認知症サポートの道

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【認知症疾患医療センター】とは?種類・役割・受診方法を解説

認知症疾患医療センターは、認知症に関する専門的な医療・支援活動を行う施設です。認知症の急速な増加に伴い、その適切なケアと支援が求められています。この記事では、認知症疾患医療センターの役割や業務内容、種類、受診方法について詳しく解説します。

1|認知症疾患医療センターの役割と業務内容


   1-1|専門医療機能の提供

認知症疾患医療センターとは、認知症の診断・治療・予防・支援を行う専門的な医療機関です。全国に約300箇所あり、地域の認知症ケアに貢献しています。認知症疾患医療センターでは、以下のような専門医療機能を提供しています。

識別診断・治療方法の選定:認知症かどうかを正確に判断するために、検査や診察を行います。認知症の種類や程度に応じて、最適な治療方法を提案します。

 

  • 診断機能認知症の原因や種類を正確に診断するために、神経科学的な検査や画像診断などを行います。また、認知症以外の原因による認知障害精神障害も鑑別します。
  • 専門医療相談認知症の症状や治療法、介護方法などについて、専門家が丁寧にアドバイスします。電話やメールでの相談も可能です。
  • 治療機能認知症の進行を遅らせるために、薬物療法や非薬物療法を行います。薬物療法では、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などの認知機能改善薬を処方します。非薬物療法では、認知訓練や生活リズムの整備などを行います。
  • 予防機能認知症の発症や進行を予防するために、危険因子の管理や健康教育を行います。危険因子とは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、喫煙や飲酒などの不健康な生活習慣です。健康教育では、適度な運動や社会参加などの認知機能保持に有効な生活指導を行います。
  • 情報提供認知症に関する最新の情報や資料を提供します。ホームページやパンフレットで見ることができます。

 

 

   1-2|地域連携活動

地域連携活動とは、認知症疾患医療センターが地域の医療・介護・福祉・行政などと連携して、認知症の人とその家族の支援を行う活動です。具体的には、以下のようなことを行っています。

  • 地域の医師や介護職員への認知症診断・治療・ケアの指導や相談
  • 地域の認知症サポーターやボランティアへの教育や情報提供
  • 地域の認知症施策やネットワークづくりへの協力や参画
  • 地域住民への認知症に関する啓発や相談

地域連携活動は、認知症ケアにおいて非常に重要な役割を果たしています。しかし、まだまだ課題も多くあります。例えば、

  • 認知症疾患医療センターの数や配置が不十分である
  • 認知症診断・治療・ケアに関する専門性や経験が不足している医師や介護職員が多い
  • 認知症に関する知識や理解が不足している地域住民や関係者が多い
  • 認知症に対する偏見や差別がまだ根強く存在している

これらの課題を解決するためには、認知症疾患医療センターだけでなく、地域のすべての関係者が協力して取り組む必要があります。あなたも、認知症に関心を持ち、地域連携活動に参加してみませんか。認知症の人とその家族の笑顔のために、一緒に頑張りましょう。

   1-3|情報発信と啓発活動

認知症疾患医療センターの情報発信と啓発活動について、以下の点を紹介します。

  • 情報発信
    • 認知症疾患医療センターでは、認知症に関する最新の医学的知識や治療法、予防法などをウェブサイトパンフレットニュースレターなどで公開しています。これらの情報は、一般の方だけでなく、介護従事者や医療関係者にも役立つものです。
    • また、認知症疾患医療センターでは、定期的にセミナーや講演会を開催しています。これらのイベントでは、認知症の専門家が最新の研究成果や実践事例を紹介し、参加者と意見交換を行います。イベントの内容や日程は、ウェブサイトやSNSで告知されます。
  • 啓発活動
    • 認知症疾患医療センターでは、認知症に対する正しい理解と社会的支援を広めるために、さまざまな啓発活動を行っています。例えば、以下のような活動があります。
      • 認知症サポーター養成講座認知症の基礎知識や対応方法を学び、認知症の人やその家族を支えるボランティアになるための講座です。
      • 認知症カフェ認知症の人やその家族、地域の人たちが気軽に集まって交流する場です。認知症に関する相談や情報提供も行われます。
      • オレンジリボン運動:オレンジ色のリボンを身につけて、認知症に対する理解と関心を高める運動です。毎年9月21日の世界アルツハイマー・デーに合わせて実施されます。

2|認知症疾患医療センターの種類と特徴


   2-1|全国の認知症疾患医療センター一覧

一覧についてはこちらをご覧ください。

 

