出を呼び起こしたりします。日常生活の動作を通して身体機能や自立性を高める「作業療法」や「運動療法」もあります。「リアリティ・オリエンテーション」と呼ばれるものでは、自分の名前や年齢、日時、場所などの情報を確認します。
認知症のリハビリは、医療機関やデイサービス・グループホームなどで受けることができます。しかし、自宅でもできることもあります。例えば、新聞や雑誌を読んだり、クロスワードパズルや数独などの頭を使うゲームをしたりすることも認知刺激になります。また、家族や友人と会話したり、写真やアルバムを見たりすることも回想法になります。散歩やラジオ体操などの運動も効果的です。
認知症のリハビリは、一人で行うよりも他者と一緒に行う方がより効果的だと言われています。他者と一緒に行うことで、コミュニケーション能力や社会性も向上します。また、楽しみや達成感も増します。認知症の人は孤立しがちですが、他者と関わることで自分の存在意義や自信を取り戻すことができます。
私たちは認知症の人を応援し、一緒にリハビリに取り組むことができます。認知症は完治する病気ではありませんが、それでもできる限り元気に生活するためには、薬だけではなく、リハビリも欠かせません。認知症のリハビリは誰にでもできることだし、誰にでも必要なことです。私たちは皆で支え合いながら取り組むべきです。
6|認知症の予防
皆さんも一度は「健康な脳を保ちたい」と思ったことがあるはず。その想いに共感を覚える方も多いことでしょう。しかし、現代の忙しい生活において、認知症のリスクは避けて通れない問題となっています。なぜなら、認知症は人生の質を低下させることから、予防の重要性が高まっているからです。
研究によれば、バランスの取れた食事は脳の健康をサポートし、運動は血流を改善して脳に酸素を供給します。また、禁煙は血管の健康を保ち、認知症リスクを減少させることが示されています。この項では、まず食事法に焦点を当て、認知症予防に効果的な栄養素について詳しく解説します。次に、運動の適切な方法と効果について紹介します。そして、禁煙が認知症予防に与える影響を探ります。
この項で、認知症予防にどのような方法があるのかを理解し、自身の生活に取り入れるメリットが得られます。将来の健康への投資として、今から行動する意義を感じていただけるでしょう。認知症予防は日常の積み重ねから始まります。食事や運動、禁煙の選択が、明るい未来への一歩となることでしょう。しっかりとした意志で取り組み、認知症から自分と大切な人々を守りましょう。
6-1|認知症予防に効果的な食事法
マインド食が注目されています。この食事法は、地中海式食事法とDASH食を組み合わせたもので、アルツハイマー型認知症を予防することが研究で示されています。マインド食では、脳の健康に良いとされる食品を10項目、悪いとされる食品を5項目に分けています。
脳に良い食品は、全粒穀物、緑黄色野菜、その他の野菜、ベリー類、豆類、ナッツ類、魚類、鶏肉、オリーブオイル、ワインです。これらの食品は抗酸化物質やビタミン、ミネラルなどを豊富に含んでおり、脳の老化を防ぎます。一方、脳に悪い食品はバターやマーガリン、菓子パンや甘い菓子、赤身の肉、チーズ、揚げ物やファーストフードです。これらの食品は脂肪分や糖分が多く含まれており、脳の炎症や動脈硬化を引き起こします。マインド食ではこれらの食品をなるべく控えるようにします。
マインド食は厳格なルールではなく柔軟に取り入れることができます。例えば朝食には全粒穀物のパンやシリアルを食べたり、昼食には魚や鶏肉のサラダを作ったり、夕食には豆類や野菜をたっぷり使ったカレーを楽しんだりすることができます。またデザートにはベリー類やナッツ類を使ったスムージーやヨーグルトを食べたり、お酒が好きな人は赤ワインを一杯だけ飲んだりすることもできます。ただし過剰なアルコールや塩分摂取は認知症予防には適さないので注意しましょう。
認知症予防には他にも運動や睡眠などが大切ですが、まずは毎日の食事から見直してみるのも良いかもしれません。マインド食は認知症予防だけでなく心血管疾患や糖尿病などの予防にも役立つと言われています。健康的で美味しい食事を楽しみながら脳の若さを保ちましょう。
6-2|適度な運動
認知症のリスクを減らすためには、週に3回以上、1日に30分以上の運動を心がけるとよいでしょう。さらに効果を高めたい場合は、週に150分以上の運動を目指すとよりよいです。
おすすめの運動としては、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動があります。筋力トレーニングも組み合わせるとさらに効果的です。ただし、運動だけではなく、脳の認知機能も鍛えることが大切です。運動をしながらゲームをするなどして、脳に刺激を与えるとよいでしょう。
認知症予防に役立つ運動の一つに「コグニサイズ」があります。コグニサイズとは、「ウォーキングしながら数を数える」や「踏み台昇降をしながらしりとりをする」など、「息が上がる程度の運動」と「計算やしりとりなどの認知課題」を同時に行う運動法で、国立長寿医療研究センターが開発したものです。
6-3|禁煙
認知症予防に役立つとされています。喫煙者の認知症発症リスクは非喫煙者の約1.4倍~2.3倍とされています。WHOの認知症予防ガイドラインでも、禁煙が推奨されています。
禁煙は、認知機能の低下と認知症発症リスクを低減する可能性があります。また、健康寿命延伸と、要介護の一番多い要因である認知症を予防するためにも、禁煙が効果的であると推奨されています。
