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認知症の診断基準とその変遷について

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認知症の診断基準とその変遷について

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認知症とは、脳の障害によって認知機能(記憶、言語、判断、計画など)が低下し、日常生活に支障が生じる状態です。認知症には、アルツハイマー病、脳血管疾患、レビー小体病など、さまざまな原因があります。

認知症の診断は、医師が患者の症状や検査結果をもとに行いますが、その際に参考にするのが診断基準です。診断基準とは、ある疾患を定義するために必要な症状や条件を示したもので、国際的に統一されたものや、専門家団体が作成したものがあります。

認知症の診断基準は、これまでに何度も改訂されてきました。その背景には、認知症の研究や理解が進んだことや、社会的なニーズが変化したことがあります。ここでは、認知症の診断基準の歴史とその特徴について紹介します。

ICDとDSMの違い

認知症の診断基準として最もよく使われているのは、世界保健機関(WHO)が作成した国際疾病分類(ICD)と、米国精神医学会(APA)が作成した精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)です。

ICDは、疾病や障害を統一的に分類するための国際的な基準で、全ての医療分野をカバーしています。現在は第11版(ICD-11)が2022年から発効される予定です。DSMは、精神障害に特化した診断基準で、現在は第5版(DSM-5)が2013年に出版されました。

ICDとDSMは、認知症の診断基準においても、いくつかの違いがあります。例えば、ICD-11では、認知症は「認知障害の症候群」として分類され、その原因となる疾患や病態を別に記載することが推奨されています。一方、DSM-5では、認知症は「主要な神経認知障害」と呼ばれ、その原因となる疾患や病態を同時に診断することが求められています。

また、ICD-11では、認知症の診断には、認知機能の低下が日常生活に支障を及ぼすことが必要とされていますが、DSM-5では、日常生活に支障を及ぼすことは必須ではなく、重要な判断基準とされています。

DSMの変遷

DSMは、1952年に第1版が出版されてから、何度か改訂されてきました。その過程で、認知症の診断基準も変化してきました。

第1版(DSM-I)では、認知症は「器質的精神障害」の一つとして「器質的脳症候群」と呼ばれていました。このときは、認知症の原因となる疾患や病態は考慮されていませんでした。

第2版(DSM-II)では、「器質的脳症候群」は「器質的脳症」と改名されましたが、診断基準に大きな変化はありませんでした。

第3版(DSM-III)では、「器質的脳症」は「器質的精神障害」と呼ばれるようになりました。このとき、認知症の原因となる疾患や病態を分類することが始まりました。例えば、アルツハイマー認知症、血管性認知症パーキンソン病による認知症などが区別されました。また、認知症の診断には、記憶障害と他の認知機能障害の両方が必要とされるようになりました。

第4版(DSM-IV)では、「器質的精神障害」は「認知障害」と呼ばれるようになりました。このとき、認知症の原因となる疾患や病態の分類はさらに細かくなりました。例えば、アルツハイマー認知症は、早発型と晩発型に分けられました。また、認知症の診断には、日常生活に支障を及ぼすことが必要とされるようになりました。

第5版(DSM-5)では、「認知障害」は「神経認知障害」と呼ばれるようになりました。このとき、認知症は「主要な神経認知障害」と呼ばれるようになりました。また、認知症の原因となる疾患や病態の分類は、よりエビデンスに基づいたものになりました。例えば、アルツハイマー認知症は、遺伝子検査やバイオマーカー検査の結果によって、確定型、確実型、可能性型に分けられました。また、認知症の診断には、認知機能の低下が1つ以上あることが必要とされるようになりました。これは、記憶障害が必須ではないことを意味します。

ICDの変遷

ICDは、1893年に第1版が出版されてから、何度か改訂されてきました。その過程で、認知症の診断基準も変化してきました。

第1版(ICD-1)では、認知症は「精神病」の一つとして「痴呆」と呼ばれていました。このときは、認知症の原因となる疾患や病態は考慮されていませんでした。