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   2-2|各地域のセンターの違いと特色

認知症疾患医療センターは、その規模や体制により以下の3つに分類されます

  • 基幹型:主に総合病院。検査機器・入院設備などが整っており、行動・心理症状(BPSD)や合併症に対応できる施設です。
  • 地域型:単科精神科病院など。基幹型と同等の人員を確保しており、CT以外の検査機器や入院体制は、他の医療機関との連携体制で対応します。
  • 連携型(診療型):独自の検査や入院設備がない代わりに、急性期への対応ができる他の医療機関との連携体制を確保します。

各地域の認知症疾患医療センターは、それぞれに特色や強みを持っています。例えば、

以上のように、認知症疾患医療センターは各地域で異なる特徴を持っています。介護従事者の方は、自分の地域の認知症疾患医療センターを探してみてください。認知症の方やその家族が住み慣れた地域で安心して生活するために、役立つ情報や支援が得られるかもしれません。

 

3|認知症疾患医療センターの受診方法


   3-1|かかりつけ医の紹介

認知症疾患医療センターを受診するには、かかりつけ医の紹介が必要です。かかりつけ医は、患者さんの健康状態や生活背景をよく知っているため、適切な医療機関を紹介してくれます。また、かかりつけ医と認知症疾患医療センターとの連携により、診断や治療の経過を共有することができます。

かかりつけ医から紹介された場合、以下の手順で認知症疾患医療センターを受診できます。

  1. かかりつけ医から紹介状をもらう。
  2. 紹介された認知症疾患医療センターに電話して予約する。
  3. 受診日に紹介状と保険証を持って受付を済ませる。
  4. 専門医による診察や検査を受ける。
  5. 診断や治療方針について説明を受ける。
  6. かかりつけ医に報告する。

以上が、認知症疾患医療センターの受診方法です。認知症は早期発見・早期治療が重要です。もし自分や家族に認知症の兆候があると感じたら、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

  3-2| 地域包括支援センターへの問い合わせ

認知症疾患医療センターを受診するには、以下の手順を踏む必要があります。

  • まず、地域包括支援センターに問い合わせます。地域包括支援センターは、高齢者やその家族が住み慣れた地域で安心して暮らせるように支援する窓口です。地域包括支援センターでは、認知症の相談や介護サービスの紹介などを行っています。
  • 地域包括支援センターでは、専門的な判断が必要な場合、認知症疾患医療センターへの紹介を行います。紹介された場合は、紹介状と健康保険証を持って、認知症疾患医療センターに電話で予約をします。
  • 認知症疾患医療センターでは、初診時に以下の検査を行います。
    • 問診:本人や家族から現在の生活や健康状態、認知機能の変化などを聞きます。
    • 認知機能検査:記憶力や判断力などの認知機能を測るテストを行います。
    • 血液検査:血液中の栄養素やホルモンなどの値を測ります。
    • 脳画像検査:MRIやCTなどで脳の形や血流などを撮影します。
  • 検査結果に基づいて、医師から診断や治療方針について説明を受けます。必要に応じて、薬物治療やリハビリテーションなどが処方されます。
  • 認知症疾患医療センターでは、定期的な受診や追跡検査を行います。また、介護サービスや福祉用具などの利用方法や申請方法などについてもアドバイスを受けることができます。

認知症疾患医療センターは、認知症の専門的な診療を行うだけでなく、本人や家族の相談や支援も行っています。認知症に関する不安や悩みがある場合は、地域包括支援センターに相談してみましょう。

4|認知症疾患医療センターの業務内容

    4-1|早期診断の重要性

認知症にはさまざまな原因がありますが、多くは根本的な治療法がありません。そのため、認知症は進行性の病気で、時間の経過とともに悪化していきます。

しかし、認知症を早期に発見し、適切な予防策や治療を行えば、症状の進行を遅らせ、健康でいる期間を長くすることができます。また、認知症の原因によっては治る可能性がある場合もあります。

しかし、医師や専門家に相談する前に、自分や家族が認知症の初期のサインに気づくことも重要です。認知症の初期のサインとしては、以下のようなものがあります。

  • 同じ話や質問を何度もする
  • 日付や時間や場所が分からなくなる
  • 料理や金銭管理ができなくなる
  • 性格や身だしなみが変わる
  • 些細なことで怒ったり落ち込んだりする

これらのサインに気づいたら、早めに医師や専門家に相談しましょう。認知症は早期発見・早期対応が重要です。自分や家族の健康を守るためにも、認知症について正しく理解しましょう。

