認知症サポートの道

「認知症と向き合う人々の支え手。認知症の勉強を日々研鑽中。」

認知症ケアの新たな展望: 【早期・事前的なアプローチ】の重要性

認知症のケアにおいて大きな転換点が訪れています。これまでは主に事後的な対応が中心でしたが、最新の動向ではそのアプローチが大きく変わりつつあります。厚生労働省の報告書によれば、【事後的な対応】から【早期・事前的な対応】へとケアの方向性がシフトしており、これによって【危機】を未然に防ぐ新しい認知症ケアの体制が構築されつつあります。この記事では、この新しいアプローチの重要性や具体的な展開について、厚生労働省の報告書を解読しながら探ってみましょう。認知症ケアの未来がどのように変わりつつあるのか、そのポイントをご紹介します。

認知症のアプローチ

以下の文章は、厚生労働省の報告書から引用したものです。

今後のケアの方向として、従来は認知症の人が症状を発し「危機的な状況」を迎えてからの事後的な対応を基本としていたが、今後は新たな体制を整備し、「危機」そのものの発生を防ぐ「早期・事前的な対応」を基本に置く方向にシフトする。

この文章を簡単に言い換えると、以下のようになります。

  • 今までは、認知症の人が困ったことが起きてから対処していた
  • これからは、困ったことが起きる前に予防していく

このように、認知症のケアは「事後的な対応」から「早期・事前的な対応」へと変わっていくということです。これは、認知症の人の生活の質を高めるだけでなく、介護従者の負担も軽減することが期待されます。

では、「早期・事前的な対応」とは具体的にどういうことでしょうか。報告書では、以下の3つのポイントを挙げています。

  • 認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らせるようにする
  • 認知症の人が自分らしく活動できるようにする
  • 認知症の人や介護従者が必要な支援を受けられるようにする

これらのポイントを実現するためには、認知症の人や介護従者だけでなく、地域社会や専門家などが協力して取り組む必要があります。そのためには、以下のようなことが大切です。

  • 認知症に関する正しい知識や理解を広める
  • 認知症の人や介護従者が相談しやすい窓口やネットワークを作る
  • 認知症の人や介護従者が参加できる活動やサービスを充実させる
  • 認知症の人や介護従者の声を聞き入れる仕組みを作る

認知症アの方向性が変わる!【事後的な対応】から【早期・事前的な対応】へ

 

認知症は、早期に受診しなかったために悪化したり、診断や十分なケアが行われず進行する恐れがあります。認知症初期集中支援チームは、そんな状況を回避し、認知症になっても住み慣れた地域で安心した生活が続けられるよう、早期の受診や診断、ケアプランの作成などを支援するチームです

認知症初期集中支援チームは、医師や看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護福祉士などの専門職が協力して、認知症の人とその家族に寄り添います。チームは以下のような役割を果たします。

認知症初期集中支援チームは、認知症ケアの方向性を変える画期的な取り組みです。従来は、認知症が進行してから事後的に対応することが多かったのですが、これからは早期に事前的に対応することで、認知症の人の自立と尊厳を守ります。

認知症初期集中支援チームは、全国各地で展開されています。お住まいの地域で利用できるかどうかは、市町村の高齢者福祉担当部局や地域包括支援センターなどにお問い合わせください。

【危機】を防ぐ認知症ケアの新しい体制とは?厚生労働省の報告書を読み解く

認知症の人やその家族が安心して暮らせる社会を目指すために、どんな取り組みが行われているのでしょうか?

厚生労働省は、令和元年6月18日に「認知症施策推進大綱」をとりまとめました。これは、従来の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に基づいて進められてきた施策に加えて、新たな取り組みを盛り込んだものです。大綱では、「共生」と「予防」の2つの柱を掲げています。

「共生」とは、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるように、周囲の人や社会が理解と支援を示すことです。そのためには、「認知症バリアフリー」の取り組みを進めることが重要です。「認知症バリアフリー」とは、物理的な障害だけでなく、心理的・社会的な障害も取り除くことで、認知症の人が自分の意思や能力に応じて日常生活や社会参加ができるようにすることです。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

「予防」とは、認知症の発症や進行を遅らせることです。そのためには、「共生」の基盤の下で、通いの場や口腔機能向上サービスなどを通じて、認知症の人が心身機能を保持・回復することを目指すことが必要です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 認知機能検査や口腔機能検査などの早期発見・早期対応
  • 運動・食事・睡眠・趣味などの生活改善
  • 認知機能訓練や口腔機能向上サービスなどの機能訓練
  • 行動・心理症状(BPSD)や身体合併症への適切な医療提供
  • 認知症疾患医療センターや認知症サポート医などの専門医療体制の整備

以上が、認知症ケアの新しい体制についての報告書の内容です。認知症の人やその家族が「危機」に陥らないように、地域や社会全体で支え合うことが大切です。介護従事者としても、認知症に関する正しい知識やスキルを身につけ、本人主体のケアを心がけましょう。

終わりに

認知症ケアの新たな展開についてお話しました。今後の認知症ケアが【早期・事前的な対応】への転換を通じてどのように変わっていくのか、その道のりが楽しみです。皆さんもぜひ、これからの認知症ケアにおいて重要な役割を果たしていく一翼となっていただければ幸いです。どうぞ、今後も最新情報に注目しながら、認知症ケアの向上に向けて努力を続けていきましょう。