ただし、認知症患者に禁煙を促す際には、「タバコをむやみに取り上げない」「共感する」ことが大切です。また、認知症高齢者の喫煙は火事の危険性を高めるため、火の不始末防止策も考慮する必要があります。
こんにちは!今日は、禁煙が認知症予防に役立つことについてお話しします。実は、喫煙者の認知症発症リスクは非喫煙者の約1.4倍~2.3倍も高いんですよ。WHOの認知症予防ガイドラインでも、禁煙が推奨されています。
禁煙することで、認知機能の低下や認知症発症リスクを低減する可能性があります。さらに、健康寿命を延ばし、要介護の一番多い要因である認知症を予防するためにも、禁煙が効果的だと言われています。
ただし、認知症患者に禁煙を促す際には、「タバコをむやみに取り上げない」「共感する」ことが大切です。また、認知症高齢者の喫煙は火事の危険性を高めるため、火の不始末防止策も考慮する必要があります。
7|家族や介護者の負担
認知症の家族介護は、とても大変なことです。認知症の人は、自分のことがわからなくなったり、周りの人や物に対して不安や恐怖を感じたりします。家族は本人の状態についていけなかったり、イライラしたり、疲れ果てたりします。実は、認知症の家族介護者には、うつ病になる人が多いと言われています。認知症は本人だけでなく、家族にも大きな影響を及ぼす病気です。
では、家族が認知症の人と上手に付き合っていくためには、どうしたらいいでしょうか?私は、介護者の方々に3つの“ない”をお伝えしています。
- 責めない
- 怒らない
- 焦らない
これらは、認知症の人に対する基本的な姿勢です。認知症の人は、自分の意思や感情をうまく表現できないことが多いです。だからこそ、相手の気持ちを想像して、優しく笑顔で接することが大切です。本人ができることを見つけて、一緒に楽しむことも忘れずにしてください。認知症の人と家族が幸せに暮らすためには、心のケアも必要です。
8|認知症に対する社会的な流れ
認知症ケアの歴史を振り返ると、以下のような変遷が見られます。
8-1|1960年代:「ケアなきケアの時代」
この頃は、認知症は「ボケ」や「痴呆」と呼ばれており、年をとれば仕方がないという考え方が一般的でした。認知症の人は、その病気や症状が理解されず、差別や虐待の対象にもなりました。適切なケアがされないどころか、身体拘束や薬物投与などの強制的な方法で管理されることもありました。
8-2|2000年代:「個別ケアの視点と地域ケアの時代」
この頃から、認知症は「認知症」と呼ばれるようになり、専門的な視点での対応が進みました。2000年には介護保険制度が施行され、高齢者を社会全体で支える仕組みが整備されました。認知症の人に対しては、個々の状態やニーズに応じたケアが重視されるようになりました。グループホームやデイサービスなどの地域密着型サービスが創設され、医療と介護の連携も強化されました。
現代社会では、核家族化や人口流動などによって、地域のつながりが希薄になっています。認知症の人やその家族が孤立してしまうことも少なくありません。そこで、認知症の人になっても安心して暮らせる町づくりを目指す運動が始まりました。
そのきっかけとなったのが、2005年(平成17年)に開催された「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」です。この会議では、各界有識者や地域の企業・団体・医療・福祉関係者などが参加し、認知症の人とその家族を支えるための方策を議論しました。その結果、「認知症を知り地域をつくる10ヵ年」の構想が提案されました。
この構想では、以下のような取り組みが行われています。
認知症サポーター100万人キャラバン
認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者を養成するプロジェクトです。
「認知症でもだいじょうぶ町づくり」キャンペーン
認知症の人が安心して外出できるように、地域の商店や公共施設などにステッカーやポスターを貼ったり、パンフレットやDVDを配布したりする活動です。
認知症の人「本人ネットワーク支援」
認知症の人同士が交流したり、意見交換したりする場を提供することで、自分らしく生きる力を高める支援です。
認知症の人や家族の力を活かしたケアマネジメントの推進
認知症の人や家族のニーズや希望に応じて、医療・福祉・介護サービスを統合的に提供する仕組みです。
これらの取り組みは、「地域で支える時代」に向けて重要な役割を果たしています。
認知症の人が地域で安心して暮らせるようにするための施策が推進されいきました。2015年には、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が策定され、関係省庁が連携して認知症対策を実施することが決まりました。新オレンジプランでは、「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」を目指し、「実態把握」「予防・治療」「早期診断・医療」「適切なケア・支援」「若年性認知症対策」の5つの柱を掲げました。
以上が、認知症ケアの歴史の概要です。認知症ケアは、時代とともに変化してきましたが、その背景には、認知症の人やその家族の声やニーズがあります。認知症ケアの歴史を知ることで、認知症の人に対する理解や関心を深めることができると思います。
終わりに
今回は認知症についてお話ししました。認知症は私たちの身近な問題です。認知症の人やその家族に寄り添うことができるように、私たちはもっと知識や理解を深める必要があります。このブログ記事が少しでもお役に立てれば幸いです。次回もお楽しみに!