    4-2|診断のプロセスと検査

認知症の診断は、以下のようなプロセスで行われます。

  • まず、かかりつけ医や地域包括支援センターなどから紹介された方が、認知症疾患医療センターに予約をします。
  • 次に、本人や家族との問診やカルテの確認を行います。これは、本人の病歴や生活歴、家族歴などを把握するためです。
  • その後、画像検査や血液検査、心理検査などを行います。これらの検査は、認知症の原因や種類、程度を判断するためです。
  • 最後に、検査結果をもとに診断を下します。診断結果は、本人や家族に詳しく説明し、治療方針や介護計画を決めます。

認知症の診断に用いられる主な検査は以下の通りです。

  • 画像検査:CTやMRIなどで脳の形や血流を見ることで、脳卒中や脳腫瘍などの有無や脳萎縮の程度を調べます。
  • 血液検査:血液中の栄養素やホルモンなどの値を測ることで、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症などの有無を調べます。
  • 心理検査:記憶力や判断力などの認知機能を測るテストを行います。MMSEやMoCAなどがよく用いられます。

以上が、認知症疾患医療センターで行われる認知症の診断のプロセスと検査です。認知症は早期発見・早期治療が重要です。もしも自分や家族に認知症の兆候があると感じたら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。そして必要に応じて認知症疾患医療センターに受診しましょう。専門的な診断と治療が受けられるだけでなく、介護や生活支援に関する相談もできます。認知症は一人で抱え込まずに、周囲と協力して対処しましょう。

5|地域連携の推進

   5-1|地域の医療機関、支援機関との連携

認知症疾患医療センターは、認知症の診断、治療、予防、教育、研究などを行う専門的な医療機関です。しかし、認知症のケアは医療だけではなく、介護や福祉などの多くの分野が関わる複雑な課題です。そのため、認知症疾患医療センターは、地域の医療機関や支援機関と連携し、認知症に対する包括的な支援体制を構築することが重要です。

地域連携の推進には、以下のような取り組みがあります。

  • 地域連携室の設置認知症疾患医療センターには、地域連携室という部署があります。ここでは、地域の医療機関や支援機関からの相談や情報提供を行うほか、地域で開催される認知症に関する講演会や勉強会にも参加しています。地域連携室は、認知症に関する専門的な知識やノウハウを地域に広める役割を果たしています。
  • 地域連携協定の締結認知症疾患医療センターは、地域の医療機関や支援機関と地域連携協定を結んでいます。これは、認知症の診断や治療における相互協力や情報共有を約束するものです。例えば、認知症疾患医療センターで診断された患者さんが地域の医師に紹介される場合、その際に必要な情報をスムーズに伝えることができます。また、地域の医師から認知症疾患医療センターに相談したい場合も、専門的なアドバイスを受けることができます。
  • 地域連携ネットワークの形成認知症疾患医療センターは、地域連携協定を結んだ医療機関や支援機関と定期的に会合を開いています。これは、地域連携ネットワークと呼ばれるもので、認知症に関する最新の情報や事例を共有したり、課題や解決策を議論したりする場です。地域連携ネットワークでは、認知症ケアにおける多職種間のコミュニケーションや協働を促進しています。

   5-2|在宅ケアのサポートと提案

認知症疾患医療センターでは、在宅ケアを行う介護従事者の方々に対して、以下のようなサポートと提案を行っています。

  • 認知症の症状や進行度に応じた適切なケアプランの作成と実施
  • 認知症の方の日常生活やコミュニケーションの支援方法
  • 介護従事者の方の心身の健康やストレスの管理方法
  • 介護サービスや福祉用具などの利用方法や申請方法

これらのサポートと提案は、認知症疾患医療センターの専門スタッフが、訪問や電話、オンラインなどで行います。また、定期的に開催される認知症ケアに関する勉強会や相談会にも参加できます。

認知症疾患医療センターは、在宅ケアを行う介護従事者の方々が、認知症の方とともに安心して暮らせるように、全力でサポートします。

6|事前に知っておきたい受診のポイント

   6-1|必要な持ち物や質問事項

認知症の方やそのご家族が受診する際には、事前に知っておきたいポイントがあります。ここでは、必要な持ち物や質問事項についてご紹介します。

まず、必要な持ち物ですが、以下のものを持参すると良いでしょう。

  • 保険証や紹介状などの書類
  • 認知症の方の身分証明書や写真
  • 認知症の方の日常生活や病歴に関する情報(例:服薬歴、食事や排泄の状況、睡眠や運動の量など)
  • 認知機能検査や画像検査などの結果(以前に受けた場合)

