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認知症の人が過去にタイムスリップする理由とは?

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# 認知症の人が過去にタイムスリップする理由とは?

認知症の人と接するとき、不思議に感じることがあります。それは、現在の状況や人物を認識できなかったり、昔の出来事を今起こっているかのように話したりすることです。これは、認知症の人に「記憶の逆行性喪失」という特徴があるからです。この記事では、記憶の逆行性喪失とは何か、どのように対応すべきかについて解説します。

## 記憶の逆行性喪失とは

記憶の逆行性喪失とは、蓄積されたこれまでの記憶が、現在から過去にさかのぼって失われる現象をいいます¹²。認知症の人は、記憶力や理解力、判断力などの知的機能が低下するため、新しいことを覚えられなくなったり、覚えたことを思い出せなくなったりします。その結果、自分がどこにいるのか、誰と一緒にいるのか、何をしているのかが分からなくなります。

記憶の逆行性喪失は、記憶の種類によって異なります。記憶には、即時記憶、近時記憶、遠隔記憶の3つの種類があります³。即時記憶とは、数秒から数分の間に覚えたことを思い出す記憶です。近時記憶とは、数分から数日の間に覚えたことを思い出す記憶です。遠隔記憶とは、数日から数年、あるいは数十年の間に覚えたことを思い出す記憶です。遠隔記憶には、個人の生活史や歴史的事件に関する記憶(エピソード記憶)や、言語や計算などの知識や技能に関する記憶(意味記憶)があります。

認知症の人は、まず近時記憶が障害されます。そのため、ほんの少し前のことを忘れてしまい、同じことを何度も繰り返したりします。次に、エピソード記憶が障害されます。そのため、自分が体験した出来事の全体や内容を忘れてしまいます。最後に、意味記憶が障害されます。そのため、言葉の意味や計算の方法などを忘れてしまいます⁴。

記憶の逆行性喪失は、記憶の強度にも関係します。記憶の強度とは、記憶がどれだけ鮮明で確かなものかということです。記憶の強度は、記憶の形成に関わる感情や重要性などによって変わります。一般に、感情的に強い記憶や重要な記憶は、弱い記憶よりも長く残ります。しかし、認知症の人は、記憶の強度に関係なく、記憶が失われていきます⁵。

記憶の逆行性喪失によって、認知症の人は、自分の年齢や時代に合わない記憶に基づいて行動することがあります。例えば、若い頃の配偶者の顔を忘れてしまい、現在の配偶者を認識できなかったり、別の人と間違えたりすることがあります。また、子どもの頃に住んでいた家に帰ろうとしたり、すでに亡くなった親や友人に会いに行こうとしたりすることがあります。これらの行動は、認知症の人にとっては合理的で自然なものですが、周囲の人にとっては奇妙で不可解なものに見えます。

## 記憶の逆行性喪失に対する対応のポイント

記憶の逆行性喪失によって、認知症の人は、現実とは異なる世界に生きていると感じることがあります。そのため、周囲の人は、認知症の人の気持ちや状況を理解し、適切に対応することが大切です。以下に、記憶の逆行性喪失に対する対応のポイントをいくつか紹介します。

- 認知症の人の記憶の時点に合わせる
認知症の人は、自分がどの時代にいるのか、どの年齢にいるのかが分からなくなることがあります。そのため、周囲の人は、認知症の人の記憶の時点に合わせて話しかけることが望ましいです。例えば、若い頃の配偶者の顔を忘れてしまった認知症の人に対しては、「私はあなたの妻ですよ」と言っても通じません。その場合は、「私はあなたの友人です。あなたの妻は今日は用事があって来られませんでした」と言うなど、認知症の人の世界に入って話すことが効果的です。また、子どもの頃に住んでいた家に帰ろうとする認知症の人に対しては、「今はあなたの家に泊まらせてもらっています。あなたの家はとても素敵ですよ」と言うなど、認知症の人の気持ちを受け止めることが大切です。

- 認知症の人の記憶を思い出させようとしない
認知症の人は、記憶の逆行性喪失によって、自分が体験したことや知っていることを忘れてしまいます。そのため、周囲の人は、認知症の人に「覚えているでしょう」と言ったり、「これは何だか分かるかな」と言って思い出させようとしたりすることがあります。しかし、これは認知症の人にとっては苦痛であり、ストレスになります。