次に、質問事項ですが、以下のようなことを聞くと良いでしょう。

  • 診断結果や治療方針は何か
  • 薬の種類や副作用は何か
  • 今後の経過観察や受診スケジュールはどうなるか
  • 介護サービスや支援制度の利用方法はどうすれば良いか

   6-2|予約が取れない場合の対処法

認知症疾患医療センターは、認知症の診断や治療、介護支援などを行う専門施設です。認知症の方やそのご家族にとって、信頼できる医療機関として重要な役割を果たしています。しかし、その反面、予約が取りにくいという問題もあります。認知症疾患医療センターに予約が取れない場合、どのように対処すればよいのでしょうか?以下に、いくつかの対処法を紹介します。

  • 他の日や時間帯に変更する認知症疾患医療センターは、平日の午前中や午後の早い時間帯が混雑しやすい傾向にあります。可能であれば、平日の午後の遅い時間帯や土曜日に予約を変更すると、空きが見つかる可能性が高まります。
  • 他の認知症疾患医療センターに問い合わせる認知症疾患医療センターは、全国に約300箇所あります。近くに他の認知症疾患医療センターがある場合は、そちらにも問い合わせてみると良いでしょう。ただし、移動距離や交通手段などを考慮する必要があります。
  • 一般的な精神科や神経科に相談する認知症疾患医療センター以外にも、一般的な精神科や神経科でも認知症の診断や治療を行っている場合があります。近くにそうした医療機関がある場合は、そちらにも相談してみると良いでしょう。ただし、認知症の専門性や介護支援の充実度などは、認知症疾患医療センターと比べて劣る可能性があります。
  • 地域包括支援センター介護保険指定事業所に相談する認知症の方やそのご家族が抱える様々な困りごとに対して、地域包括支援センター介護保険指定事業所では、専門的な相談や支援を行っています。認知症疾患医療センターに予約が取れない場合は、そちらにも相談してみると良いでしょう。地域包括支援センター介護保険指定事業所から、適切な医療機関の紹介や連絡を受けることができる場合もあります。

以上が、認知症疾患医療センターに予約が取れない場合の対処法です。認知症は早期発見・早期治療が重要です。予約が取りにくいと感じたら、諦めずに他の方法を試してみましょう。認知症の方やそのご家族のために、多くの支援があります。ぜひ、活用してください。

7|認知症疾患センター最新ニュース

 7-1|福岡県で認知症の専門病院が増えました

認知症は、高齢者の中で増えている病気です。認知症の人は、記憶力や判断力が低下したり、日常生活に困難が生じたりします。認知症の人には、適切な医療や介護が必要です。

福岡県では、認知症の人に対応できる専門の病院を「認知症疾患医療センター」と呼んでいます。このセンターでは、認知症の診断や治療だけでなく、かかりつけ医や介護関係者への教育や相談も行っています。これにより、地域で認知症の人を支える医療体制を充実させることが目指されています。

福岡県は、8月8日に発表したところによると、直方・鞍手保健医療圏にある高山病院を新たに認知症疾患医療センターに指定しました。高山病院には、認知症専用の病棟があります。

これで、福岡県内の全ての二次医療圏(約30万人以上の人口を持つ地域)に、少なくとも1カ所は認知症疾患医療センターができました。福岡県は、今後も認知症の人とその家族に安心して暮らせるように、医療保健計画に基づいて取り組みを進めていくとしています。

認知症は、早期発見・早期対応が大切です。もし自分や身近な人に認知症の兆候があると感じたら、まずはかかりつけ医に相談しましょう。そして、必要ならば、近くの認知症疾患医療センターにも連絡してみましょう。認知症の人にとって、適切な医療や介護は、生活の質を高めることにつながります。

 

終わりに

認知症疾患医療センターは、認知症の早期診断や治療、在宅ケアのサポートなど、多岐にわたる業務を行っています。地域の医療機関や支援機関とも連携して、認知症の方とそのご家族に寄り添った医療を提供しています。認知症の方やそのご家族が受診する際には、事前に必要な持ち物や質問事項を準備し、予約が取れない場合は地域包括支援センターへ問い合わせるなど、受診のポイントを押さえておくとスムーズです。認知症は早期発見・早期治療が重要です。認知症の兆候に気づいたら、まずはかかりつけ医に相談し、必要であれば認知症疾患医療センターへ紹介してもらいましょう。認知症は一人で抱え込まないでください。認知症疾患医療センターは、あなたの味方です。

以上、認知症疾患医療センターについてご紹介しました。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。